自己信頼 believe in フタリ
「俺様達は絶対逃さねぇよ? 分岐点共? 」
僕たちの前に立ち塞がった全く同じ姿のもう一人の槍使い。
なんでもう一人いるんだ?……と問うのはこの人類二倍世界ではもう愚問である。気づかなかったコッチが悪い。
「相当俺たちのこと馬鹿にしてくれたみたいだったなぁ? ”おとぼけ顔も三手間で”ってヤツだぞ? 」
……それ、表情変えるの面倒くさいって意味になってるし、”仏の顔”跡形も無くなってるし、原型を推測してもまだ一回も許されてないからおかしい。
そんな各単語から使い方まで間違ったことわざで先程同様に馬鹿を晒しながら、突き刺さった槍を引き抜き、こちらへ向ける。
病院の方には馬鹿な槍使い。自宅の方にも馬鹿な槍使い。
「「散々言ってくれたが、コレじゃ逃げれないだろぉ!? ”ネズミの袋”ってヤツだ。」」
ああ、そうだ。コイツらのコミカル発言のせいで緊迫感に欠けるが……絶対絶命の挟み撃ちである。
単純な構図的には六人対二人で断然こっちが有利に見えなくもないのだが、何分相手はどちらも天空から降ってきてアスファルトを粉々にした現実離れ超人。どこまでの戦闘力を持ち、どんな未知の超能力を使ってくるか分からない。
だが、僕らより強いのは明らかだ。どうする……いや、ここはもう、
「なぁ、リンリンさん? 」
僕はもう一人の自分と背中合わせになりながら呼びかける。
「なに? こんな時にそんな呼び方とは結構気楽だね、トシトシ? 私は命の危機を感じてるのに…… 」
呼び方が定まらないだけだ。僕も命の危機は感じて相当焦ってるよ。
とにかく今そんなことはどうでも良い。今聞きたいのは……
「お前が見た夢のやつも言ってたか? 襲われた時に助けてくれるって。」
「うん。でも引越し?が間に合うかわかんないから、それまで自分らで耐えろって言ってた。だから今来てくれるかは…… 」
ああ、だから早朝に襲われたくなかったんだよ。せめて午後なら早く助けがあったかもしれないのに。
でも、襲われたもんは仕方ない。さっきの槍の投げてきた方向的に命を狙われているのは冗談ではないと分かる。なら今考えるべきは、
「お前、もしかして空手やってた? 僕らの部屋にトロフィーあったよな?」
「ええ、全国大会まで行った。 そういえば今朝見覚えない県優勝って書いてあるトロフィー踏み壊しちゃったんだけど、もしかしてあなたも空手で全国?」
普段なら聞き流せない事項があったが今は良い。そんな問答の間に目の前と後ろの馬鹿は腰を低くして身構え始める。
「「ヤバい、もう来るぞ!!」」
「「どうする!? どうする!? どうしよ!? どうしよ!?私たち死んじゃうのぉ!!? 」」
オサムとアユリさん達は揃って焦り出す。そして敵達はとうとう、
「「さぁ、とっとと死んでもらうぜぇーーーーーーーーー!! 」」
同時に突撃してきた。うわっ、マジ速え。だが、見切れない速さじゃない。もう、ここはやるしかない。
「おいっ!! ちなみに全国大会の成績は!!!?」
僕は最後に自分に問う。
「もちろん一回戦敗退!! それで心折れて引退したっ!!!! 」
返ってきたのは自信満々に情けない内容。だがそれは……
「メンタルまで完全に同じ!! やっぱりお前、僕だよっ!! 信頼してるから死ぬんじゃねえぞっ!!!!」
「そっちこそね!!!!」
自分同士の戦闘力を確認し合った僕らは自分に向かってきた槍をギリギリで避けて、右手でその柄を、左手で腕を掴む。
「「なにっ!?」」
そして前に飛びながら体を半回転させて勢いよく敵を後ろに投げる。背中合わせになった二人が同時にそれをすれば自然と、
「「ぐっは!!? イッテぇ!!!! 」」
同じ体が背中で凄い大激突を起こし、地面へと倒れる。致命傷からは程遠そうだが、しばらくは動けまい。なら今のうちに
「今だっ!! 二手に分かれて逃げるぞ!!!! 」
僕はアユリさんとオサムの3人で病院側へ、彼女もアユリさんとオサムの3人で祇峰家側へと走り出した。




