第5章 牽制? 威嚇?(3)
翌日、コンパが終わる頃を見計らって車を出した。最近総司の指定席は助手席だ。
「若い女子が、こんな時間まで外を出歩いていていいんですか?」
僕は運転していたから、前を向いたまま答える。
「このぐらいは普通だよ。『オール』って言って、夜通し騒ぐ場合もあるしね」
「えっ」
「女性も男性も一緒にね。酒を飲んだり歌を歌ったりして騒ぐ場合もある。まあ、怪しい雰囲気になる場合もあるだろうけど」
うっ…と総司は言葉に詰まった。
「何か…非常によろしくない気がします。その行為に何か意味があるんですか?」
僕は苦笑いするしかない。
「うーん。何も無いんじゃないかな。価値観の相違なんだろうね。ここ数十年だよ。こんな風に変わってきたのは」
「よく黙って見ていられますね」
「別に。男女が一緒に騒ごうが、風紀が乱れようが、僕らに影響があるわけじゃないし」
総司は黙り込んだ。
「ま、見ていて、快楽の先に何があるのかなって思うことはあるけど」
「はい?」
「なんか、その場だけで楽しければいい、気持ちよければいいって言うほうに時代が流れて行っている気はするよ。思考停止してるっていうか、未来を見てない気がするっていうか。だから、その先に何があるのかなって思っては見てる」
「はぁ」
総司は要領を得ないようだ。
「つまりさ。僕らは人間より寿命が長いわけで、この時代の先まで見られるから、このまま行くとどこに行くのかなって思って見てるってこと」
「楽しんでいますね?」
総司が咎めるような声で言った。
僕は運転しながらもひょいっと肩をすくめる。
「所詮は他人ごとだからね。人間がやることに口出す気はないし。快楽を追い求めるだけ追い求めて、そのまま文明が衰退しても、人間という種が残ってくれたら、僕としてはどうでもいい」
はぁ~と総司が大きくため息を出す。
「俊って…本当に根っからの…その…一族っていうか…」
「それ、リリアにも言われた」
「そうなんですか?」
「うん」
そんな話をしているうちに車は店の前についた。あちらこちらで見かけるチェーン店の居酒屋だ。
「総司、先に降りて迎えに行って。僕は車を停められる場所を探してくるよ。さすがにこの狭い道で駐車してたら邪魔になるから」
総司が頷いて降りる。僕はぐるりと回して、適当な駐車場を見つけるとそこに車を停めた。




