第25章 好きという気持ち(5)
「それでどうするんです?」
目を合わせないようにしたまま、総司が僕に尋ねる。
「君が何も言わないなら…僕は今まで通りだ」
僕の答えに総司は不満げに鼻に皺を寄せた。その顔に僕は言葉を返す。
「っていうか、僕っていうより、問題は君じゃないの?」
「私ですか?」
「そう。僕とこのまま友達付き合いできるの?」
うっと総司が詰まる。
そして僕を頭から足先まで見て、息を吐いた。まじまじと僕を観察している。目はあわせてくれないけど。
「正体を知られても…俊は変わりませんねぇ」
彼の視線のことは気にしないようにしながら、僕はひょいっと肩をすくめた。
「僕は僕だしね。変わりようがないよ」
総司があからさまにつぃっと視線を逸らす。
「彩乃さんもですか?」
「そうだね。彩乃も彩乃だから」
「リリアさん…でしたっけ」
あ~。リリアの話もしたんだ。
「夜だけ現れる。夜中から朝方だけね。でも昼間は彩乃だよ。彩乃も彩乃のままだよ」
「頭が混乱しそうです」
「うん…そうだろうね。ゆっくり考えればいいよ」
そう伝えれば、ようやく総司は僕の目をまっすぐ見た。
「総司」
「はい?」
僕は力を使った。総司の身体がゆらりと揺れる。
「僕ら秘密は漏らさないで。それから君が知った未来のことも」
「はい」
そしてパンと手を総司の前で叩いた。
「あ、あれ? 俊?」
総司はきょろきょろと見回してから、そして自分の頭に手をやった。
「何をしました? えっと…忘れてはいないみたいです…っていうか、あれ?」
僕は寂しげに笑った。
「君が聞いた話は本当。ここで僕とも話しているのも夢じゃない。僕はちょっと…君に口封じをしただけ」
「口封じ?」
「そう。君が僕らの秘密と未来の話をついうっかり漏らさないようにね」
総司が眉をひそめる。
「誰にも漏らしませんよ」
「わかってるよ。でも酒に酔ったり、眠っていたり…自分ではどうしようもない部分もあるからね。悪いけど予防策を取らせてもらった」
むむむ…と唸りながら、でも言い返せずに総司は黙り込んだ。




