母と母親 family of フタリ
「 母さん !! 」
「お母さん !!」
後にしてから1時間もしない内に市民病院に戻って来た僕たちは昨日の……じゃないや、一昨日の親父と同じように勢いよく病室の扉を開けた。
生死の境を彷徨っている最中の母。
この人間二倍現象において、あの人も二倍になっていることは容易に想像がつく。
でもそれは僕達にとっての分裂(僕にとってはそもそも違うが)とは状況が全く違い、命の危険を伴っている可能性がある。
その原因はこの現象、人間は二倍になっても周りの建物や車は二倍にはなっていないことだ。
もちろんそんなものまで二倍になっていたら、この街は混沌どころか即刻壊滅に至っていただろうからそうならなかったのは幸いだと思ってる。
だが一昨日ベッドの上の母の姿を見たとき、顔や体中に多くの精密機器が取り付けられていた。
今の彼女はそのおかげで存命できていると言っても過言ではない。
一応僕たちの服やら持ち物やらは分裂しているのでその機械がちゃんと分裂している可能性もある。
そう思いたい。
そう信じたい。
でも、もしそうじゃなかったら……
嫌だ。
絶対に嫌だ。
それは考えたくない。
まだ何も言えてない。
やっと見送り方を見つけたのに……
僕自信が伝えたい事を気づけたのに……
そんな最悪が頭をよぎった僕、いや僕達”フタリ”と目的地を察した様子の親友二人×2は病院へと駆け出した。
何となく予想はしていたけど、その道中や到着した院内でも分裂現象によるパニックはアチコチで起きており、それらを避けながら母の病室へ急ぐのには相当の苦労を要した。
一番の近道が人で埋まっていたり、病院のエレベーターも人混みで使えなかったりで目的地へは遠回りばかり強いられる。
それでも出来る限り冷静に”急がば回れ”を体現していった僕たちはやっと最後の9階分の階段を上り切った。
そのゴールである病室の前のではなぜか比較的冷静そうな看護婦や医者達が集まっていたがそんなことは今どうでも良い。
「「すいません!! どいて下さい!!」」
扉への道を遮る白衣の集まりを押し除け、僕たちは同時に病室の扉に手をかけた。
「 母さん !!……えっ?」
「お母さん !! ……えっ? 」
やはり同じ母に向かって呼びかけた僕たちの目の前に、またも衝撃的予想外が待ち受けてた。
その光景に僕達は咄嗟に目を覆う。
いや、それは絶望のあまりじゃない。眩しさのあまり目を覆った。
予想通り母も二倍にはなっていて二人が別々のベッドに寝ていた。
機械については結論から言えば、二人ともつけてなかった。床に散らかっていたから、きっと二倍の対象外だったんだと思う。
そう、だから結局僕たちの願いは叶わず、想定していた最悪の条件を満たしてしまっていることになる。
なのに僕達は絶望には達しなかった。
生きていることがひと目見ることで直感的に理解できたから。
その力強さに”死”を感じることはできなかったから。
母の2つの体は何故か未だに強く光り輝いていた。




