最後の消滅 go to a new world
「そうか……よかったよ、自分の存在の大きさに気付いてくれて。」
ビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシッ…………!!!!
「ええ、二人のおかげよ。」
「ああ、二人のおかげだ。」
ビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシッ…………!!!!
「僕たちのために起きたあの惨状は決して忘れない。でも、それを生きちゃいけない理由には定めない。自分の価値を貶めない。」
ビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシッ…………!!!!
「罪として背負うんじゃなくて、全部受け入れた上で、許容した上で、生きて行くよ。」
ビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシッ…………!!!!
「うん、それでいいと私も思うよ。世界もほぼ元に戻ったんだもん、気にしすぎちゃ…… 」
ビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシッ…………!!!!
「あのぉー、すごい感動シーンだと思うんだけどゴメンね……ちょっといい? 」
「ん? どうしたの? 」
私達四人の間に申し訳なさそうにコイハルちゃんが割り込んできた。
「確かにさっきまでは世界は元に戻りかけてたと思うんだけどぉ……、あのぉ……、そのぉ…… 」スッ
言葉に詰まり続ける天使な彼女が、上空を指差す。
それに従って見上げた先で起きているのは……
ビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシッ…………!!!!
「世界滅びかけてないっ!!? 」
青空に入り始めたヒビ割れだ。
「ええええええええええっ!!? これ大丈夫なのっ!!? 」
「ええええええええええっ!!? これ大丈夫なのかっ!!? 」
話に集中していたオサム君とアユリは今になって、空の異変に気付く......いや、もう空だけではないようね。
ビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシッ…………!!!!
ビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシッ…………!!!!
ビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシッ…………!!!!
「そこら中の家にも、道路にも入り始めてるし……!! 」
「ちょっ、これ、二人が生き残る云々の前に地球の終わりなんじゃ……!! 」
地球滅亡。
この崩壊していく空と町の景色を目にすれば親友達がそう受け取るのも無理はない。
誰もが終末を連想してしまうほどの絶望的崩壊図。本当は全ての終わりでなく、私達の始まりの合図であるのに。
「そろそろ質問に戻らせてもらうぞ。この空とかに入り始めたヒビは今日、5月22日の消滅ってことだな? 」
私達フタリ以外で崩壊に全く動じていなかった杉佐多さんが答えを問いに乗せて示す。
そういえば、謎解き中であることを忘れかけていた。この人に進行をぶん投げたことも。
「あ、ああ、流石だな。実際に起きるかどうかは分からなかったが、これも一応想定内のことだ。」
ヒビの目撃から一瞬で答えを導いたことへの称賛を混ぜながら、隣の彼がYesで答える。
私達の体を蝕むヒビと景色を蝕むヒビが同一な物であるということから気づいたのだろうか。5月22日が排除されることに。
「5月22日って、今日だよね……? 」
「今日が消える……? 」
「チサト、世界が終わるわけじゃないってこと? 」
「5月22日……正確には人類二倍の超常が起きた5月21日の18時頃から今の時間までの世界が消える。つまり、昨日の夕方まで時間が巻き戻るんだ。」
「ええっ!? ちょっとしたタイムスリップじゃんっ!!? 」
「ほんの十数時間だから、お前が言うタイムスリップってほどの壮大な時間じゃないが……ん? いや、世界自体が二倍になっていたならもっとか…… ?」
コイハルちゃんの疑問に一度答えた杉佐多さんだったけれど、喋りながらその内容の一部に未確定を発見する。
おそらく巻き戻った先の時間のことを迷っているのだろう。ここから推測される時間が二つあるのだ。
これを確定に持っていくのが、答え合わせ担当の私達の役目なんだろうけれど……
「巻き戻るのは合ってると思うけど、ほぼ状況証拠推理だから、どっちに巻き戻るかまでは私にも分からないんだよね。昨日なのか、十七年前なのかは。そうでしょ? 」
私は同じ推理をもつはずの彼に回答不可への同意を求める。
「時間が巻き戻される原因は、人類二倍分裂の真実が二つの世界の融合過程だったことにあるからな。一つになりつつあった世界とはいえ、人間だけ見れば二つの世界。一つと二つが同時存在する矛盾がこの超常下では発生していたことになる。だから世界の融合過程の一番最後と言える祇峰フタリの消滅に合わせて、高確率でこの数十時間は僕らの様に世界からの矛盾排除の対象になると思っていたが…… 」
「どこまで巻き戻るかを時間の矛盾で考えると、君達祇峰フタリを中心とした十七年間の過去そのものが二つの世界で矛盾する。だが、その十七年間は二倍にされたと言っても、それぞれ一つの世界として重なることのなく成り立っていたために、矛盾として認識されない可能性もある。だから、二倍からの回帰の法則が分かり切っていない今の段階では昨日に戻るのか、世界二倍の始まった十七年前に戻るのかが確定できないということか。」
「杉佐多、君ホントにすごいな。」
家を訪ねてきた時に共有しておいた矛盾排除のシステムを駆使して、杉佐多君が戻り先不明の結論をまとめにかかる。
自分で聞き始めといて、自分で締めるあたりが司会者どころか完全に三人目の探偵に就職してる。ここは今すぐにでも奪い取られそうな謎解き役としての立場を維持するため、ここは私が締めよう。
「そう、どこの時間に戻るのかは不確定。でもこれだけは確実に言えるわ。この割れた空の先では...... 」
「祇峰フタリが二人共いなくなってる新世界。そんな場所が私達を待っているのよ。」




