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少し残念なお嬢様の異世界英雄譚  作者: 雛山
第四章 魔王領再建準備編
58/116

第五十四話 vsオーガの代表

最新話更新しました

久々のバトルシーンです

 

 ワタクシたちは今、魔王城の訓練場に来ておりますわよ。

 昨日の約束通りにオーガの代表をぶっ飛ばすために来ておりますわ。


「マナカさん本当に大丈夫ですか? オーガはとても身体能力に優れた種族です、魔法等はそこまで得意ではありませんが強力な戦技を有する者もおります」

「戦技?」


 聞きなれない言葉ですわね、おそらく戦闘技術の略でしょうがこの世界の場合はワタクシの知ってる戦闘技術とはきっと違う意味ですわね


「はい、えっとですね魔法とは違う技術で。以前戦ったボーンミノタウロスの使った遠距離攻撃のようなモノですね」

「ああ、必殺技ですわね……そういえばワタクシ必殺技持っておりませんわねぇ、今度考えましょう」


 必殺技、盲点でしたわね……異世界に来たら剣と魔法なんて常識に囚われていた自分が情けないですわね。ワタクシには剣や槍の才能は無かったのですが幸い拳と言う武器がありましたからね、これを昇華させないなんてもったいない話ですわね。


「必殺技ですか?」

「ええ、マウナさん達が戦技と呼んでいるモノと同じようなものですわ」

「――必殺技! なんか良い響き、ワタシも欲しい」


 ナルリアちゃんも乗り気ですわね。


「ええ、皆さんで今度考えましょう」

「――わかった」


 そんな会話をしていると、カーチス率いるオーガ達がやって参りましたわね。全員ではないようですがそこそこの人数がおりますわね。

 オーガの女性も男性と同じくらいの身長ですわね平均で一八〇から一九〇くらいありますわね、しかも案外美人顔が多いですわね。

 オーガの女子プロレス団体作ってみたいですわね……うふふ、真面目に考えておきましょう。

 集団の後ろの方に一際大きなオーガがおりますわね、ぱっと見あの中で一番強そうですわね、身長は二二〇センチ程ですわね、彼がワタクシの相手かしら?


「ようやく来ましたわね、ワタクシ準備万端ですのよ。今か今かと待っていたところですわ」


 カーチスが前に出てワタクシの前に立ちますわ、おや? あの大きなオーガではありませんのね。


「それは悪い事をしたな」

「ところでワタクシの相手はあの大きなオーガですの?」

「いいや、俺が相手をする」

「あら? あの大きな方が一番強そうでしたのに」


 カーチスが少しイラっとした表情を見せましたわね、どうやら図星のようですわね。


「アンタの言う通りだ、悔しいが俺たちの中でアイツが一番強い、それは認めよう」

「あら? あっさり認めるのですね」

「ああ、俺たちは強さに嘘はつかない、認める場所は認めるさ。だがアイツはオーガにしては珍しく優しすぎてな闘いにはあまり向かないんだ」

「なるほど、分かりましたわ」

「しかし俺もそこまで劣ってるつもりは無いからな、甘く見ない方がいい」


 この世界のオーガは誇り高き種のようですわね、好感が持てますわ。そしてカーチスもあの大きなオーガほどではないにしてもかなりの使い手のようですわね。

 ワタクシ楽しくなってきましたわ。


「大丈夫ですわ、ワタクシも貴方を侮るつもりはありません。良き勝負を期待しますわね」


 ワタクシが拳を前に突き出すと、カーチスはそれを理解したのかワタクシの拳に自分の拳を合わせましたわ。理解していただけたのは嬉しいですわね。


「自分、マナカ殿が闘うのを見るのは初めてですが、大丈夫なのでしょうか?身長差が二十センチほどはありますが」

「ああ、中尉はマナカちゃんの戦闘は初めてなのねぇ。彼女凄く面白いのよ技の市場のように多彩な攻撃をするのよ」

「え、えぇ。マ、マナカさん凄く強いですよ」


 期待に応えちゃいますわよー、ちゃっかりオリジナル魔法の精度も上げておきましたしね。


「では、始めようか」


 カーチスがそう言って訓練場の中央に移動開始します、ワタクシもカーチスの後に付いて移動します。

 カーチスとワタクシが向き合うと、見届け人としてサティさんがワタクシ達の所に来ました。


「両名とも、我らが魔物の果し合いにルールはありません、ですが相手を戦闘不能にするか参ったで勝負終了とします、よろしいですね?」


 サティさんの言葉にワタクシとカーチスは了承の意を示します。


「では、良き勝負を! 始めてください!!」


 サティさんの言葉と共に勝負の開始ですわ!


 ――

 ――――


 カーチスは構える事もなく大ぶりな拳をワタクシ目掛けて打ち込んできますわ。そうでしたわねこの世界は素手の戦闘術と言うのがワタクシの世界に比べるとかなり遅れているのでしたわね。

 ワタクシはカーチスの拳を軽くスウェーで避けると挨拶代わりの左ジャブをカーチスの右脇腹に撃ち込みます。


「ぐっ、思ったほどの威力はないようだな」

「あら? 今呻きましたわよね?」

「フン!」


 カーチスは振りぬいた拳をバックブローの要領でワタクシの顔面目掛けて打ち込んできますわね。

 ただぶん回すだけの拳ですが身体能力の高さからもの凄いスピードですわね、当たったら泣けますわよコレ。

 バックブローをかがんで躱すと今度はカーチスのボディに右のボディブロー。


「はぁ、凄いですなマナカ殿、アレはメリケンの拳闘ですね」

「ボクシングって言ってたわね、でもねマナカちゃんの本質はボクシングじゃないのよねぇ」

「そうです、マナカさんは自分で『打つ、投げる、極める』どれでもいけるとおっしゃっていましたから」


 少しあの状態での打ち合いが続きますがしばらくすると、密着状態は不利と悟るとカーチスは後ろに飛び距離をとりましたわ。ワタクシとしてはあの距離の方が良いのですがね。


「ふむ、こうか?」


 カーチスはワタクシと同じようにボクシングの構えをとりましたわ。

 ぇー、戦闘中に相手が強くなるのとか勘弁ですわよ、それ普通は主人公の特権ですわよ。


「確かこうだったな」


 カーチスはそう言うとシャドウボクシングを始めます、あっれー割とさまになってますわね。


「ふむふむ、悪くない闘技だ。俺に合ってるかもしれんな」


 そう言うと構えたままワタクシの方に走ってきましたわ、そしてワンツー、速い!


 拳がワタクシの頬をかすめます、こっわー!


「ふむ? これは、なんと速い拳だ。お前たちの闘技には感心させられる。今までの俺の拳が当たらんわけだ、この拳で相手を追い詰めて大きな一発を叩きこむのがこの闘技の基本かな?」

「んー、六十点の答えですわね。しかしあれだけの打ち合いでよくそこまで理解できますわね、流石は戦闘種族と言ったところですわね」


 こりゃ、ボクシングスタイルだけでは勝てないかもしれませんわね……侮ってるつもりはありませんでしたが、どこかで侮っていたようですわね反省ですわ。

 ワタクシはそう思い直し投げも関節も解放しますわよ!!


 ワンツーの猛攻が続きますが流石に動きが単調ですわね、ワタクシはカーチスの脛にローキックを重ね動きを止めますとカーチスも単調になってた自分の動きを止め距離をとります。


「さて、ワタクシも全力で行かせてもらいますわよ!――ストンバレット!!」


 石つぶてがカーチス目掛けて飛んでいきますが身体を捻り躱されてしまいましたわ、ですがワタクシはそれを機に距離を詰めます!

 カーチスはワタクシを迎撃しようと拳を握りこみますが、ワタクシはカーチスの目の前で両掌を打ちますわ! パンと乾いた音が鳴り響きます。


「上手いですな、猫騙しですか」


 そう、ワタクシが行ったのは猫騙しですわ、カーチスは一瞬目を瞑ってしまいました。ワタクシはその隙を逃さず思いっきりボディに右の拳をめり込ませるとカーチスは呻き前かがみに成ります。


「頂きますわ!」

「しまった!」


 ワタクシはカーチスの頭を右脇に抱え込み、カーチスの右太ももの裏をを左手で抱えるようにし思いっきり体重を乗せ後ろに倒れながら飛び上がります。

 フィシャーマンズDDTと言う奴ですわよ! そしてオマケですわよ、卑怯と言うなら言いなさいな!


「――ストン・プトゥ!!」


 叩きつけるカーチスの頭の付近にストンプトゥで石を設置しますわ!


「マナカちゃんエグイ、エグすぎるわよ……」

「凄い、あんな魔法の使い方する人初めて見ます!」


 やった自分が言うのもなんですが、確かにコレはエグイですわね……

 カーチスの頭からゴッ!!と鈍い音がします、ワタクシはすかさず抱え込んだ頭を放さずに寝た状態でヘッドロックに移行します、ワタクシの上でカーチスが藻掻いておりますわね。

 あのワタクシのジャンピングフィッシャーマンズDDT喰らって藻掻けるとか何て体力ですのよ。


「グググ!!」

「ギブアップなさいな!!」


 カーチスは力任せに立ち上がると、強引にワタクシの腕を振りほどき肩に抱え直します……あ、これヤバイですわね。


「うおおおおお!!」


 カーチスは強引にワタクシを持ち上げ投げ飛ばします、地面に背中を打ち付けると一瞬息が詰まりましたわよ。


「今のは効いたぞ」

「いったーいですわ」


 ワタクシは体勢を立て直します、カーチスも再び構えをとりますわ。


 ――

 ――――


 かれこれもう十五分ほどはカーチスと殴り合っておりますが……ワタクシもそれなりにダメージを受けておりますわね、これ以上は流石に相手の方が有利となりますわね。


「足元フラついておりますわよ?」

「お前も似たようなもんだろうが?」

「まったく、こちらの方が有効打を当ててる回数は多いはずなのに、丈夫な事ですわね」

「お前の技のレパートリーの多さには本当に驚かされるよ」


 そろそろ終わりにさせていただきますわよ、大技の一発でもかませば相手は終わるでしょうね。

 両陣営の観客たちも固唾をのんで見守っておりますわね、では仕掛けると致しましょう……


 ちぃ! 先にカーチスが仕掛けてきましたわね、この短期間でかなりボクシングスタイルをモノにしておりますわね。


 基本のワンツー、その後にまたワンツー……じゃ、ありませんわね右のジャブの後は左はボディ狙いですのね! なんて足腰の強さですのあの状態から体勢を落としボディ狙いでジャブって!!

 反応が少し遅れてしまいましたわ、ボディ狙いのジャブをかろうじて躱しますがそこにもう一発のボディブローがワタクシの鳩尾部分にヒットしますわ。


「くっは! 中身出そうですわ……」

「フ――、終わりかな?」


 ですが堪えますわよ、ある意味チャンスですもの! ワタクシは耐えつつカーチスの右手を掴みますわ。


「な? しまった!!」


 そしてカーチスの腕を軸に、ワタクシは腕を掴んだままカーチスの横っ面に浴びせ蹴りを加えつつ、倒れこみカーチスの腕を腕ひしぎ十字固めの状態に持っていきます。


「グガ! ぐぎぎ、なんだこの技は?」

「さあ、降参なさいな腕が折れますわよ」

「うぬぬぬ」


 さあ、これで終わってくださいましよ。


「うまいですな! アレは完全に極まっておりますな」

「中尉はあの技知ってるのですか?」

「あれは腕ひしぎ十字固めと言う柔道の技であります、浴びせ蹴りからの流れがとても綺麗ですな」


 ワタクシはさらに力を籠めますと……


「こ……うさん……だ」


 カーチスがギブアップをしました。


「それまでとします!」


 サティさんの掛け声と共にワタクシは十字固めを解きますわ。


「くそ、負けたか!!」


 悔しそうにするカーチス、ワタクシは久々のバトルに満足ですわー


「いやー、楽しかったですわ。 まさかボクシングスタイルをあそこまで速い段階で使いこなすとは驚きですわよ」


 ワタクシなんかお肌がツヤツヤになった気がしますわよ。

 ただ、新魔法を試すチャンスが無かったのだけが残念でしたわね。

 こうしてこの勝負はワタクシの勝利で終わりましたわよ。



次回は8/16更新予定です

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