邂逅世界の終着点 fusion
「そんな……、私の部屋が…… 」
全部崩れ去って行く……
パリン!! サァ……
部屋の三分の一を占めていたベッドも、
パリン!! サァ……
今日の朝まで潜り込んでいた毛布も、
パリン!! サァ……
毎日持ち運んだ学生鞄も、
パリン!! サァ……
必死の思いで手に入れたトロフィーも、
パリン!! サァ……
オサム君に選ばせた服も、
パリン!! サァ……
昔から集めて来た漫画も、
アユリと一緒に買い集めた本も、
昨日一悶着起こしたゴミ箱の本も、
思い出の卒業アルバムも、
二人の親友と写った写真立ても、
全てが光となって、消滅してしまった。
「もう……、今度はなんで……? 」
度重なる超常に対して絶望を通り越して、呆れが発現する。
この部屋だって10年以上の歳月をかけて作り上げて来た私の思い出の場所。それが空っぽになってしまったことは友人や親ほどではないにしろ、それなりに悲しむべきことはずなのだが、自分の感情がこの謎急展開の数々について行けなくなって来た。涙を流すことが多すぎる故に、素直に悲しみ切れない。
「記憶の次は私物って……全部私達の大切なものじゃん。なんなの? 嫌がらせなの? 世界は私達のこと嫌いなの?」
私は半分ヤケになって、どこかしらに怒りまじりの疑問をぶつける。
少しでもこのモヤモヤストレスを発散しないとやってられない。
「フフッ……、まるでこの世界、私達が気に食わなくて追い出そうとしてるみたいね…… 」
「ああ、それがこの世界の終着点なんだろうな。」
「あなたもそう思…………えっ? 」
私を絶望と混乱状態に陥れまくる世界への完全冗談の嫌味だったのだが、男の私はまさかのこれを肯定した。
「な、なに言ってんの? 冗談のつもりだったんだけど……? 」
「いや、追い出すなんて優しいもんじゃないんだろうな。排除って言った方が正しいのかも。」
「排除って……? 本当に何を…… 」
私の戯言から展開され始めた語りなのに早速ついて行けない。
「ほら、あれ見てみろよ。」スッ
戸惑う私の様子を見兼ねたのか、彼が部屋の片隅を指差して視線を誘う。
そこにあるのは私が使っていた机……って、あれ? 他のベッドとかと違って消えてないし、ヒビも入ってない。
「それにあれも。」スッ
今度は反対側の壁を指先で示す。
「あっ……本棚もだ。」
中に揃えられていた本達は消滅して空っぽだが、本棚と言える木製家具自体はしっかりと形を残している。
ほとんどの物が消え去ってしまった異常の中で、平常を保てているその二つもある意味異常な存在だ。
「どうしてだろ? この二つに他の私物と違う部分でもあるの……? どっちもお姉ちゃんのお古だから結構年季も入ってて、あんまり惜しいものでもないけど…… 」
「ああ、僕にとってもな。」
彼が私の言葉に同意する。
そっか、あっちの世界でも机と本棚はお姉ちゃんからのお下がりなら意見が合うのは当然……ちょっと待って、あっちの世界でも? あれ? もしかして、この二つと他の消えちゃった物の違いって……
「……片方の世界にしかない物が消えてるの? 」
私はある消滅してしまったものの共通点に気が付く。
「そう、僕も同じ考えだ。」
色が違うことで本体自体も異なるスマホ。
出自や金額が異なるベッド。
趣味嗜好で収集物の異なる本や服。
それに写っている人間が違う写真。
さらに言えば、祇峰フタリに関するみんなの記憶も。
全て私達の性別が違う故に起こる、二つの世界の相違点。
私の世界にあって、彼の世界に存在しない物。彼の世界にあって、私の世界に存在しない物。それに該当する物がどちらの世界のものも残す事なくどんどん消え始めてる。
逆に机と本棚は同じお姉ちゃんから譲り受けた物だから両世界での共通物。だから消えてないってことだ。
「でも、なんでそんな必要があるの? 元に戻り始めてるなら、もう片方の世界のことなんて関係ないんじゃ……? 」
私は尚更深まった疑問を呟く。
ここで共有物と相違物を気にして消去してしまえば、世界が戻っても完全に元通りにはならない。わざわざ人類を邂逅させて、私達関連のものを消そうだなんて嫌がらせが過ぎる。そこまで世界に嫌われた覚えはない。
「いや、どうやら“世界が戻る”って認識が間違ってたみたいだぞ…… 」
「は……!?」
終着点を察しているという彼の言葉に私は唖然とする。
だって、それは今までの思考を丸々覆す様な指摘。元に戻るのが当たり前だと思っていた私にとって刺激が強過ぎて、簡単には飲み込めない。
「それって、つまりどういう……? 」
「二人から一人への戻り方とか、僕らに関する記憶や物が消えて行く現状を見ればこう考えた方がしっくりこないか……? この世界は元に戻るつもりなんかなくて…… 」
そして彼が告げた世界の終着点は……
「人間ごと融合しているって。」
あまりにも予想外で更に人智を超えた場所だった。




