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恐怖探究  作者: 篠田堅
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瑕疵物件

投稿者:不動産会社勤務Wさん

 俺が務める仕事場での話なんだが、普通に良い場所を紹介すれば瑕疵物件を踏まえて紹介する場合もあるのがここT不動産でもある。

 別にテレビみたいなヤー公関係とは一切繋がっていないクリーンな仕事場である事はあらかじめ掲示しておくぞ。俺ん所みたいな古くから続く不動産では暗黙の了解として瑕疵物件をどうこうする順番を決めてある。

 これから話すのは俺が二年前に担った担当の瑕疵物件で起きた出来事だ。脚色なんてものは一切ないからな?


 俺はとあるマンションの物件へ事前調査として訪れていたんだ。

 色々とチェックをして良い所と悪い所の割合によって賃貸の値段を決める要因を集めるのがこの時の仕事だった。

 しかし、値段は普通よりも大幅に安くせざるを得ない物件だったから難解してしまったが……。

 先輩のSさんから担当を任された時、ここが瑕疵物件だという事を説明されていた。

 なんでも、一組の夫婦がいて生まれて間もない赤ん坊がいたそうなんだが、父親がその赤ん坊を何があったかは詳しく伝えられてないが、首を絞めて殺してしまったらしい。

 とまぁ……こういう殺人現場としての過去がある部屋がこの一室だ。

 怖い話じゃその類は幽霊が出やすいとか、不幸が訪れやすいといった言われが付いてしまうが、現実で直面しても仕事として割り切れてしまい、「ふーん、殺人があったのかぁ」なんて名所を見るような気分で仕事していたよ。

 俺は幽霊とか非科学的な事は信じなかったから、この部屋で殺人が起きたのはただ運が悪かったで片づけてしまった。逆に気にしなければ安くて済むし、箔が付きそうだ――と全然マイナス思考なんて持っていなかった。


 仕事場では瑕疵物件を調べる事としてお馴染みの『日本酒』を使った調査も一応行っているが、これまで本当に白く濁った事なんてない。

 若干濁ったとしても、蓋が仕舞ってなかったといった人為的理由がはっきりと分かっていたりする。


 だけど、ここだけは違ったんだ……。

 見事に半日以内にきっちり封をした新品が半透明に白く濁ったよ。

 試しに飲んだ事もある。かなり酸っぱかったもん。

 炭酸の抜けたビールって感じだった。


 この現象を直視した俺はというと、恐怖するより面白がってたな……。

 何か別にあるのか? ってチェック表にない事まで丹念に調べるようになってしまったんだ。

 前の住人が置いていた荷物は全て撤去されていたから部屋はすっからかんで調べる物が全然なかったが……。

 入念に調べた結果、見つかった訳よ―― 一通の封筒が。

 封はされずに半開きなままで何か入っていたから早速中身を取り出してみたんだ。

 んで、出てきたのは写真が数枚、


 赤ん坊の顔部分は切り取られ、父親と母親の顔はマジックペンで黒く塗りつぶされた家族写真だったよ。


 初めて見た時は本当に青ざめたね。なんかスーって冷たいのが背中を通る感覚が出たんだ。

 こんな写真に作り上げたのは二人の内、どっちか考えるだけでも恐ろしかった。

 直感で分かったよ。この写真に写っているのが例の殺人事件にあった家族なんだと。

 この一件で“見えざる物”という不思議な力は存在するんだなと認識させられたね。

 

 そして、俺は謝らなくてはいけない事が一つある。

 あの物件、物件として成立させちゃったんだよね……。

 多分、瑕疵物件の説明込みでありながらも借りた人がいるかもしれないんだ。

 今、地方に出張しているからホテルの中でこれ書いているんだけど、やばいと思うから何か情報をくれる人がいたらどこかの掲示版に書いて教えてくれ。

 まったく、難儀な職業だよな……不動産って……。

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