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恐怖探究  作者: 篠田堅
28/44

投稿者:Kさん

 友達のEから聞いた話だ。

 小学生の頃ではEは飼育委員を担っていた。

 学校の裏側では兎を飼うための飼育小屋があり、Eを含めた飼育委員達が当番制で世話を行っていた。

 低学年にとっては憩いの場ということもあってEの小学校では動物の世話は徹底的にやるような方針であり、誰もが世話を欠かさずにしていた。

 愛でられ育っていく動物達は誰もが大切にした。


 事件は起こった。

 朝早く登校してきた生徒達の集まりをEは押し退けて飼育小屋に向かってみると惨い光景がEを待ち構えていた。

 飼育小屋の中の兎が一羽死んでいたのだ。

 病気や寿命なんかではなく、“首をねじ切られて”死んでいた。


 この事は学校内で問題になり、すぐさま教師達による会議が開かれ、犯人探しが行われた。

 けど犯人は見つかる事はなかった。思い入れの強い人達同士が集まり、殺された兎の亡骸を丁寧に弔い、一時はまとまるかに見えた。

 その二週間後、再び兎の死体が一羽見つかった。

 今度は両耳を刃物で綺麗に切られた状態で冷たくなっていた。

 悲しい出来事が起きた、乗り切ろう……そう思ったとたんにこれだ。

 さすがに何人かの飼育委員は犯人に対して憤りを見せていたとEは言う。

 そんな雰囲気を納め、励ましてくれたのが飼育小屋の世話に好意的だった四年生担当のD先生だった。

 「犯人絶対捕まえてやるからな!」と意気込んでくれてもいて、皆期待するくらいだった。


 二度目ともなると、監視を強くし、誰もいない時間帯を当直の先生が見張るという体制が取られたが、来る日も来る日も待っても犯人は捕まる事はなかった。

 おまけにそんな監視体制を馬鹿にするかのように三度目の兎殺傷事件は起きてしまった。

 三度目の被害にあった兎はまたしても一羽、腹を縦に切り開かれた姿だった。

 これ以上は危ない。学校も不審者や通り魔の可能性を考えなくてはならず、学校は急遽学級閉鎖となることになった。

 警察も色々と来ていてEが言うに区にとってのちょっとした事件にもなり始めていたらしい。


 でも、それでも学校に来てやらなくてはならない事が飼育委員の人達(Eを含む)にはあった。飼育小屋の動物達の世話だ。

 先生からは他の人が学級閉鎖中はやっておくと知らされてはいたが、飼育委員だからこそ知り得る世話の場所もあるわけで心配だったそうだ。

 個人個人で連絡し、Eと他二人で午後九時頃に飼育小屋へ集合して餌やりとかを教師達等に秘密で行う事にした。

 飼育小屋は学校の裏側で人目に見えない所に建っているから裏口の抜け道からこっそり入ればバレないとでも思っていたんだろう。子供の頃のE達にとっては浅知恵この上ないことだ。


 裏門を通らず、下水へと通じる貯水路を飛び越え、フェンスを乗り上げて夜の学校へと侵入したE達は飼育小屋へと向かった。

 明かりとなる物は持たずにいたから砂利場で躓きそうになったそうだが、なんとか飼育小屋に辿りついたE達はさっそく小屋の中へ入ろうとした。

 できなかった。いつもは付けられていない筈の南京錠が付けられていたからだ。

 小屋に入れない。だが小屋の壁はフェンスの網目だ。

 わざわざ持って来ていた人参は隙間から与えられるくらいはできるだろうと兎達が近い裏側へと廻った。


 そのまま餌を与えて静かに賑わっていたが、ふと微かに遠くから明かりが近づいて来るのにグループの一人が気が付いた。

 勝手に学校に侵入したのがバレたら大目玉をくらうのは当たり前。見つからないように小屋のベニヤ板が補強として建て付けられている場所に三人は身を隠して様子を窺った。

 息を殺してやって来た者を良く見てみると、あのD先生だった。

 まさかD先生が今回の当直だったということに驚きつつ、D先生が小屋に懐中電灯の明かりをチラチラと照らしている位置を見計らいながら、E達は少々移動して隠れ続けていた。

 やがて、D先生として何も異常無しと考えたのか、この場から離れていこうとしていた。


 その時、E達に気付かぬまま、すぐ近くの横で通り過ぎていくD先生がポツリと一言。


「……今度は足を全部かな」


 今でも兎殺しの犯人は分かっていない事に“なっている”そうだ。

 三度目以降は何も問題なく、兎が殺されるような事態は起きなかった。

 Eは言う。

「下手したら俺達もまずいと思ったよ……」と。

 ちなみに、Eが昔に通った現在の小学校にはD先生はもういない。

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