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【マルチエンド】追放勇者は孤独の道を征く  作者: 空夜キイチ
第二部:白麗の変革者 第九章
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それぞれの役目


 食事を終えてラーセに挨拶をした後、宿に戻ると満腹になったからか。ヨエルはすぐに眠ってしまった。


 それを起こさないように声を潜めて、マモンとアルマに今後の予定を語る。

 テーブルに地図を広げるとフィノは地図の左側を指差した。


「関所は手形がないと通れないから……ここの森を抜けていく」

『迷いの森か、そこならば覚えがある』


 あの場所はスタール雨林と比べてもそんなに険しい場所ではない。一日野営して、次の日には抜けられるはず。問題はその後だ。


「それで……王国についたら、まずは情報集め」


 ルトナーク王国がいまどんな状態にあるのか。フィノはしらない。虚ろの穴の場所はマモンに聞けば解決する。しかしそこに辿り着くまでに何か妨害がある可能性だってあるのだ。


 今まで順調に四災に会えていたのは、大穴のある祠がほとんど手付かずの状態だったから。そこが危険な場所という認識があって、人々が恐れていたからである。

 けれど、今回もそう上手く行くとは限らない。


『十五年以上も前の話になるが……王国にある虚ろの穴は国でしっかりと管理されている。おそらく今までとは勝手が違うだろうな』

「近づけないかもしれないってこと?」

『うむ……あの国は女神信仰も盛んだという。一筋縄ではいかんかもしれんなあ』


 マモンの話では、女神の教えというものはあの大穴を忌まわしきものとして扱っているらしい。

 そんな場所に一般人を近付かせるわけがない。魔王ならば可能かもしれないが……どうみてもすんなりと通してくれなさそうだ。


「んぅ……」

『最悪、己が出張って交渉するという案もある。まあ、杞憂であればそれに越したことはない』


 魔王である事を生かして、マモンだけ大穴の底に行くという案もあるのだ。しかしそうなるとヨエルも一緒に行かなければならない。それはどうあっても許容出来ない。

 それに機人(マグナ)の四災は、無人の四災との交渉を有利に進めるためにアルマを同行させてくれた。

 もちろんそれ以外の目的もあるが……この時点で、魔王のみが大穴の底に行くという前提が崩れる。


「アルマは彼との交渉には参加しない。あくまで彼に望みを叶えて貰うのは君たちの役割だ。代わりに、道中の安全は保障する」


 そこは安心して欲しいとアルマは言った。

 彼が傍にいてくれるだけで、無人の四災の抑止力にはなるだろう。四災との交渉前に死んでしまっては元も子もない。


『問題は無人の四災とやらがどう出るかだ。あやつの目的もはっきりしておらんし、女神についても同様。まずはそこをできる限り調べあげなければ』

「王様とか、教会の司祭に聞けばわかるかな?」

『可能性はあるだろうなあ』


 マモンの意見にフィノも賛同した。

 これまで集めた情報で謎は解けてはきた。けれど肝心な部分が未だ不明瞭。可能ならばそれを解いてから四災に見えるのが一番だ。


「明日の朝にここを発って、二日掛けてヘルネに行く。そこから迷いの森を抜ける。これでいこう」


 フィノの決定に二人は頷く。


 デンベルクとの戦争はアリアンネに任せてフィノは自分のすべきことに集中する。それがアリアンネとの約束だ。

 とはいえデンベルクとの停戦もすんなりと事が運ぶとは思えない。そもそもがあちらから仕掛けてきた戦争だ。そこには様々な思惑が絡んでいるだろうが、少なくとも帝国への私怨も混じっているとアリアンネは断言していた。


 そうなると当然、アリアンネからの停戦協定を受け入れるということは、デンベルクにとっては面白くはないだろう。

 彼女もそこを懸念していた。けれどデンベルクの国力は削れる一方。ここいらで戦争をやめたいとは思っているはず。そこを上手く誘導できれば停戦も夢じゃない。


 これに関してフィノは少しも心配していない。なんせあのアリアンネだ。広大で強大な帝国を纏め上げる皇帝。その地位に胡座をかいている名ばかりの権力者でないことは、充分に理解している。

 何よりも世界の平和をアリアンネは誰よりも望んでいるのだ。それだけで彼女は信用に足る人物だとフィノは思っている。


 だからこそ、フィノはこうして自分の役目を(まっと)う出来るのだ。



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