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薄明アユリ returns home with me 


 ……

 ………

 …………

 ……………どうしよう、すごく気まずいっ!!



 私-薄明アユリ-は病院から家への帰り道を二人で歩いている最中です。

 街灯しか照らない10時過ぎの真夜中を一人きりというのは高校生とはいえ心細いものでしょう。

 だから二人で良かった……とはなりません。


 今、私の隣にいるのは同じ顔で、同じ体で、同じ名前の私自身-薄明アユリ- なのですから。


 どちらかといえば初対面の未知の方とは会話に困ってしまう人見知りな私ですが、今回の場合はそうではありません。見過ぎてます。知り過ぎてます。見知り過ぎて何を聞けば良いのか全くわからないのです。

 そして私同様、相手も所詮私。

 性格も考えてることも同じみたいで、話しかけようとする素振りは何度か見せてくれますが結局言葉に詰まってしまってます。私も”自分”のことは言えませんが。

 ああ〜、家帰ったあとも一緒にいなきゃいけないのにずっとこんな雰囲気のままでいいのでしょうか?

 えっと何かなのでしょうか? 話すこと、知りたいこと、知らないこと……知らない人……


 「女の子のフタリくんってどんな人? ……あっ、ウフフッ。」

 「男の子のフタリちゃんってどんな人?……あっ、ウフフッ。」


 フフッ、やっぱりこの子も私ですね。笑い声までぴったり同時です。

 これじゃあせっかくの質問も台無しですね。

 でもこれが良いきっかけになりました。


 「フフッ、そうだよね。私達が話せることってこれしかないよね。」


 「だねっ。やっぱり、フタリくん達だよね。」


 やっと会話らしい会話に踏み切れました。

 そうです。頭の中までほとんど共通な私達にとっての未知はフタリくん達しかありません。

 早速私は、


 「じゃあ、私から聞くね。その……フタリちゃんってどんな子? 」


 「ん〜、ひたすらカワイイ子かなぁ。」


 結構アバウトな答えが返って来ました。


 「いや見た目だけの話じゃないよ? 普段は頭良くて冷静で頼れる子なのに、好きな事とか好きな人の前では必死で一生懸命だったり、ちょっとおバカさんになったりでとっても分かりやすくて素直なんだよね。」


 さっきまでの挙動を思い出すとなるほど納得って感じですね。

 好きな人ってのもすぐ察せちゃいましたし。


 「フタリちゃんは男の子でもそんな感じなの?」


 「どうかなぁ、頭良くて頼れるってのは同じだけど、フタリくんの好きな人とかは知らないし…… 」


 「ふ〜ん、そうなんだ。もしあなたの事好きだったら両想いなのにね?」


 「ホント、その通りなんだけどね…… 」


 ……あれ? 私今、失言してませんでした?

 気のせいですかね? そうですよね? 別に取り返しつかない反応なんて……


 「あっ、引っかかった。自分相手に気抜いちゃった?」


 やっちゃいました。バレちゃいました。


 「い、いつ気付いて……?」


 「うーん、いつからってわけじゃなくて、私よりキラキラしてたから……かな?」


 またなんかアバウトな答えが……


 「恋した事ない私なんかよりね。」


 「……えっ? 好きな子とかいないの?」


 「うん、いないよ。 いないし、いた事ない。」


 えっ、なんで……

 ……

 ………

 …………

 ……………そっか、知らないんだ。

 

 私の世界にしか”祇峰双利”はいないんだ。


 私が知ってる祇峰双利。

 私のクラスメイトの祇峰双利。

 私のお友達の祇峰双利。

 そして私が……


 その全部の祇峰双利をこの私は知らないのです。存在すらしてないから知らないのです。


 故に私の唯一の恋も知らない。

 

 「だからさ、だからね…… 」


 目の前の私は切なさを感じさせる笑顔で言いました。


 「聞かせてくれない?あなたが…… 私がしてる恋のこと。」


 もし今の私に恋が無かったら。


 そんなこと、全く考えられません。あり得ません。

 恋は今の私にとって小学生の頃からの一番のエネルギー原なのです。

 じゃあ、この私はどうやって生きているのでしょう?

 恋のきっかけすら与えられてない私はどう生きて来たのでしょう?

 ……やっぱり考えられません。そんな私を考えたくもありません。

 なら、なら私が今すべきは……


 「……分かった。とっておきの惚気を聞かせてあげる。」


 「フフッ、ありがと よろしくね。」


 この夜、私は恋を知らない自分に恋を、祇峰双利を、余す事なく全て語りました。



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