We are 分岐点 前編
「「そっか……だから二人への呼び方とか認識が違ったりしたんだね。」」
いろいろ道草を食ったが、やっと僕たちは人類二倍の謎を共有できた。
「なら、あなたは女の子のフタリくんと過ごして来た薄明アユリで…… 」
「あなたは男の子のフタリちゃんとの思い出がある薄明アユリってことなんだね? 」
アユリさんは互いに互いを認識し合う。
何か双子みたいで可愛い。
「「でも間違いないのか? お前達がその……世界の分岐点ってことは。」」
まだ受け入れづらそうにしてるオサム達が同時に疑問を投げてきたが……言われてみれば確かにコイツの質問ベタだな。
おかげで話の展開はしやすいけど高スペックの割に一般市民感がすごい。
「「ん?二人ともなんかバカにしてる?」」
「い、いや、してない、してない。」
「ううん 、してない、してない。」
やっべ、僕顔に出やすいんだったな。
ていうかそこも同じなのかよ、お隣さん。ますます僕だな。
「あっ、それで質問の答えだな。」
誤魔化しつつ、さっきの疑問に答える。
「そこは今のところ間違って無いと思ってる。SNSとかニュースみても僕みたいな異性が出てきたって情報は一つもないし、母さんが未だ光ってるのも僕らに絶対何かしらの関係があるだろうから。」
非現実の塊でも冷静になれば意外と分析やら予測ができるもんだと、我ながら感心する。
「うーん、なるほどな。ところでさフタリ?」
「ん?」
「は、はいっ!」
オサムの呼びかけに同時に応じてしまった。
てか隣のあなたは何でそんな嬉しそうなんですか?
「あ、ごめん男の方。そうか、ややこしいよな。」
「ア、アハハッ、そ、そうだよねー。呼び捨てだったら男の子だよねー……チッ 」
彼女の赤らめた頬が一瞬で元に戻り、代わりに僕を青ざめさせる。
ゴメンね。
おんなじ名前でゴメンね。
憧れの呼び捨てされててゴメンね。
「で、フタリ ?
(チッ)
「てことはその女の子は……
(チッ)
「お前の女バージョンで、お前はその子の男バージョンってことで良いのか?」
「ああ、誕生の瞬間から性別が分岐してるとしか思えないからそういう認識でいいと思う。僕ら互いのこと知らなかったし。だからここを正確に表すと僕が男として生まれた世界と女として生まれた世界の融合ってことなんだろうな。」
「じゃあ、何でそんな事が起きたんだろうな? フタ……
「さぁ!? そこは本当に何でだろうな!? 今から考えるべきはそれだと思うぞ!!……あと僕に話しかける時は慎重に頼む。」
でないと僕かお前が世界が元に戻る前に殺されるかもしれん。
「えっ? 何でだ? 」
僕が呼ばれるたびに隣から小さくも嫉妬まみれの舌打ちを浴びせられてるからです。
ほら今も睨まれてるよ。視線が刺さるよ。怖いよ。
「「そういえばさっきから思ってたんだけど、同じ名前じゃややこしいし、それぞれ呼び方決める?」」
ナイスアイデアだ! アユリシスターズ!!
それなら僕がオサムに呼び捨てされるたびに舌打ちを食らわなくてすむじゃないか?
「あっ、それは良いわね、アユリ。じゃあ私のことは”フタリ ”、この男のことは”トシトシ”と呼んでくれる? 」
おいちょっと待て。
「ねぇ? ”平等”って言葉知ってる? 」
「あら?これのどこが不平等なの? 」
何でそんな不思議そうな顔できるんだよ。
不平等条約なみにわかりやすいだろ、このアンバランス。
「だってズルいじゃない。どうせ彼に何年もずっと呼び捨てにされてたんでしょ? 採算は取れてるわ。」
「取れてねぇよ。こっちはガッツリ大赤字だよ。」
お前と違ってオサムからの呼ばれ方になんか微々たる価値しかない。
「ハァ、まったく。呼び方一つがそんな重要か? 」
「重要よっ!! 私は思春期なのよ!? 」
堂々となんて恥ずかしい奴だ。
間違ってはないんだろうが、高校生としてはもう少し大人ぶるべきじゃないのか?
「じゃあ、せめてお前も”リンリン”にすべきだろ。それで公平だろ。」
「嫌よ!!”フタリ ”って呼ばれたいのに本末転倒じゃない!! しかも今日やっと”祇峰さん”から卒業したのに…… 」
いや、ここでの”本末”は僕らの区別だったろ。
転倒どころか丸ごとすり替わってんじゃねぇか。私情まみれもいい加減にしとけ。
「……てかお前も呼び方変えてもらってたのか。」
「えっ? 誰との話? 」
「あ、いや、何でもないです。それよりよく考えたら僕らは、ちゃん、さん、くん、呼び捨てでもう区別できてるだろ。このままでよくね? 」
「なら、呼び捨ては私に譲りなさいよ。」
「知るか。オサムに言え。」
「「ええ〜? 私はトシトシ&リンリン派なんだけどな〜♪」」
お前らの意見も知らん、姉貴共。てかお前らの場合は常日頃そっち派だろうが。
「「ん〜♪じゃあ、間をとってぇ、”トシトシくん”と”リンリンちゃん”でいこ☆ 」」
「どこが”間”なんだよ!? 両方鷲掴みじゃねぇか!! 」
「じゃあ、こうしましょう……
「だからっ!それだと……
「「じゃ、やっぱりぃ……
「何でだよ!! だったら……
「何でよ!! だったら……
・
・
・
「「フフッ、なんか……出会ったばっかりなのに家族だね。」
「「だな。」」
くだらない呼称議論の中、アユリさん達が何かを呟いていた。




