第2章 現代探訪(8)
僕がよく行くブランドの売り場を目指して、手っ取り早く店員を一人捕まえる。
「悪いけど彼に似合いそうな服、上から下まで。コーディネートしてくれる?」
そういって、総司をぐっと前に出す。
「えっと、ご希望はありますか? どんな感じ…とか」
店員は一瞬驚いたみたいだけど、でもすぐに対応してくれた。僕はちらりと総司を見る。きっとあまり派手じゃないほうがいいだろうな。
「落ち着いた雰囲気で。色味も渋いほうが好み。今着ているぐらいのカジュアルさで」
店員は頷くと、店の中に入って洋服を見繕い始めた。
この方法、たまに僕自身にも使うんだけど、早いんだよね。店の好みが合えば、店員のほうが品物をよく知ってるし。
「こんな感じでどうでしょう」
総司の身体に洋服をあてる。総司はマネキンのように固まっていた。
「あ、いいんじゃないかな。こんな雰囲気で、いくつか見繕ってくれる?」
代わりに僕がそう伝えれば、店員はまた店内を物色し始める。
「お兄ちゃんの買い物、楽しくない…」
彩乃が文句を言った。
「いいんだよ。早いんだから」
「え~。自分で選ぶのが楽しいのに…」
「じゃあ、彩乃は彩乃で総司に選びなよ。何着でも買ってあげるから」
彩乃の目が光る。
「え? じゃあ、わたしのも買ってもらっていい?」
はぁ。そうくるか。
「まあ、いいや。あんなことの後だし。いいよ。買ってあげる。まずは総司ね」
「うん!」
彩乃が店内に飛び出していく。店員が見ているのとは雰囲気の違う、少し明るめの色味のものを選んでいるようだ。
「俊」
「何?」
こっそりと総司が僕にささやく。
「ここ、全部新品じゃないですか?」
「そうだけど?」
「いいですよ。古着で」
僕は一瞬目を丸くして、それから納得した。そういえばそうだ。京では古着ばかり着ていたっけ。
「この現代では古着はあまりない」
「はい?」
「基本、全部新品。古着をおしゃれとして好んで着る場合もあるけどね」
「そうなんですか?」
「そう」
「では古着は、どこにあるんです?」
「ん~。基本、捨てる」
「えっ?」
「着古したら、そのまま処分するんだよ」
「そんな…。もったいないです」
総司はあまり納得していないみたいだけれど、仕方ない。そのうちに分かるだろう。




