双凛の輝き illuminate……
「ぐわぁぁぁぁぁぁっーーーーーー!!!!」ドサッ
柄を握っていたオサム君は槍の展開とともに勢いよく宙に浮いて、吹き飛ばされてしまう。
「オサム君っ!!!? 」
私は少し先に倒れ込んだ彼に咄嗟に叫びかける。
「うぐっ……ぐぁっ!! う、腕が…… 」
彼の右腕を見てみると見たこともないくらい青く腫れて……いや、それだけじゃない、左腕も同じように青い。ってことは両腕が……
「早く手当てしないとっ!! 」
オサム君の重傷度を察した私は彼の方に走り出そうとする。しかし……
「おいおいっ、せっかく覚醒した俺様を無視して男の心配かぁっ? 」
突然、前方からしかあり得ないはずの声が後ろから聞こえる。
「なんでっ……!? いつの間にっ!!? 」
ほんのさっきまで目の前にいた槍使いが背中に回っていた。
ほぼテレポートとしか思えないような移動。雰囲気的に想像はしていたが、やっぱりコイツ槍が派手になっただけじゃない。
『フハハハハハハハハッ!!!! そりゃあこの俺、馬神槍の力を得ているからなっ!! お前なんぞに今の俺たちのスピードを見切れるわけねぇだろ!!!!!!』
……なんか槍が自慢げに喋ってる。
意志があるってのはホントだったらしい。まぁ、もうこの緊張感の中ではそんなことどうでもいいけど、つまり……
「つまり……フルパワーってこと? 」
「いやぁ、残念ながらまだこの先はあるぜ? ”脳ある方は尻を隠さず”ってやつだ。」
ことわざはもういい、ツッコんでる場合じゃない。
どうする? 最善策は何? でもまだ本気じゃないなら、とにかく今のうちに逃げるしか……
「……オサム君っ!!! 」
私は一緒に逃げるため倒れているオサム君の方をもう一度向く。
『おいっ!! また無視かぁ!!!? 』
「まぁ、いい……そんなにそっち行きたきゃ手伝ってやんよっ!!!!」
ズガァッ!!!!
後ろを向いた私の背中に、今までに受けたこともないような衝撃の蹴りを入れられた。
「………っ!!!!? 」 ズサァァァァァァ
悲鳴を上げることすらできない痛みを喰らった私は思いっきり吹き飛ばされ、倒れ込んだ状態で地面に滑り込む。
「うっ……くはっ、はぁ、はぁ…… 」
「フ、フタリさん…… 」
背中の患部に手が届かず、呼吸で気を休めることしかできない私の近くにオサム君の顔があった。
同じように倒れ込んで痛々しい両腕の怪我と共に震えている。
願った形ではなかったが、近くに行く目的は達成していたようだ。
「なん…で、こっちに……? 」
オサム君が責めるように私に問う。
……まぁ、当然の反応だ。
明らかに冷静な判断じゃなかった。
自分の命を狙う敵に背中を見せてしまったし、第一あのスピードから逃げ切れるわけなかった。
もしかしたら正面から立ち向かった方がマシだったかもしれないし、交渉でも試して時間稼ぎでもすべきだったとも思える。
後から考えたところで何が正しかったのかは結局、分からないだろう……だけどこの絶望的状況で彼を置いていかなかっただけでも私にとっては間違いなんかじゃない。後悔なんかしない。
「ったく、ここまで追い詰めて力見せねぇとはなぁ。……でも、まぁいいか。俺様もここまで散々コイツらにやられたし、殺すか。」
『OK、お前がいいならいいぜっ!! 」
ヤバい。とうとう、とどめを刺す気になった槍使いがこっちに向かって来る。
アユリは気絶。オサム君は重傷。今動けるのは激痛を抱えている私だけ……やるしかない。
「ぐ……っ、はぁ、はぁ。」
私は痛みを堪え、辛うじて立ち上がる。
「ハハハハッ!! 寝っ転がってりゃ、楽に殺してやんのにわざわざご苦労だな。」
「フ、フフッ……まぁね。これでも盾ぐらいになれるでしょ? 」
強がりながら戦闘の構えをとってみせる。
「ダ、ダメだ、フタリさん…… 」
「オサム君……大丈夫、大丈夫だよ。」
私の後ろで苦しそうに心配する異世界の想い人を宥める。
薄明アユリに鴉根オサム。
目の前のこの二人は元からあの男の友達で、私とは無関係だった人達。だが、
彼女に守られ、気付かされた。
彼に気付かせ、共に戦った。
たった数十分の出来事だったけれど、友達になれた。大切だと思えた。
もう二つの世界で完全に祇峰フタリの宝物。だから……
「だから、私は…… 」
「ほぉらっ、最後の別れだっ!! 行くぜぇ!!!! 」ビュンッ!!
遂に敵が動き出す。だがもう覚悟はできている。だって私は……
「……私は、大切なあなた達を守るからっ!! 」
……覚悟して目を瞑ったのに全く痛みがない。ていうかまだ攻撃されてなくない?
「なっ……!? 眩しっ!! なんだよ、この光っ!!!? 」
はっ? 光?
「フ、フタリさん、その光は……? 」
オサム君まで、一体何言って……って、えっ?
「な、なにこれ……? 」
自分の手を見ると本当に光っていた。
何が?
人が。
誰が?
私が。
私自身の体が。
「これって、まさか…… 」
そういえば心当たりがある。必死すぎて頭から抜けていたけど、これは……
”なんとか間に合ったみたいだね…… ”
すっかり忘れていた希望の声と共に光が強くなり、私を包んだ。




