第1章 再会(3)
長い長い説明の後で、土方さんは呆然とし、そして家の中をぐるりと見回した。
「信じられねぇが…しかし見ているものも信じられやしねぇ」
そして腕組をして目を瞑る。
「じゃあ、何か。俺は今、未来にいるってぇことか」
「そういうこと。土方さんにとっての未来。僕らにとっては現代だね」
土方さんが目を開けて、僕をギロリと睨んだ。
「てぇことは、てめぇは、未来から来た奴で、あの時代に何が起こるか知っていたってぇことか」
僕は肩をすくめた。
「なんとなく。そんなに細かく知っていたわけじゃない。土方さんだって、仮にあの時代の150年前に飛ばされて、何があったとか知らないでしょ」
「うっ」
土方さんが詰まる。
「とりあえず…今日のところは休もうか。土方さんも疲れてるでしょ」
そう言ってから僕は気づいた。考えてみたら部屋がない。まあ、僕の部屋に布団を敷くという手もなきにしもあらずだけれど…うーん。土方さんと一緒の部屋は抵抗がある。
総司がいる分には気にならなかったんだけど、こればっかりは理屈じゃないんだよな。どうしようかなぁ。
ぽりぽりと頭をかくと、レイラが気づいたように僕を見た。
「私があなたの部屋に行きましょうか? そうしたら彼は一人になるでしょ?」
「えっ?」
聞き返す僕に、楽しそうににっこりと笑うレイラ。彩乃と総司は目を丸くしている。
「別に私はあなたと同じ部屋でも気にしないけど」
「いや、ちょっと待って。気にする。僕が気にする。いとこと言えど、僕も男なんだけど」
「あなたの性別については、確認しなくても知ってるわ」
レイラ…。絶対に楽しんでる。
「夜中に理性が切れて襲ったらどうするつもり? バトルになるのは嫌なんだけど」
「別に。襲ってもいいわよ」
え。
慌てる僕を見て、ますますレイラの目が楽しそうに細められる。やばい。彼女の術中にはまってるよ。これは。落ち着かないと。
「えっと…」
とりあえず言葉に出してから、急いで考えた。
「今日のところ、土方さんは僕の部屋。それで…明日になったら、悪いんだけど、総司と彩乃は教会のほうへ移ってくれる?」
彩乃が小首をかしげて、総司も問うように彩乃を見てから、僕を見る。
「離れみたいになっちゃうし、古いから申し訳ないけど…教会の奥に牧師用の部屋があるんだよ。簡易シャワーも付いてる。トイレは教会堂の大きなトイレになるけど、夜中に行くんじゃなきゃ、こっちにくればいいかなって思うし。普段はこっちにいて、寝るときだけあっちでもいいかな?」
パチパチと彩乃の目が瞬いた。彩乃は教会堂の奥にあまり入ったことがない。そこは老牧師が使用していた部屋で、そのまま残していた空間だ。二階は日曜学校の教室となっているんだけれど、その下にある。半地下状態の部屋で小さな祭壇があって、ちょっとリビングではしにくい話などをするのに使っていたらしい。でも今は、その手の相談を僕にする人はいないしね。
ちなみに言えば、地下倉庫の入り口の傍にある部屋だから、多分扉ぐらいは見ていると思うんだけど。
「どこにあるの? そのお部屋」
彩乃がおずおずと言った。ああ、やっぱり認識してなかったな。
「今から見にいく? もしかしたらくもの巣があるかもしれないけど」
総司と彩乃がお互いを見て、こくりと頷いた。




