第3章 七歳にして男女席を…同席?!(2)
なんとか礼拝をこなし、イースターの打ち合わせも無事に終えて、皆が帰った後で和泉さん家族をうちに招いた。
皆をソファに座らせて、僕はリビングから椅子を持ってきて座った。ついでに机の上にはジュースとお菓子を出しておく。和泉さんのお嬢さんが嬉しそうにジュースを手にとった。
「ご無沙汰しています」
善右衛門さんが、彩乃に挨拶した。本当は先週も会っているはずで…でも何かを察してそう挨拶してくれた。そして彩乃もペコリと二人に挨拶をする。その後、善右衛門さんが総司を前にして首をかしげた。
「どこかでお会いしてます…か?」
総司も首をかしげる。
「えっと…どこかでお見かけした気がしますけど…気のせいだと思います。こちらでの知り合いは少ないので…」
思わず僕は吹き出した。
「善右衛門さ…えっと海さん、こっちは沖田総司。新撰組の組長さんの一人だよ」
「は?」
善右衛門さん…えっと、海さんが目を見開いた。あっさりと正体をばらした僕に、総司が焦りまくる。
「俊!」
僕は総司を手で制してから、海さんと小夜さんに告げた。
「総司は僕の眷属になったんだ」
二人が納得したように頷いた。今度は総司が首をかしげる番だ。
「じゃあ、お会いしたことありますね。私は150年前、泉屋という両替商をやっておりまして、泉屋善右衛門と名乗って俊哉さんにはご贔屓にしていただいておりました。何度か屯所にもお邪魔したことがあります」
総司がポンと手を叩いた後で、「えっ」と声を発してから、善右衛門さんをまじまじと見た。
「それじゃあ…」
「はい。私も一族です。俊哉さんとは違う家系ですが」
「そして小夜さんも僕の眷属の一人」
総司がまたしても目を見開いて、小夜さんを見る。
「私以外にもいたんですね。眷族」
僕は肩をすくめた。
「総司の予想を裏切って悪いけど、実は結構多いんだよ。僕の眷属」
「そうなんですか…」
なんとも言いがたい複雑な表情で総司が僕を見る。
「僕が自分の意思で増やしているわけじゃないよ。代々一族の眷属は当主が引き継ぐことが多いんだよ」
「え? 当主?」
あ~。総司にはそこから説明しないといけないのか。
僕は軽く父親の話と、父親が亡くなって当主を引き継いで、ついでに眷属も引き継いだ話をした。
そして海さんと小夜さんに向けて、過去の父親が開けた穴に落ちて幕末に行ってしまったこと。そのときに皆に会ったこと。その後にもう一度開けた穴で、総司も連れて戻ってきたことを話した。
「小夜さんのことはずっと気にしていた」
僕がそう言って見つめれば、小夜さんはうっすらと頬を染めて俯いた。
「火が回る京の街においてきてしまったしね。善右衛門さん…海さんが一緒だったから何とかしてくれるとは思っていたけど」
そう言うと海さんが、小夜さんの肩を抱いて、誇らしげに応える。
「当たり前です。小夜は私がしっかりと守ってきましたよ」
その言葉に顔を上げて海さんを見る小夜さんは、とっても幸せそうだった。うん。多分、これで良かったんだと思う。
和泉さん家族と夕食も共にして、この日はゆっくりと旧交を温めることができた。




