表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
127/639

第11章  冬といえば(4)

 彩乃に僕の蒲団を敷かせてから、水を汲んでこさせる。僕はそっと総司を蒲団に下ろして、とりあえずかけ蒲団をかける。


 総司はちっとも目を覚ます気配がない。呼吸が荒くて苦しそうだった。どうしてこんなになるまで放っておくかなぁ。


 彩乃が一度戻ってきたところで、今度は台所にお湯を取りに行かせた。手ぬぐいを出して、水に浸してから総司の額に置く。本当に凄い熱だ。


 現代だったら、何度ぐらいあるかとか、風邪かインフルエンザかとか、すぐ分かるのに、ここでは分かる術がない。



「あ、お兄ちゃん、お湯」


 彩乃が持ってきたお湯を受け取って、もう一度彩乃を台所にやって炭に火を貰いに行くように頼んだ。七輪用だ。それと、彩乃を追い出す意味もあって、炭にしっかりと火がつくまでは戻ってこないように言い渡す。これでしばらく稼げるはず。

 

 もう一枚手ぬぐいを出してから、総司の着ているものを全部脱がす。彩乃を追い出しのはこのためだ。とにかく身包み全部はいだ。脱がした着物は汗でぐっしょりとしていた。


そしてお湯に手ぬぐいを浸して、総司の身体を拭く。温かい手ぬぐいが熱いぐらいの温度に、凄い勢いで温まる。ついでに言うと、凄い勢いで汚れる。


 石鹸ないしね。風呂は数日に一回だしね。


 仕方ないなぁと思いながら、僕は自分の着替えを一式出した。多分総司の部屋で清潔なそれを探すよりは、僕のを貸したほうが早い。幸い新品のふんどしもこの前何本か用意したばかりだったし。とにかく全身着替えさせた。


 それから蒲団をしっかりとかけた。



「お兄ちゃん。炭貰ってきたから障子開けて?」


 障子をあけると、炭入れと、長い箸みたいのを持った彩乃が現れて、僕らの部屋の七輪に炭を入れる。これで少しは温かくなるはずだ。 


 総司の着替える前の着物…洗ったほうがいいよね。僕の頭にさっきみた総司の部屋の光景もよぎる。


 まだ昼過ぎだし、洗っても乾く…かな?


 

「彩乃。ここにいて、時々頭の手ぬぐい替えてあげて」


「うん」


 彩乃は息の荒い総司を見ながら、泣きそうな顔で頷いた。


「大丈夫だから。多分…ただの風邪だから」


「ホント?」


「うん…多分。とりあえず、ここにいて」


「うん」


 本当に風邪なのか、なんなのかは分からないけど、とりあえず彩乃を安心させたくて僕はそういって、総司の着物と、汚れたお湯が入った桶を持って、部屋を出た。


 総司の部屋にもう一度入り、おせっかいだとは思ったけど、溜まっていた洗濯物を引き取り、井戸に行って洗って干した。


 それから部屋から水筒代わりの竹筒を持ってきて、井戸水を入れる。


「彩乃、総司の意識が戻ったら、飲ませてね」


 また彩乃がこくんと首を振った。


「ちょっと薬を探してくるから」


「うん」


 薬屋さん…ってあるのか? そうや薬売りっていう仕事があるぐらいだし、結構薬って古い歴史があるはずだよねぇ?


 大体僕ら自身が薬屋や医者と無縁の生活をしているから、あまりそういうのに目をやっていなかった。


 一応、世話をすることは多かったから、応急処置とか、対処方法みたいなものは頭の中に入っているけど。どうしようかな。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ