表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
347/639

第5章  牽制? 威嚇?(4)

 店に入ると…ミイラ取りがミイラになっていた。10人ぐらいの集団の中に、迎えに行ったはずの総司が、女の子に両隣を挟まれてコップを持たされて飲んでる。彩乃は彩乃で隣の席の男の子から覗きこむように話をされて、動けなくなっていた。


 やれやれ。


 この集団、女の子のほうがやや多い。


「彩乃~。帰るよ~」


 そう声をかけたとたんに、女の子のうちの一人が立ち上がって、すかさず僕のところに来る。


「彩乃ちゃんのお兄さんですか~?」


 お化粧をばっちりとして、可愛く見せてるけど。うーん。好みじゃないな。


「そうだよ。迎えに来たんだけど…」


 そう言えば、するりと彼女の腕が僕の腕に絡みつこうとする。なるほど。こうやって総司は捕まったわけだ。


 僕は身体を半身ずらすことで彼女の腕を避けた。そしてぱっと自分の腕を持ち上げて、彼女を制する。


「悪いね。知らない人にベタベタされるの、あまり好きじゃないんだ」


 あくまでにっこりと、そして申し訳なさそうに言えば、彼女は慌てて首を振った。


「私のほうこそ、すみません」


 おや。素直。


 僕は一歩進んで、飲んでる集団に向かってすまなそうに言った。


「盛り上がってるところに申し訳ないけど、彩乃も総司も明日の朝、早いから連れて帰らせてもらうね」


「え~。もうちょっといいじゃないですか~」


 彩乃の隣にいた男が文句を言う。髪はやや茶色にしていて、服装も今風で。軽い女の子だったら、簡単に引っかかりそうな男だ。こいつか? 彩乃が困ってるのは。


そんなことは表情に出さずに、僕はにっこりと微笑んだ。


「明日は朝から教会の奉仕活動なんだよ。僕は牧師だからね。二人には良く手伝ってもらわないと」


「えっ。彩乃ちゃんの家、教会なの?」


 そんな声が飛んでくる。


「う、うん。そうなの」


 彩乃が答えたところに、すかさず僕は畳み掛けた。


「ほら。総司も」


 別に本当に奉仕活動があるわけじゃない。単なる方便なんだけどね。


「寝坊したらたたき起こすよ?」


 僕がそう言えば、女の子の一人が恐る恐るという風情で声を出した。


「もしかして…彩乃ちゃんの彼氏って、一緒に住んでるんですか?」


 この質問を待ってたんだよね~。


 彩乃が答える前に、僕が答えた。


「そう。総司はうちに居候してるよ。僕とは兄弟みたいなもんだし」


「えっ!」とか「きゃっ!」とか声が飛ぶ。


 その瞬間に、彩乃の隣にいた茶髪の男が僕を睨んだ。


「その人…彩乃ちゃんの彼氏っていうか、婚約者なんですよね?」


「うん。そうだけど?」


「この年で決めちゃっていいんですか? お兄さんの都合ですか?」


 よし釣れた(笑)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ