表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/639

第1章  隊士になります(8)

 牙を立てるのは、別に首筋でも腕でも足でもいい。ジュースみたい飲めるんだったら、別に牙すらいらない。牙は天然のストローみたいなもんだ。相手の身体を抱きしめていると首筋になっちゃうんだけどね。


 若い女の子だったら、首筋っていう選択肢もありだが、おっさんの首筋には用はない。


 おっと。リリアを止めなくちゃ。


「リリア。飲みすぎ」


 ここで自重できないと殺しちゃう。生き血のために人間を襲うのは、そこが難しいところだ。誰だって好物を前に、途中で止めたくないでしょ? 


 止めるのがちょっと遅かったのか、少し貧血気味になってしまったかもしれないが、命に別状はないだろう。


 リリアは名残惜しげにペロリと唇を舌で舐めた。僕は男のほうの処置をした。傷口を消さないとね。僕の特殊な唾液をつけておく。なんか喉の奥のほうから、そういう液体が出るんだよ。唾液じゃないのかもしれないけど、似たようなもんでしょ。


とにかく「舐めておけば治る」。そういうこと。




 人を操ることができる。そして傷口を治せる。これは僕固有の能力だ。他にもあるけどそのうちに。


 

「それでどうするの?」

「うーん。とりあえず朝食のおかず探し?」

「はっ?」

「ほら、今晩みたいな食事していたらお腹空くし。せめて野草でもとってこようかと」

「まじで?」

「まじで」


 そう答えた瞬間に、耳を引っ張られて、耳元で大声を出された。


「ばっかじゃないの~!!」


 リリアだというと思ったよ。

 でもさぁ、なんかかわいそうになっちゃったんだよね。あの食事。

 その後、名前をとどろかせる新撰組が、あの食事ってどうよ。


「でもさぁ。なんか採って帰っても、抜け出たってバレんじゃん」

「うっ」


 確かに…。


「俊にいってさぁ、時々馬鹿だよね」


 酷い。


「普段、頭いいのに」


 あ、それは認めてくれるんだ。


「伊達に252年生きてないって思うときと、馬鹿じゃん? って思うときの差がありすぎ。 まじで252歳?」


 リリア…。もうなんか僕は涙目になってるよ。


「あれ? でもさぁ。252歳だったら、今、このときに、俊にい、生きてんじゃないの?」


 それね。思ったんだよね。ここが江戸時代末期って知ったときに。

 もしこの時空間が、僕たちのいた現代とつながっているのであれば、僕はこの時代にすでに生まれていたはずだ。


「それがわかんないんだよね。僕はこの時代、ヨーロッパのほうにいたはずだけど」

「あ、そうなの?」

「うん」


 日本に来る前のことは、あまり彩乃に話していない。

 実際、二つの世界戦争と、いくつもの戦争を潜り抜けている僕としては、あんまり思い出したい経験じゃないしね。

 両親ともども、戦争に巻き込まれまくったからさ。


 とにかく。過去の自分が日本にいれば、自分に会いに行くっていう手段で、同時空なのか、パラレル時空なのか、確認が取れたかもしれないけど、この時代に、日本からじゃ無理だね。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ