予想外の出会い
彼女はハーフエルフだった。
それだけならば特に驚きもしない。ユルグが目を見張ったのは、彼女のハーフエルフとしての特徴。
――金髪に、瞳の色は琥珀色。
ユルグはこの目の色が好きだった。
朝陽のように暖かい色をしている。そう言うと、彼女は恥ずかしそうにはにかむのだ。
「お前は……」
「うぇ? な、なになになに?」
頬に両手を当てて、彼女の顔を凝視する。
……やっぱり、どう見ても似ている。というか、本当にそっくりだ。
でも、血縁者がいるとは本人から一度も聞いたことがない。
「家族はいるのか?」
「な、なんなんだよ! そんなこと聞く前に手を離せ!」
「ああ、ごめん」
ぱっと手を離すと、彼女はすぐさまユルグから距離を置いた。
いきなり凝視されたからか。微かに顔を赤くして、警戒の眼差しを向けている。
「んぅ、どうしたの?」
「俺の師匠に顔が似ているんだ。というか、あれは瓜二つだな」
「ユルグのおししょう?」
そう、彼女はユルグの師匠であるカルラとそっくりな容姿をしているのだ。
「も、もしかして……お兄さん、カルラのこと、知ってるの?」
「ああ、俺の師匠だ」
ユルグの返答を聞くと、彼女の顔が青ざめた。
きょろきょろと、如何にもな挙動不審な様子で周囲を見渡す。
「師匠って事はまさか、ここに来てる!?」
「いいや」
「……っ、はああ。良かったあ」
どうやら彼女はどうしても会いたくないようである。何があったのか分からないが、カルラからも身内がいるという話は聞いたことがなかった。
「カルラとは仲が悪いのか?」
「私のことほっぽってどっか行っちゃったからね。出て行く時に家族の縁は切ってる。あんな奴嫌いだよ。私たちみたいなのが何したって、なんにも変わんないのにさ」
拗ねた顔をして彼女――カルロは目元が見えないように外套のフードを被り直した。
「カルロって男みたいな名前だな」
「私は双子の片割れだから、先に生まれた方の性別でもう一人の名付けが決まっちゃうんだよ。だから女でもこんな名前になるってこと」
特に気にした素振りもなく、カルロは答える。
「それよりもお兄さん、お腹空いた。早くご飯食べに行こうよ」
「あ、ああ」
そう言って、カルロは自然な所作で違和感なくユルグの腕を取って組む。
いきなりの行動にたじたじになっていると、逆側の腕をフィノが掴んで引き寄せてきた。
「はあ? お前ら何なんだよ。離してくれ!」
「ずるい!」
「なにが!?」
なぜかフィノはふくれっ面で睨んでくる。
そんな睨まれるような事はしていないはずだが……そもそもこれは不可抗力である。
「一人で歩いてると絡まれるからさあ、しばらくこれでお願いね」
「いや、だからって……はあ」
ずるずると引きずられるユルグには、この状況では最早為す術は無い。
どうやら片足を突っ込んだ沼は思っていたよりも深かったみたいだ。
キリがいいので今回は少し短めです。(m_m)




