訪問者 in the lost フタリ
「あっ、お前も来たか。」
階段を降りてすぐの玄関には男の私も来ていた。
「ねぇ、誰だと思う? 」
「わからん。でも、今の僕たちに誰かが訪ねて来るはずなんてないし…… 」
彼も私もと同じで訪問者に心当たりはないみたいだ。現状の把握も一致している。
私達を訪問してくる様な人間の記憶から、祇峰フタリは消えてしまったのだから。
「まさか敵じゃないよね……? 」
私は病院への道で出会した槍使い達のことを思い浮かべる。扉を開けた途端にまたあんなに激しい戦いをすることになるのは御免だ。本当に敵の訪問なら居留守を使わせてもらいたいのだが……
「否定はできないな……、とりあえず覗き穴で誰なのかを見て…… 」
彼はドアの向こうにいるのが私の危惧した相手かどうかを確かめるべく、スコープを恐る恐る除いて相手を確認しようとするが……
「ん……? うわあああっ!!? 」
ドアに目を近づけた彼はいきなり驚きの声と共に尻餅をついてしまう。
「っ!? どうしたのっ!!? 何を見たの!!?」
私は怯える様に腰を落下させた彼にすぐさま駆け寄って、何を見たのかを問う。こんなに驚くってことはまさか本当に敵なんじゃ……!
「い、いや、誰かがこっちを見つめ返してきたんだよっ!!瞬きもした!! 」
「……え? それだけ? 」
完全に心配して損した。
“男なら強くあれ”なんて古臭いこと言うつもりはないけれど、彼が最後に唯一頼れる人間なのだから、もう少し図太くあって欲しい。今まで慰められっぱなしの私が言えることじゃないかもしれないけど。
「でも、そんな悪戯するなんて、本当に誰が…… 」
「あっ、驚いた声したからいるっぽいよっ、チサトっ!! 」
ドアの向こうから、男の驚きを誰かに報告する声が聞こえた。
やんわりとした幼気な女の子の声。聞いただけで天使の様な姿を思い浮かべるあの……
「確かこの声って…… 」
ガチャッ
声の正体に気づいた私はすぐにドアを開ける。
そこにいたのは、予想どおりの二人。
「ヤッホー、さっき振りだねっ♡ フタフタコンビっ。」
「やっぱ、ここが君たちの家だったか。」
相変わらずのボリュームの髪型を保った女の子と対照的な短髪クール。
そう。私達を訪ねてきたのはコイハルちゃんと杉佐多さん。
私達を槍使いから助けてくれた、一見射手座と乙女座のカップルにしか見えない二人……えっ? 二人?
「あれ……? 四人じゃないの……? 」
私はなぜここに来たのかという疑問以前に彼女らの人数に違和感を覚える。いや、正確に言えば人数と言動に違和感を覚える。
「あー、そうそうっ。それがさっき空を飛んでたら、急に私達も光に包まれて一人に戻れたんだよねぇ〜。]
「その隙に槍使い共に逃げられたがな。」
一人に戻った? 戻ったならなんで……? なんで……
「あなた達、私達のこと覚えてるの……? 」
「んぅ? 何言ってるの? 」
彼女達は私の質問に違和感を覚えつつも、その問いに当たり前の様に即答してくれた。その答えを聞いた私は感激のあまりコイハルちゃんの胸に飛び込んで抱きついてしまう。だって……、だって……
「覚えてるに決まってるじゃん。」
「 覚えてるに決まってるだろ。」
一人に戻りながらも、祇峰フタリを覚えている人間が存在していたのだから。
ダッ! ギュウウ!!
「えっ!!? ど、どうしたのっ!!? 」
「うわぁぁぁぁぁぁんっ……、私を、私達を覚えてる人が、まだいたぁ…… 」




