変貌した世界 ugly panic
”失せろ!!偽モンが!!”
”偽者はてめえだろ!!”
”ヤメろっ!! 自分同士で殴り合ってどうすんだよ!!”
”うっせぇ、お前関係ねぇだろうが!!”
バコっ!! グシャッ!! ドカッーーーーーーーン!!
しばらく二人で見つめ合い思考を巡らせていた僕が気づいた時にはもう罵声、悲鳴、爆音の嵐だった。
なんの前触れもなく二人ずつになった周りの人々はもれなく炎と黒煙の中で混乱と乱闘に巻き込まれていた。
運転中に分裂してしまった者
もう一人を偽者と決めつけて排除しようとする者
それらを収めようとする者
返り討ちに遭う者
どうしていいかわからずその場で泣き続ける者
そんな人々が渦巻き合い、惨状が惨状を産み続ける。
”止めないと。”
この状況を放っておけなかった僕は目の前の混沌に走り出そうとした。
隣にいた”彼女”……いや、きっと”僕”も同様に。
でも、
「やめとけ、 フタリ 。もう俺たちに収拾できる事態じゃない…… とりあえず逃げるぞ、みんな!! 」
「やめとけ、フタリさん。もう俺たちに収拾できる事態じゃない…… とりあえず逃げるぞ、みんな!! 」
冷静を保ったオサム達にすぐさま道を塞がれた。
ダメだな僕は。ここで考えなしの特攻をしても巻き込まれることは目に見えているはずなのに……
オサムは多分そんな僕の中にある中途半端な正義感の発動を予測してくれていたんだと思う。
やっぱり長年の付き合いは伊達じゃないな。
「「でもどうしよ、どうしよ? どこに逃げる? どうする? どうする? 」」
アユリさんが二人でアチコチあたふたしながらみんなに問いかける。
僕が言うのもなんだけどもう少し落ち着いてください。結構可愛らしい動きだけど。
でも逃げ場所か。やみくもに走るのも危険そうだしな。あっ、でもここからなら……
「ここからなら僕の家が一番近いぞ! 次の信号曲がってすぐ…… って、やっぱり? でも、そりゃそうか。」
「ここからなら私の家が一番近いよ! 次の信号曲がってすぐ…… って、やっぱり? でも、そりゃそっか。」
納得具合まで全部被った。というか多分マイハウスの住所も駄々かぶりだと思う。
いやまぁ、彼女の正体を考えれば当然っちゃ、当然だ。
「「えっ、ふたりのフタリさんはもうお互いのことわかってるの?」」
いつの間にかアユリさんに変なまとめられ方してるけど響きがいいから別にいいや。
ああ、さっきの納得した様子からしてアッチも気づいてる。
”パラレルワールド”とも呟いてたし、ここまでセリフやら行動がかぶる時点で確信を得ざるを得ない。
「「何となくお互いの正体ぐらいは分かってる。後で説明するからとりあえず今は逃げることに…… 」」
”うわ〜〜んっ、おかあさ〜〜〜ん!! どこーーーーーー!!? ”
後ろのパニックから必死に母親を求める幼い声がした。
どこにいるかは分からない。
だから僕たちに助けようがないこと分かる。
だがその”母”を求める言葉は別に助けるべき存在を僕たちに気づかせ、同時に顔を青ざめさせた。
「お母さんがヤバい!!」
「 母さん がマズい!!」
僕たちはアユリさんと歩いた道へと逆走し始めた。
きっと全く同じ母を求めて……




