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第12章  選択(1)

 蒲団を縁側で干しながら、僕自身もなんとなく日の光を浴びていた。


 日光浴する吸血鬼。


 変なフレーズが頭の中に浮かぶ。




 霜月が終わると、師走(十二月)はすぐに訪れた。


 現代と違って、コンビにもないし、年末年始はお店が全部閉まる。だから年始の用意をしておかないと食事もできなくなってしまう。


 それから厄払いみたいな意味もあって、大掃除したり、古いものを捨てて、新しいものに替えたり。


 とにかく、街中が年末年始ということで忙しい。


 この時代に血液を取っておくっていってもねぇ。甕に入れるとか、竹筒に入れるとか、一瞬考えたんだけど、じゃあ、誰の血? って言われると難しい。


 ということで、一応、僕らも年末最後には計画的に献血キャンペーンをする必要があるなぁと、僕は日光の中でぼんやりと予定を立てた。



「俊。巡察の時間ですよ」


 総司が呼びに来る。もうそんな時間か。


 

 あれから結局、総司は泊まりに来ていない。なんとなく遠慮しているのかな。


 それから「彩乃が総司を抱きかかえた」って話は、なんかうまい具合にうやむやになっていた。どうやら壬生寺から出てくるときには、彩乃は総司を縦に抱えていたらしく、総司は歩いていたんだろうってことで、話は落ち着いていた。


 総司自身も意識が朦朧としていて覚えてなかったので、そのままにしてある。




 さて、巡察だ。


僕も用意をすると皆が隊列を組んでいる一番後ろに並んで歩き始めた。今日は隊士が少々足りなくて、左之が一緒に来ていた。総司の横で話をしながら歩いている。


 いつもの道、いつもの巡察。つーぅっと彩乃が歩調を遅くして、僕の隣に来た。


「お兄ちゃん」


「何?」


「十二月だよね?」


「うん。そうだね」


「今年もクリスマスプレゼントってもらえるの?」


 は?

 僕は問いを発しようとして、息を呑んだ。


 ああ、そうか。毎年、彩乃はクリスマスプレゼントを楽しみにしてたんだっけ。小さいころはぬいぐるみとか、ゲームとか。ある程度大きくなってからは、アクセサリーとか、バッグとか。


「何が欲しいの?」


「ん~。よくわかんない。本当は大学に持っていくバッグが欲しかったけど…」


 もう、使えないし、売ってないもんね。


 彩乃が寂しそうに呟いた。


「また、150年たったら、買ってあげるよ」


 彩乃が顔をあげる。


「ほんと?」


「本当」


 まあ、そのころになれば、彩乃自身が自分で買っちゃうんだろうけどね。


「じゃあ、彩乃が喜びそうなもの、なんか用意しておいてあげる」


「ほんと? わたしもお兄ちゃんのプレゼント、用意するね」


 彩乃が嬉しそうに言った。


「あと、総司さんにもプレゼントしたいな」


 ウキウキとした声で続ける彩乃。


 あ~、総司は喜ぶと思うけど、それはダメだな。


「彩乃、クリスマスは異国のお祝いだから、こっそりね。だから総司にはダメ」


 そう告げると、あっと、彩乃が口を押さえる。


「わかった。内緒ね。総司さんに内緒にしてもらっても…だめ?」


「う…ん。ダメだね」


「そう…。残念」


 彩乃が俯いてから、もう一度、何かを思い出したように顔をあげる。


「ケーキは…ないよね?」


「うーん。和菓子に蝋燭立てる? 僕はそれでもいいけど?」


「ヘンだよ」


 うん。でもケーキっぽいものをなんか作ってあげるのもいいかもしれない。


 和菓子屋さんに特注で頼むか…とか、僕は考えていた。


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