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恐怖探究  作者: 篠田堅
14/44

落書き

投稿者:カメラマンFさん

 駅のトイレは新都に近くて人口密度が高いほど汚れが多く、使いづらい所があります。

 一昔前の公園にあった公衆トイレとなんら変わらないくらいの酷さです。

 よく個室トイレの壁には誰が書いたのかわからないほどの量の落書きがびっしりと敷き詰められ、一面真っ黒に近い色合いが作られてました。

 中には電話番号なんてものを書く者も出てくるから始末に負えません。

 そんなトイレ、不浄の場として良くないのを貯め込むと“彼等”にとっては心地よい空間にしてしまうから掃除は必要だ。


 僕が使う駅の一番奥にあるトイレの話だ。

 利用者の多い駅には様々な人が溢れ、トイレを使う人達は大勢いる。

 けどガラの悪い人間という奴もそれを使う訳で、きちんとせず散らかすモノだからそうしたことが積み重なって汚れきってしまう。

 清掃員さんを気の毒に思ってしまうくらいのレベルにだ。


 ある日、帰宅途中の駅中で便意を催した僕は駅のトイレを使う事にした。

 汚れていて臭いもキツイことで有名なトイレでもあるから普段から僕は使わない。

 けどあまりにも我慢ができないから仕方なくといった感じで使わざるを得なかった。

 個室トイレに入り込み、急いで荷物をかけて便座に腰を下ろすと閉められた狭い空間の落書き達が僕を迎えてくれる。

 実名を使った悪口や下品な言葉がほとんどなそれは自分としては見ていてあまり気持ちのいいものではなく、無視する方向に決めていた。


 しかし、そんな多くの落書きの中に一際目立つモノがあった。

 棒人間のようなものを描いた落書きだった。頭が○じゃなくて縦棒のままの形のだ。

 大きさは10センチの長さで右壁の一番下あたりで描かれており、歪な風貌のモノだった。

 

*似たようなモノを書けばこんな感じ。


  |____

/|_

  /


 子供でもマシなものが描けるぞと思えるくらい変な形の棒人間だった。

 特徴は何と言っても左手部分らしき所が異様に伸びた形。

 初めはちょっと目の付く程度の落書きだったんだけど……。

 二週間ぐらいかな。久しぶりに同じ一番奥のトイレに入ったんだ。


  |_____________________________________________●

/|_

  /


 その落書きはまだあった。それも左手部分が前以上に伸びて、後ろ側の壁にまで描かれていた。

 先端にはぐりぐりと捻じり込むように丸く塗られた大きな●が後ろの壁にある。

 何を意味するかわからなかった。この日も僕は不気味に思いながらそのトイレを後にした。

 だけど、この落書きの意味を知る事になるのは遠い日ではなかった。


 次の日、女性を殺した容疑で捕まった殺人犯のニュースが流れた。

 その内容を詳しく聞いて僕は驚いてしまった。

 

 犯人は殺した女性をミンチになるまでバラバラにした後、あのトイレの一番奥個室の便器で“流し捨てて処理をした”と供述したとキャスターは述べた。

 警察がその便器を下から取り壊して調べてみた所、排水管に『眼球や指等』の身体の一部が詰まった状態で発見されたらしい。


 今思えば、あの棒人間の手が指していた方向を考えると、偶然には思えない。

 ニュースには落書きについて触れてもいないし、自分自身もあの落書きは誰が描いたのかも調べられてはいない。

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