双利の輝き illuminate……
「ゔう、ごめんなさい、ごめんなさい、私が…私がノロマだから…… 」
僕の腕をハンカチで縛り終えた後もアユリさんは座ったまま涙を流して謝り続ける。
決して浅くはない腕の傷や大量の血は彼女にかなりのショックと自責を感じさせてしまったらしい。
「っ……はぁ、はぁ、謝らなくていいよ、腕も動かせは……するし、大したこと、ない。」
無理矢理強がってはみるが、痛みで言葉が途切れ途切れになってしまう。
「ぐすっ、でも、とても平気には…… 」
確かにこんな状態じゃ、心配するなって方が無理だろうな。虚勢にすらなってないのが自分でも分かる。
じゃあ、どうする?
槍使いもそろそろ動き出すだろう。何かしらの策がいる。だが今のアユリさんをこのままには出来ない。でも僕の怪我の事実は変わらない。きっと彼女の性格からして責任は感じ続ける。
だったら僕がするべきは虚勢を張ることではなく……
「お互い様だろ? 」ポンッ
「ぐすっ……え? 」
上半身を起こし僕は血のついてない方の手で彼女の肩に手を置く。
「き、君の言うように僕は君自身の事を知らないけど、君だって顔も知らなかった僕を助けてくれただろ……? だったら、お互い様で良いじゃないか。僕がした事を君もしてくれたんだ。」
「でも…でも、私は怪我してないし、戦ってもないよ……? とてもお互い様だなんて…… 」
負ったリスクの差から彼女はまだ納得出来ないみたいだ。しかし、
「そんなのは結果論だよ……。 なんなら僕の場合は君と瓜二つの子知ってたが、それに比べて君は全く知らない男のために槍の前に飛び込んでくるなんて危険を犯したんだ。お互い様が成立しないなら、絶対……君の方がすごいさ。」
そう、リスクの点で言うなら彼女の方が勇気ある行動をとっているはずだ。
「うぅ、でも……でもっ!! 」
だが、彼女のメガネの奥の涙は止まらない。
正論だけじゃ彼女の心は癒えない。
……まぁ、分かってはいた。
今までのはほとんど彼女の行動を称賛しているだけだ。
でもアユリさんにとって、きっとそんなことはどうでも良い。
だって、今彼女を追い込んでいるのは”自分のために祇峰双利が傷を負ってしまったこと”なのだから、こんなのはただ論点を逸らしただけに過ぎない。
必要なのは僕の行動の正当化だ。分かっている。言うべきことは分かっている。
だができるなら言いたくない。
まだこっちの世界の彼女には言えていないことと多分同じ内容になってしまう。
だから、それっぽい正論を見繕った。
それを言わないために。
でも……
「う、ぐすっ、ごめんなさい……、ごめんなさい……、ぐすっ…… 」
想い人の泣き顔は、見ていられない。
「スゥ……、それにっ!!」
僕は大きく息を吸い、膝を地面につきながら……
「たとえ世界が違っても、たとえ君が僕を知らないとしても、僕は薄明アユリをずっと守り続けたい……そう願ってるから君を守ったんだ。 」
ほぼ告白どころかプロポーズみたいな突然の台詞に彼女は顔を上げ、それを赤らめる。
「えっ、それって…… 「何、俺様を無視して恋愛ごっこしてやがんだぁ!!? 」
彼女の言葉が聞きたくなかった声によってかき消される。
いつの間にか復活した敵が膝立ち状態の僕らの目の前で槍を振り上げていた。
とうとう来たか……でも覚悟はもう出来ている。
「だから、何があっても君の事を絶対に守るっ!!! 」
「あっ……!!」
槍使いに気付いた僕は咄嗟に彼女を抱きしめ背を向けて盾となる。
標的が僕だけなら、アユリさんが見逃される可能性も十分にあるはずだ。
それにこんな台詞と共に好きな相手を守ってカッコよく死ねるなら、そんなに悪い人生じゃ……
「なっ、まぶしっ!! またかよ!!?」
ん? どうやらまた敵が怯んだようだ。僕は何回命拾いをすれば……てか、眩しい?
なんでだ? またアユリさんのスマホか?
いや違う。彼女は赤面で目を瞑りながら僕の胸の中だ。
じゃあ、何で……って、あれ?
「うぅ……えっ? なんで光ってるの……? 」
眩しそうに細く目を開けたアユリさんも驚く。
そう、なぜなら光っていたからだ。
それはスマホでもなく、他の誰でもない、僕自身が光り輝いていた。
「これ、もしかして…… 」
これを引き起こした原因の心当たりは一つしかない。
”なんとか間に合ったみたいだね…… ”
そして待ち望んだ声と共に光が強くなり、僕らを包んだ。




