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【マルチエンド】追放勇者は孤独の道を征く  作者: 空夜キイチ
第二部:白麗の変革者 第八章
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足跡を追え

 

 窓から飛び降りたマモンは黒犬になると、急いで二人を追いかける。

 しかし既に路地を抜けた後で、そこから大通りに出たであろう男の姿はどこにも無かった。朝の時間帯で人通りが多い大通りといえど道行く人はまばらだ。おそらく目撃証言もないだろう。


 マモンはこうして犬の姿を取っているが、嗅覚が優れているわけではない。魔王としての特性で匂いを感じない為、形だけである。だから匂いを辿る、なんて芸当も出来ない。


 打つ手なしと思われたが、そこでマモンは頭をフル回転させる。

 あの男の言動から、何かしらのヒントが得られるかもしれないと考えたのだ。


『ヨエルを攫っていったということは、この街に留まる必要は無い。おそらく、すぐにでも街から出て行くはずだ……となれば、街の出口に向かっているはず』


 男は明言しなかったが、おそらくデンベルクの密偵であるのだろう。だとしたらこれから向かう場所は自国になる。国境を越えて行くとなると、まずは街の西門へと向かっているはず。

 瞬時に答えを導き出したマモンは、西門へと向かう。


 けれど、魔王であるマモンならば自らの能力を使えばヨエルの元へはすぐに戻れる。こうして追いかける必要などないのだ。

 しかし、今の状況でこれをやるにはデメリットが多い。


 追跡となると、相手の足跡を把握していなければならないのだ。ヨエルの元に戻っても、その場所がどこで、今どこに向かっているかは瞬時に知ることは出来ない。

 それにマモンが実体化していない間は、その器となっている者と視覚を共有している。だからもし、ヨエルが拘束されて自由の利かない状態ならば、ここでマモンが戻ってしまうのは悪手であると考えたのだ。


 それに結局、ヨエルを運良く男の手から救ったとしても、再びマモンが対峙して倒せる保障はどこにも無い。


 だからこそ、一度冷静になることが大事だ。

 今は男がどこに向かっているのか。それを突き止めることを優先する。ヨエルの事はもちろん心配だが、男にとってヨエルは大事な人質でもある。無闇に傷つけたりはしないはず。


 足取りが掴めたのなら、マモンが第一にすべきことはフィノを探すこと。

 しかし、フィノがスタール雨林へと出立してから一時間は経とうとしている。おそらく既に街には居ないはずだ。

 あくまでこれは代案、少し探して見つからなかったらマモンはヨエルの元へと戻り、男の隙を窺う。

 奴はヨエルを奪取できて安堵しているはず。緊張感が欠けて、隙も生まれやすいだろう。


 まともに戦えないマモンには、もはやそれしか出来る事はないのだ。




 ===




 マモンが西門まで向かうと、何やら街の入り口が騒がしい。

 喧騒に耳を澄ませると、馬車を引く馬を停めてある厩舎から、馬が盗まれたのだという。


『……っ、流石に手際が良いか』


 おそらく、男はここから馬を盗んで既に去って行った後なのだろう。状況からマモンはそう判断した。

 国境越えをするにしても、暴れる子供を抱えて走ってはいけないし妥当な判断だ。

 そしてマモンが駆けて追いかけても既に追いつけないくらいには距離を取られている。


『となれば、フィノを探すべきだが……』


 彼女が今どこにいるか、マモンは把握していない。

 街の中にまだいてくれたら良いが……もし既に街を出てスタール雨林へと向かっていたのなら協力は望めない。


 どうするのが正解か、迷っているとそんなマモンの背後から聞き慣れた声が聞こえてきた。


「――マモン!」


 呼び声に振り返ると、そこにはフィノが居た。

 よほど急いで走ってきたのだろう。息を切らしてマモンの元まで辿り着いた彼女は、開口一番、ここに居ない少年の安否をマモンへと問う。


「ヨエルは!?」

『それが――』


 マモンは先ほどの出来事を掻い摘まんで説明をする。

 大人しくそれを聞いていたフィノは、悔しげに唇を噛んで頷く。どうやらマモンが説明しなくともある程度事情は知っているらしい。


『どうしてこの場所がわかったのだ?』


 フィノがここに居ることは、偶然にしては出来すぎている。

 それを尋ねると、彼女は数分前の経緯を手短に語ってくれた。


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