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第1章  帰還(1)

 どさどさどさ…と大きな音をさせて、僕らは暗闇の中にまとまって落ちた。


 総司が一番下でコケたもんだから、僕と彩乃も彼につっかかるようにして、転んでしまって、結果として三人まとまって潰れた感じだ。


「痛…」


「ぐぇ」


「あ…」


 ぐぇって言って潰されたのは総司。僕は総司につっかかって、顔から土にダイブした。痛い…。しかも泥だらけだよ。彩乃は総司の上に乗っかっていた。


「ご、ごめんなさい!」


 慌てて彩乃が総司から降りる。


 とりあえず周りを見回すと、そこは良く知っている僕らの教会の裏庭だった。なんかちょっと肌寒い。


「帰ってきた…のかな?」


 立ち上がって、教会の裏口のドアに手をかけると鍵がかかっている。ちょっと飛び上がって、人間なら手が届かない場所にある壁のへこみに手を入れれば、鍵があった。


 ドアを開けているうちに、彩乃と総司も追いつく。


「さて。今日はいつなんだろうね」


 そう言いながら、鍵をあける。そしてパチリと電気をつけたとたんに、


「うぉっ!」


 総司が飛び上がった。


 いや、何、総司。その悲鳴。


「なんでこんなに明るいんですか!」


 総司が目をしばしばさせた。


 あ、そうか。一族になったから、暗闇が見えるだよね。そして電気って知らないか。


 パチっと消すと、総司がふぅっと息を吐く。


「今のは何ですか」


 そう訊いてくるから、思わずまた点けた。


「うわっ」


 あ、面白い。


 また消す。


 ふぅっとため息。


 パチっともう一度点けたところで、彩乃から叩かれた。


「お兄ちゃん! 総司さんで遊ばないで」


「あはは」


 笑ってごまかしたけど、彩乃が睨んでくる。


「総司さん、これ、電気。明るいの」


 いや、それ、説明じゃない…。


 総司がまじまじと教会の廊下の明かりを見る。普通の電気で、そんなに明るいやつじゃないんだけどね。


「すごいですね。昼間みたいです」


「うん。ここをパチってするんですよ」


 凄いな、感覚的な彩乃の説明。でも総司は感心して、スイッチを見る。


「ここですか?」


「うん。そう。パチッってして」


 総司が押して、灯りが消える。そしてもう一回押して、灯りが点く。


「凄いですね」


「でしょ?」


 いや、彩乃。君が作ったわけじゃないから。その自慢げな態度、止めなさい。


 でも心の声は口に出さずに、僕は違うことを言った。


「二人とも、とりあえず今日の日付を確認しないと」


「あっ」


 彩乃が気付いたようだ。


「学校…」


 僕はひょいっと肩をすくめる。


「そう。彩乃の入学式が終わっちゃってると悲しいからね。とりあえず…テレビかな。一番確実でしょ」


 そう言って、僕は二人を連れてリビングに行く。総司は廊下を歩きながら、大きなガラス窓をまじまじと見ていた。廊下と庭の間にある大きめの透明なガラスだ。


「なんですか? これ」


「ガラスです」


 彩乃が短く答える。答えはそうなんだけど、総司への回答になってないよね。


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