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間章  手つなぎ鬼(1)

-------- 総司視点 ---------


 俊は何やら近藤さんから頼まれた仕事をしているとのことで、このところ昼間は留守をしている。だが夜には帰ってきていると彩乃さんから聞いていた。幹部と呼ばれていても、何もかもを知っているわけではない。近藤さんや土方さんの指示で、隊士が個々に動くことも多いのが、この新撰組だ。


 影絵のように長い髪を結い上げた横顔が障子に映る。障子の向こうから彩乃さんが声をかけてきた。


「総司さん? 壬生寺にいきますか?」


 思わず笑みがこぼれる。裏切りも世の世知辛さも知らないような瞳で、私を見る子供たちとの時間は楽しい。その中に彩乃さんがいれば、さらに楽しく感じる。


「行きましょう」


 言葉と共に、障子を開く。ただし自分が出ることが可能な程度に細く。部屋の中を見られてはいけない。年末にあれだけ掃除したにもかかわらず、なぜか部屋の中は様々なものが溢れている。


 正直、どこをどうやったら綺麗に片付くのか、想像が付かない。捨てればいいと言われるが、捨てるものは無い。元あった場所に戻せとも言うが、それでは使い勝手が悪い。結局、使い勝手が良い場所においていくうちに、部屋の中が雑多になっていく。困ったものだ。


「総司さん?」


 難しい顔をして考え込んだ私の顔を、彩乃さんが覗き込んでくる。私は意識して笑顔を作った。


「いえ、何でもありません。少しばかり考え事をしていました」


「難しいことを考えていたんですか? すごくここにしわが寄ってました」


 彩乃さんが、自分の眉間を叩いた。


「そうですね。難しいといえば、難しいことでしょうか」


 まあ、私にとって…だが。


 壬生寺に行けば、いつもの子供たちが遊んでいた。私たちの姿を見たとたんに集まってくる。


「総司兄ちゃん、鬼ごっこしよう」

「かくれんぼがいいよ」

「かごめかごめ」


 口々に言う子供たちに、彩乃さんが考え込むようにして首をかしげた。


「今日は人数が多いから、手つなぎ鬼をする?」


 とたんに子供たちが目を輝かせて、遊び方の説明を求めた。彩乃さんは何故か子供の遊びをよく知っている。


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