王族たるもの。③
ドルムに、俺達白薔薇が王族を訪ね歩いてるって噂の出所を探ってもらうことにした。
代わりに、王様に奴隷制度のことを聞いてみるって約束する。
こっちも元々の仕事があるんで、確約は出来ないって言うしかなかったけどさ。
気持ちは、受け取ったから。
それから、夕方まで長々と食堂に居座って、作法や礼服についてを聞いておいた。
あんまりラナンクロストと変わらないみたいだ。
よかった…。
後はギルドに戻って王様との謁見の申し込みを頼めばいい、はず。
俺達はほろ酔いのまま、ギルドに戻った。
「いらっしゃいませ…あら、ドルムさん」
「よお」
「丁度良かった。奴隷狩りの新しい情報が入ってまして…」
「何?…わかった。聞かせてくれ。…それじゃあ、すまないな白薔薇。何かわかったらギルドに報告しておくよ」
「ああ、気を付けてな」
ばたばたといなくなるドルムを見送り、俺達は受付に向かう。
「到着早々、騒がしくなったわね」
「そうだねー。ティアとフェンは静かだったね」
「えっ、そうかな?」
「がう」
思い思いに話し出すのを眺めつつ、俺は周りを見ていた。
このギルド、王都にしては規模が小さいし、人も少ないのだ。
依頼も、他の王都に比べたら微々たるものだし。
奴隷制度が影響してる気がしなくもなかった。
「どうしたもんか、なぁ、ハルト」
グランに言われて、頷く。
「国を相手に出来るほど、さ、俺達、有名じゃないよな」
「……そうだな。今はまだ、な」
******
名誉勲章を見せると、ギルド員はギルド長がいないことを告げてきた。
何かの招集がかかったらしく、何処かへ出かけていったそうな。
1ヶ月は戻らないらしいので、そのギルド員に王様との謁見の手続きをお願いすることにする。
しかし。
「手続き出来ないってどういうことだ?」
グランが唸る。
対応してくれたギルド員は申し訳なさそうに頭を下げた。
「王への謁見申し込み権限があるのはギルド長だけなんです…」
「でも1ヶ月は帰ってこないんだろう?」
「はい……」
「他に方法はねぇのか?」
「謁見申し込みは国民であれば誰でも出来るのですが…、ギルドや貴族でない限り、その、正直、繋いでもらえることはほぼ有り得ないかと…」
「ギルドからの使者でも駄目なのかしら?」
「その場合、ギルド長を通すことになります」
俺達は顔を見合わせた。
「おいおい……まさかの足止めかよ」
「1ヶ月は長いよねー」
「がうぅ…」
考え込んでいたディティアがぽつんとこぼす。
「もしかして、魔力結晶回収の件で呼び出されたのかな…?」
…………。
そうだったら、完全に自分達の首を絞めたことになるぞ。
「誰か貴族でも紹介してもらえないのかな」
思わずため息をこぼすと、ファルーアがぽんと手を打った。
「あら……もしかしてサーシャの家柄は貴族じゃないかしら?」
******
宿の手配を済ませた頃には日は暮れてたんで、サーシャの家に行くのは明日にした。
ギルド員に馬車の手形を見せると、確かに有力な貴族だと言って、場所を教えてくれたんだ。
これは、ラッキーかもしれない。
ツンツンした性格で、暗めの赤髪の少女を思い出す。
ストレートの背中ほどの長さの髪にちょっとつり目のぱっちりした猫目と、髪色に似たドレス。
冒険者としてはおかしな格好だったけど、なるほど、貴族と言われればしっくりくる。
サーシャは偉い家柄、なんて言い方をしていたけど。
「うまくいくといいね」
ディティアに言われて頷く。
「大丈夫だよな、きっと。……実はちょっと忘れてたんだけどさ、魔力結晶のことですっごい情報持ってるんだよな、俺達」
「うん、そうなんだよね」
「…この先、どうなるんだろうな」
俺は、窓から見える星空に少しだけ思いを馳せるのだった。
******
「この先を左だったかなー」
ボーザックが鼻歌交じりに先導する。
俺達は露店の立ち並ぶ道を、サーシャの家に向かって歩いていた。
露店では果物や鉄器、宝石達が売られている。
ハイルデン王都では露店で商売するスタイルなんだな。
きょろきょろしながら歩いていた時だった。
どんっ
「……ッと」
誰かにぶつかった。
茶色いローブの、たぶん男。
お世辞にも上等とは言えない服装だったけど、冒険者ってわけじゃなさそうだ。
瞬時に、奴隷なのか?と思い当たった。
「ごめんな。怪我は……」
言いかけて、気付く。
ぶつかった拍子に、相手が果物を取り落としてしまっていた。
俺は慌ててそれを拾い上げ、差し出して言葉を続ける。
「……これ、大丈夫かな。弁償しようか?」
すると、ローブの間から青い目が覗いた。
「すまない。大丈夫だ…」
囁くような声。
「そうか?ならいいんだけど」
「…………」
たぶん男であろうローブの人は、俺から果物を奪うようにして、すぐに人混みに消えていく。
「……なんだあれ」
俺は少しだけ違和感を感じた。
男の肌は白く、ふっくら艶々していた気がして。
悪い扱いは受けてないんだと思うけど、やっぱり奴隷も格差があるんだろうか。
「大丈夫?ハルト君」
「あ、大丈夫」
少しだけ気になって振り返ってみたけど、ローブの男は既に見当たらなくなっていた。
……そして。
「でかいな」
サーシャの家に着いた。
グランが髭をさすり、どどんと構える門に近付く。
馬車の手形の裏面に彫られた家紋みたいなものが、門と一致した。
門の向こうには庭園があり、その先に屋敷が構えているのがわかる。
まあ、シュヴァリエんとこに比べればかわいいものだけど…俺の実家からすれば相当なもんである。
そんなわけで、しばらく門の前にいてはみたんだけど…。
待てど暮らせど、誰か来る気配も無く。
「入るぞー」
グランは、仕方ないとばかりに声をあげて、門を押した。
……ぎぎぃ、と音が鳴り門は、簡単に開いてしまう。
「…開いちゃったよ?」
呟くボーザックに、グランが渋い顔をする。
「こんなの…どうしようもねぇだろ」
俺達は、そろそろと敷地内に入ったのだった。
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21時を目安にしていたのですが、
中々うまくいかず。
申し訳ないです。
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