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縁の本棚  作者: 雪縁
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本日の一冊 「癒しの季節ノート」

「癒しの季節ノート」【幻冬舎】

           倉嶋 厚・文


 誰しも長い人生の間には、大なり小なり、さまざまな幸不幸に翻弄されることがある。

 倉嶋 厚さん。これは、長くテレビの気象キャスターをされていた方の著である。

 著者も札幌や鹿児島に転勤をしながら仕事を続ける間に、結核や胃潰瘍、喉頭癌などの病との闘い、長年連れ添ってきた妻との死別、その後襲ってきた鬱病など、辛い経験をしながらも、この「季節ノート」だけは続けてきたという。


 四季の移ろいの写真とともに、添えられた短いエッセイ。

 たとえば、「薫風」の章のアカショウビンの写真。

 別名「水恋鳥」と呼ばれるこの鳥は、美しい濃赤色で腰に青白い羽毛を持ち、ピョロロ、ピョロロと哀調を帯びた声で鳴く。梅雨前線より少し前に日本列島を北上する鳥でもあるらしい。このころ、定年間際の転勤の感傷にひたっていた著者は、当時まだ元気であった妻に「定年までの二年間を次の新しいステップにしましょうよ」と励まされていたらしい。アカショウビンの鳴き声は、妻の記憶とともに著者の心に深く残っていると記されている。


 また、沸き上がるような入道雲に、空高く広がる薄いすじ雲。これらの雲が空で出会っている風景を、私自身も何度か見たが、これは「ゆきあいの空」と呼ばれるらしい。

「ある季節が去り、次の季節に移り変わろうとするころの空」であり、主に、八月を夏と秋の「ゆきあい」の季節というのだそうだ。


 また、「忘れ音」という項目がある。

季節が進むにつれて、前の季節の風物は「残ったもの」として感じられてくる。たとえば、冬から春にかけては「残る寒さ」「残る雪」晩春には「残る花」「残る花」寒菊の別名は「残り草」そして、季節はずれに虫などが鳴くのを「忘れ音」というのだそうだ。

年を重ねると、老人としての自分のつぶやきも「忘れ音」として聞いてほしいと著者は書いている。

 

 いちめんの彼岸花、カモシカの「寒立」、人知れず咲くセツブンソウ、路傍の花のタンポポ、はかなげにゆれるコスモスなどたくさんの写真をめくるたび、人の心は季節とともにあるんだなと改めて実感させられる。そしてそれは、年をとるごとに、だんだんと強まっていくのではなかろうか。


 人にはそれぞれの「残日計」があるという。

 だんだんと少なくなる一日一日を丁寧に過ごしていこうという言葉もじんわり響いてくる。








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