第6章 政変…のはずですが(6)
剣を抜いたり納めたりしていたら、ひょいっと稽古場に総司が顔を出した。
「どこへ行ったかと思ったら…。そろそろ見回りの時間ですよ」
「あ、そんな時間? すぐ用意する」
時計がないからね~。お寺の鐘と影の長さだけが頼りだよ。
とはいえ…、まあもう一本刀を差して、羽織を着て、襷をかけるって感じだけどね。
あ。あとは鉢金っていう頭に巻く鉢巻みたいなの。一応、篭手もあるな。最初のころに比べたら、こまごました衣装が増えたよね。
門のところに行くと、もう彩乃もいた。一式着ていると、隙がない美少年剣士って感じだ。精神年齢のせいか、さらしで胸を巻いてしまうと、本当に少年っぽい。
新入りの隊士の中には、剣の強さから彩乃は男だって信じているのもいるらしい。まあ、普段から袴姿だしね。彩乃は人見知りだから、あまり話をしないからなおさらかな。
「誠」の文字を染め抜いた旗を掲げて、隊列を作って歩きだす。
目立つんだ。これが。このせいで、とりあえず下っ端というか、ごろつきレベルの不逞浪士は京都からいなくなりつつある。逆に残っているのは割りと肝の据わった連中かな。
僕は一番後ろからだらだらと歩いていた。嫌いなんだよ。こういう団体行動。
ま、これでお給料もらってるからやるけどさ。これでもらえるんだから、楽なもんだけどwww
みんな、わりと周りに睨みを効かせながら歩いてる。彩乃はまっすぐ前を向いてるけど、それでも真面目な感じ。
僕だけダメな感じ? ま、いいか。
ぶらぶらと歩いていると、ふっと目の隅で家の影に隠れる人陰を見た。あ~、多分あれだ。不逞浪士ってやつだ。正確に言うならば、開国派とか倒幕派とか、新撰組もとい壬生浪士組とは逆の立場を取る人たちだね。
別に僕はどうでもいいや~と思っているので、そのままにしておく。斬りかかってきたら応戦するしかないけど。
こうやって歩いてとりあえず見回りが終わる。あとは屯所に戻って交代するだけだ。なんか僕的には、ルーティンワークになっちゃったよね~。




