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unknown 祇峰双利



 「 できるだけ遠くに行くぞっ!!!! 」

 

 そう言いながら、彼は今の状況が飲み込めていない私と鴉根くんを先導してくれます。

 

 「あの……君はあの人の正体とか、襲われてる理由とか分かるの? 」


 私は走りながら先頭の彼に質問しました。


 「ん? いや、襲う目的はわからんでも無いんだが、アイツの正体とか発言内容とかはさっぱり分からないな。ただ、昨日夢の中で自称神様の声に”変な槍使いに襲われるかも”って言う予告をされてた。」


 「えっ、じゃあ君は神の予知夢を見たって事か? 」


 次に鴉根くんが問いました。


 「いや、正確には夢じゃ無いと思う。その神と会話が普通に出来たし、夢なのにその全部を鮮明に思い出せるんだよ。しかも同じ夢を女の僕も見たって言ってた。」


 夢の中で神様からお告げとは……フタリちゃん達は私達より一歩先の現実離れを経験しているようです。

 やはりこの現象の原因はこの二人にあるのでしょうか?

 そうだとするとさっきの襲撃の目的は……


 「もしかして、あのお馬鹿さんは君達を殺して世界をもとに戻そうとしてるってこと……? 」


 「ああ、僕らのこと”分岐点”って呼んだ上で襲ってきたしな。多分ちゃんと二倍になってない人間を探してたんじゃ無いか? それで見つけた瞬間に槍投げてきたってところだろ。」


 なんて物騒な人でしょうか。人違いだったらどうするつもりだったのでしょう?

 でも本当に二人の命と引き換えに世界が元に戻るのかなぁ?


 「いや、おそらく直接の原因は僕らというよりは母さんだと思うから戻らない可能性のほうが高いと思う。性別の違う僕らを産んだ本人なわけだし、いまだに光ってるのも絶対におかしいしな。まぁ、動けない母さんを襲われたらどうしようもないから、この勘違いはし続けてくれた方が良いかもしれない。」


 確かに病人を相手に病院で暴れられても困ります。今も大分困ってますが。


 「ただ一応、夢の神様が言うにはこの世界は近いうちに勝手に戻るらしいんだが…… あの馬鹿がそれを信じてくれるとは思えないな。」


 あっ、この世界はちゃんと元に戻るんだ。

 ということは、もう一人の私やこの男の子のフタリ ちゃんとはそろそろお別れってことなのかな? ……なんか、ちょっと寂しい。自分同士でも一晩恋について語った仲だし。


 「でも、どうする? 説得が通じないんじゃ戦うしか無いぞ。あの超人みたいなアイツと。」


 鴉根くんの言う通りです。

 人類が二倍になったり、神様が予告してきたり、空から人が降ってきたりと、もう十分なファンタジック要素で溢れています。あの槍から殺人ビームとか出されてもあんまり不思議ではありません。でもって、そんなのに勝ち目があるとは思えません。


 「ああ、確かに僕らだけじゃ勝ち目はないだろうが……夢の奴が準備ができたら助けに来てくれるみたいなことを言ってたんだよ。だから、それまで逃げる。」


 なるほど、希望はあるわけですね。

 夢の出来事とはいえ、それには安心感を覚えます。


 「それで、あの、ところでなんだが…… 」


 なんでしょう? 先頭の彼が何か言いたげです。


 「なにも確認せずに連れてきちゃったけど、二人は僕が女として生まれた側の二人だよね?」


 「あっ、やっと気づいた? 」

 「あっ、やっと気づいた? 」

 

 そう、だから今は初対面さんと一緒に、とても気まずい命がけの逃走劇なのです。


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