8-3 始発
エリックが銀遊士協会の窓口センターから出てくると皆が待っていた。
ミリィとカルロス、グレイシャ。そして、真っ黒なコートを羽織ったままのアークがこちらを見ている。
「エリック、お疲れ様!」
ミリィが花が咲いたような笑顔で駆け寄ってきた。
「ヒオ、連れて歩いて良いって?」
ミリィの質問に頷く。
ヒオも肩の上で跳ねまわっている。
「よろしくって言ってるみたい」
楽し気に笑うミリィの笑顔に癒される。
「何、見惚れちゃってるのさ?」
いつの間にか背後に近づいてきていたカルロスが耳元で囁いた。
鳥肌がたった。
「見惚れて!? いや、そんな別に!」
「いいの~? そんなこと言って」
カルロスが怪しげな笑みを浮かべる。
「病院で泣いてたくせに」
「~~~っ! 何で知ってっ!?」
言葉が詰まる。
カルロスの笑みが深くなった。あ、しまった、と思ってももう遅い。
「へ~、やっぱ泣いちゃったんですね~。分かります~って、痛い痛い!」
カルロスが耳を抑えのたうち回った。
彼の耳をあらんかぎりの力で引っ張っている笑顔のグレイシャだ。
「後輩たちにちょっかい出さないでくれるかしら?」
笑顔が怖い。
「準備できたか?」
次の任務があるのだろう、アークが呆れた顔で尋ねてくる。
「あ、はい! できました!」
エリックはそう言って、ヒオの頭を軽く撫でた。
「じゃあ、早くいらっしゃいよ」
グレイシャが寂しそうに笑いながら、手招きをした。
「エリック! 早く早く!」
ミリィが手を差し伸べてくれる。
エリックはその手を掴み返した。
それから、エリックはカルロスを振り返った。
カルロスは緑色の桜並木の下で手を振っている。
「ほんと、アークさんの手を焼かせないでよね~。俺はここまでだから」
カルロスはどうやら、別の任務に就くらしい。そこでも、自分の身分を隠すらしく、銀の呼子笛はどこぞへと隠されている。
わざわざ見送りに来てくれたのだろう、と思うとエリックはちょっと嬉しかった。
「それじゃあね、《死神》に《閃光》」
カルロスが手を振った。
「うん、またどこかでね、《旋風》」
エリックはカルロスに手を振り返した。
歩き始めたエリックの胸には銀の呼子笛が揺れていた。
初めまして、もしくはお久しぶりです、若葉美咲と申します。
この物語を完結に持っていけたこと、本当に安堵しております。
続編を作るつもりで動いておりますが、仕事が忙しくて、更新はもっと後になるかな、と思ったり。
後半は毎日更新が出来てよかったな、と思っているので、その熱が冷めないうちに次を出せたら、と思っております。
いかがだったでしょうか、エリックの冒険譚(?)は。
楽しんでいただければ幸いです。
最後になりましたが、ここまで読んで下さった皆さまに精一杯の感謝と幸せを。
若葉 美咲




