紡ぐべき絆 with 双凛 後編
「君っ!!!! うしろっ!!!!! 」
私にボコられ中の槍使いが何かを叫んだと思ったら、今度はオサムくんが私の背中に叫びかけてきた。
でも、”うしろ”って、敵は目の前にいるし……
「えっ……!?」 ビュンッ!!
誰が投げたのか、遠隔操作でもされているのか。
全く見当がつかないが、敵とは真逆の方向から、私がさっき蹴り飛ばしたはずの槍が先端を向けてこっちに飛んできていた。
いや、”飛んできた”と言う表現は適切でないかもしれない。声に気付いて、振り向き、この状況を把握するまでの間に空中の凶器は……
もうほぼ目の前にあった。
こんなの避けれるわけがない。
反応する暇がない。
私に出来たのは反射的に目を瞑ることだけしか……
「ダメっ!!! させないっ!!!! 」
ドカッ!!
シュンッ!!
バキン!! ガァン!!!!
「痛っ……。」
一瞬の間に、誰かの声や激しい音が複数飛び交ったがそれらが全て止んだ。
最後の音からして、槍の謎攻撃は終わったみたいだ。きっとガードレールにでも刺さったのだろう。
……でも生きている。
激しい痛みもない。
少し背中が痛いけど、明らかに槍に刺されたソレじゃない。
何かに押し込まれるような痛み。
まるで誰かに抱きしめられ……
「えっ? アユリ? 」
「えへへっ……、間に合ったみたいだね。」
目を開けるとガードレールを背にしたアユリの顔があった。
「な、なんで……? 」
今の自分の状態を確認すると、ガードレールにもたれかかったアユリの上にいつの間にか倒れ込んでいた。
そのおかげで槍から逃れられたらしい。
ってことは私は……
「助けてくれたの……? 」
「うん。槍が浮いたときにね、もしかしてと思って走ったの。水泳部も意外と役に立つでしょ? 」
つまり私は直撃の寸前にアユリに押し倒され、その軌道から外れられたのだろう。
だとしたら、”役に立った”どころではない。命の恩人だ。ただ……
「でも、知らない私のためにそんな危険なこと…… 」
そう、私ならば瓜二つのアユリを知っているから守ろうと思えるかもしれない。
だけどこの彼女は私とは昨日会ったばかりで、しかも知っているのは男の子の方の祇峰フタリだけのはずだ。
そんな未知の人間のために一歩間違えば取り返しのつかない命懸けを……
「そんなの決まってるじゃん。あなたと同じ理由だよ?」
「同じ理由……?」
「そう、おんなじ。」
当たり前のように目の前で彼女は答えるけど、すぐにピンとは来ない。
「だって言ってたでしょ? 私たちに何かあったらフタリくんに申し訳が立たないって。だから私も同じ。あなたに何かあったらアッチの私が悲しんじゃうよ。それに…… 」
そしてアユリは私に穏やかに微笑み掛けながら、
「あっちの私の親友なら、きっと私とも親友になれ…るはず、だか、ら……ねっ? フタリちゃん………? 」バタッ
そう私に告げた彼女は眠るように目を瞑り、ガードレールの方へと倒れかかった。
「アユリ!? アユリっ!!! 生きてる!? アユリ !!?」
彼女の体を受け止めた私は突然のことに驚き、焦りながら揺さぶる。
血は出てない。刺さったわけでもなさそうなのにどうして……
「あっ…… 」
よく見ると彼女の額の左の方にあざができている。
落ち着いて脈や心音を確認すると異常はない。気絶しただけみたいだ。
「私を助けた時にぶつけてたんだね……こんな怪我までして、こっちのあなたもバカなのねっ。でも…… 」
私はそっとアユリの体を寝かせ、手を掴んで呼びかける。
「助けてくれて、ありがとう。ゆっくり休んでて。私の……親友。」
感謝を伝え、立ち上がった私は再び動き出し掛けている敵の方を向く。
命を張ったもう一人の親友のためにも、やられるわけにはいかない。




