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第14章  年末狂想曲(1)

 師走の二十六日。とにかく屯所中、大掃除というので、買出しの手伝いを理由に僕と彩乃は逃げ出してきた。


 彩乃が仲良くしている通いの女中さんから仕事をもらったんだけどね。


 いやいや。雑巾がけとかはいいけどさ。大部屋の掃除を手伝えとか言われたら、何が出てくるか。考えるだけでも恐ろしい。


 なので、とりあえず退避。


 油に醤油、味噌に塩。男手が出てきたとばかりに、今買う必要あるの? っていうものまで頼まれたけど、僕ら二人だからね。このぐらいなら平気だし。


 お店の地図も書いてもらって、値段もこのぐらいって教えてもらったから、後は行って帰ってくるだけだ。


「宮月様」


 にぎやかな通りで、女性に声を掛けられた。


 っていうか、「様」?


 僕を「様」付けで呼ぶ人なんて誰だって思ったら、彩乃と同じぐらいの女性で…。


「えっと…」


「小夜です。善右衛門の娘の」


 あ、小夜さんね。顔見たのは数回だから、覚えてなかったよ。


「お出かけですか?」


「あ、年末の買出しです」


 僕の横で、彩乃もペコリと挨拶する。


 小夜さんの後ろにはお店の人と思われる男の人がついていた。いいところのお嬢さんって感じだ。


「お互い、忙しいですね」


 そう小夜さんは言うと、綺麗にお辞儀をして、しゃなりしゃなりという擬音が合う風情で離れていった。


「和装美人って感じだなぁ」


 そう僕が呟くと、彩乃が僕の顔を覗きこんでくる。


「お兄ちゃんのタイプ?」


「いや」


 僕が首を振ると、彩乃は小首をかしげた。


「お兄ちゃんって、どんな人が好きなの?」


 その質問に僕は思わず往来の真ん中で考え込む。


「その質問は難しいなぁ。うーん。まあ、胸があって、腰がきゅっとしている人」


 大体、僕の正体を知って、それでも大丈夫な女性とか…結構、神経が太くないといけないし。でもがさつな人は嫌だし。


「何それ」


 彩乃が呆れたように言う。無難な答えを返しただけなんだけどね。


「男の人って、どんな人が好きなのかな」


 僕は思わず力が抜けかけた。


「彩乃…いろんな人がいるんだから、好みなんてそれぞれだよ」


「そうなの?」


「そうなの」


 彩乃の考えなんて手に取るようにわかるよ。まったく。


 大丈夫。総司はとりあえず昼間の君は好きだから。夜の君は…とか、じゃあ吸血鬼だったら…とか、色々解決すべき問題は山積みだけど。努力してどうなるものでもない。


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