1代目 21
仮眠から目覚めると、目の前に1代目の顔があった。
どうやら自発的に目覚めたのではなく、起こされたようだ。
「どうしたんですか?」
目を開けているのにも関わらず、1代目は更に肩を軽く叩きながら確実に俺の台詞を言っている。
どうしたのか?ただ寝ていただけだと思うのだが……寝相でも酷かったのだろうか?
ソファーから落ちていないから、大した事はないと思うんだけど。
時計を確認しようとして、頭の左半分が痺れている事に気が付いた。
「あぁ、頭……」
「痛いんですか!?」
「痺れてる」
俺の答えに安心したのか、1代目は俺から離れていく。
まだ色々聞きたい事はあるのだが……。
あれ?
左目が痛い。
違う、左目の奥?
いや、米神か?
頭の痺れが取れていくにつれ、痛みの範囲が広がっていく。
「木場さん?」
また心配そうに俺を見る1代目。
本当なら「大丈夫」だと言いたいのだが、それ所ではない。ガツンガツンと頭が痛い。
グリグリと米神を押すと気は紛れるが、そうすると余計に悪化したように痛みが激しくなり、起き上がりたくない程の激痛になってしまった。
きっと、偏頭痛だろう。
「濃いめのコーヒーいれて……ブラックで」
いつもなら俺がそう頼んでも「木場さんがいれて下さいよ」と言い返してくる1代目が、何も言わずにコーヒーを用意してくれた。
上半身を起こして飲み始めるが、左目の奥から額、左側の頭の痛みは治まらない所か吐き気まで出始める。
前日の夜に花粉症の薬を飲んでいるので、一応24時間経ってから鎮痛薬を飲もうと思っていたし、空きっ腹では飲みたくないとも思っていたが、吐き気まで出てしまっては仕方がない。
鎮痛薬を飲み、再びソファーに寝転がった。
1時間程寝転んでいると、薬が効いたのか痛みが少し引いた。それでも頭の中が引きつれているような、妙な感覚がある。
なら、今の間に就寝準備を整えよう。夕飯は作ってあるから、何も言わずともレンジで暖めて食べてくれるだろう。
歯を磨きに洗面台に移動すると、後ろを着いてくる1代目。まさか「お笑い劇場」か?と思ったが、そうではないようで。
「大丈夫なんですか?」
と、顔を覗き込まれた。
そう言えば、頭痛になる直前俺は1代目に起こされていたんだっけ。起きた時に頭も痺れていたし、何か余程可笑しな事があったのかも知れない。
「寝相が物凄かった?」
「いえ……寝相が悪いのは、いつもの事なので……」
いつも悪いのか!?それなのに「いいえ」は可笑しくないか!?つまり、起こした原因は寝相以外に理由があったと?
「じゃあ、なんです?」
「寝言……魘されていたので」
1代目は俺の額に手を当てるが、熱はない。それなのに少しもホッとした表情を見せてくれない。
「寝言、何て言うてた?」
なんとなく気になって尋ねてみると、1代目は完全に俺から視線を外して俯き、なにやら深刻そうに教えてくれた。
俺は唸りながら延々と「頭に血が」と言っていたそうだ。




