19話。新しい朝が来た②
お金や技術の説明です。
ナーロッパだなぁ……と思っても口に出しては行けません!
なんやかんやで侯爵から聞き出した金やこの国の常識について説明しよう。
まず王国に於ける通貨の単位は『シェン』である。
1シェンは1シェン銅貨1枚。
銅貨は5シェンの中銅貨と10シェンの大銅貨がある。
次いで100シェンで銀貨1枚。100シェン玉だな。
500シェンの中銀貨と1000シェンの大銀貨がある。
それから10000シェンで金貨1枚。
5万シェンの中金貨と10万シェンの大金貨。
最後が100万シェンの白金貨。まぁプラチナだ。これ以上の硬貨は無いらしく、偽造防止のために幾つかの仕掛けがあるらしいが、そこまでは教えてもらえなかった。
王都の役人である男爵の年収は大体400万~600万シェン。
一般的な家庭の場合、大体50万~100万シェンなんだとか。
パンの値段が一つ20シェン前後らしいので、俺的な価値観だと物価は日本の5分の1くらい。
つまり一般人の年収である50万~100万シェンというのは大体250万~500万円くらいだと思って良いと思われる。
最初それを聞いた俺は「男爵の給料が高すぎないか?」と思ったのだが、なんでも男爵家のような貴族は雇用の義務があり、使用人を最低二人は雇う必要があるらしい。そのため彼らの給料にはそいつらへの給料も含まれているそうだ。
そして貴族の使用人なので、当然支払うべき給料の相場は高く、最低でも100万シェン。つまり年収400万シェンの男爵家の手取りは最大でも200万シェンとなる。
それでも年収1000万円と考えればかなりのエリートなのだが、貴族は調度品や社交費用に金がかかるらしく、普通に暮らす分には問題ないのだが、決して余裕があるわけではないので、一般庶民が想像するようなきらびやかな生活を送れるわけではないらしい。
あと各国の通貨や相場はそれぞれ違うが、大体同じような貨幣システムを採用しているらしい。これは恐らく異世界から召喚されてきた連中の影響を受けているのだろう。
金の話をしたからついでに解説をするが、金融的な錬金術と呼ばれた銀行システムはすでにこの世界にもある。通帳やカードのようなものもあるんだとか。
ほとんどは国営企業で、同盟国の銀行と提携を結んでいるため、各国で互換性もあるらしい。これは対魔王軍用に物資や経済支援を行うために必要な措置だったんだと思う。
それと通信技術に関しては無線から電報、有線電話のシステムがあるらしいが、携帯電話はない。
また、有線電話に関してはあくまで同一の都市内だけに限られており、都市間の連絡は魔法を使った無線のようなものが一般的だ。
なんで都市間に有線式の電話線が無いのかと言うと、これは単純な話で、都市外に電話線を張っても山間部などで魔物に破壊されるからだそうだ。
……まぁ、向こうでも鳥とかリスとかにやられるときがあるからな。魔物が居るなら尚更だろう。常に見張るのも不可能だろうしな。
あと、自動車や電車もなくて移動手段は高品質な馬車が主流だそうだ。電車が無い理由はやはり線路だろう。電話線と同じで魔物に破壊されたり、盗まれたりするんだと思う。
自動車については、やはり原動機がネックなのだろう。今まで召喚された人間は必ずと言っていいほど自動車を造ろうとしたらしいが、蒸気機関から内燃機関を作ろうとするとなぜか必ず失敗するらしいうえに、ならばと魔力を利用したバッテリーのようなものを作ろうとしても必ず失敗するので断念するのが常なんだとか。
逆に言えば、絶えず車輪を動かし続けることができる膨大な魔力の持ち主を搭載すればできないことは無いのだが、そんな素質がある人間が自分を部品扱いされて楽しいはずもない。更に交代要員やら何やらの手配を考えると、どうしても非現実的な発想になってしまうからな。
この話を聞いたときはついつい(大丈夫かクレーン技師)と、心配をしてしまったが、それは俺が心配することでもないので放置しておく。考えるべきは失敗の原因だ。
正直俺もエンジンのことなんか詳しくはないし、経過を見たわけでもないのでなんとも言えないのだが、恐らくこの世界の神が関わっているのではないかと思っている。……あくまで漠然とした予想だけどな。
とりあえずそっちに手を出して自分の仕事を増やす気は無いので、自動車は放置。俺にとって重要なのは俺の年収が1億円相当あることと、使用人を雇う必要があるということがわかったことだ。
そうこうして技術や金についての知識を得た俺は、早速侯爵に一つ要求をすることにした。
「では閣下。早速で申し訳無いのですが……」
「む? なにかね?」
「人を雇うにしても私には伝手がありません。そのためどなたか紹介していただくことは可能でしょうか?」
俺が申し訳なさそうに告げると、侯爵の表情は訝しげな顔から一転し、笑顔で「心配はいらん」と告げてくる。
「そのことか。もちろん当家から信用の置ける者を紹介させていただこう」
「ありがとうございます!」
「いやなに、当たり前のことだからな」
そう。色んな事情が重なった今となっては、侯爵にしてみれば俺に死なれては困るし、下手に他の貴族に接触されないようにするため監視役を付ける必要があるということはわかっている。
だからこそ俺は侯爵から言い出す前に、自分から『その護衛兼監視役を受け入れる』と明言したのだ。
これにより向こうは手間が省けたことになるので、俺からの要望を断ることは無いと思っていたのだが、予想通り話が進んで何よりである。
「ふむ。ついでだ。何か入り用なものがあるなら聞くが?」
「……よろしいのですか?」
「あぁ。遠慮は要らんぞ? 卿の立場を固めるのも私の仕事だし、何より後から追加されるよりも今のうちに言われたほうがこちらも楽だからな」
……随分とぶっちゃけてくるが、事実だろうから俺から特に言うことはないな。いや、せっかくだからこの流れを利用させてもらおうか。
「では遠慮無く。まずは侍女として雇い入れたい者がおりまして」
「ん? 卿に知り合いが……あぁ、そういうことか」
――俺にはこの世界に知り合いなんて居ないはずなのに、雇い入れたい人間とはなんだ? と思ったのであろうが、少し考えたらすぐにその答えに辿り着くことができたようだ。
「気に入ったか?」
「はい。それにあの娘は王家から斡旋された形となりますので」
「ほほぅ。確かに王家への配慮も必要よな」
最初は「お前も男だもんなぁ」と言わんばかりに怪しい笑みを向けてきた侯爵も、俺が王家に対して言及すると納得したような顔をして頷いた。
そうなんだよ。外交官としての給料を貰う以上、俺は形式上であっても王家に仕える立場になったんだ。そして王家に仕える以上は侯爵の紐付きだけを周囲に置くのはよろしくない。
そこでメイドさんことエレンの出番となる。
彼女は派閥とかそういったものとは関係ない存在だし、何より『王家が準備し、王家に斡旋された人間』である。つまり彼女を身近に置くことは『彼女を斡旋してくれた王家に対する感謝の証』と言い切ることができるんだ。
……王家としてはもっとしっかりとした楔を打ち込みたいだろうが、すでに自分たちが用意した女を気に入って側に置いた以上、新たな人間を派遣する口実が無い。
もしもそういうのを無視して人材の派遣を無理強いすれば、俺の気分を害するだけではなく、侯爵の顔も潰すことになるからな。
更に言えば、侯爵も俺たち生産職につけられた侍女には、派閥の色が無いことは知っている。そのうえで彼が俺を抱え込むことが決まっている以上、俺の周りにはできるだけ他の貴族の影響を受けていない者が望ましいと思っているだろう。
それらを加味すれば、侯爵にとってもエレンという女は都合が良いと考えてもおかしくはない。そう思ってこのタイミングで彼女を雇い入れることを提案したんだが、どうやらこちらも問題はないようだな。
「よかろう。卿が望むなら、その侍女を雇い入れると良い。陛下と担当には私から話をしよう」
「ありがとうございます」
……些細なことでしっかりと恩を着せてくるところが貴族だよな。いや、抜け目が無い上司で良かったと考えよう。
エレンへの意思の確認が無いのが気になるが、まぁ彼女の立場では侯爵や王家からの命令に逆らえんから、聞くまでもないのだろうな。それにすでに彼女からの承諾を得ているから、ここで相手の意思の確認がどうこう騒いで、無駄にことを荒立てる必要もあるまいよ。
ついさっき『郷に入った以上は郷に従う』と言ったばかりだしな。
「で、残りは何かあるかね?」
残り、残りなぁ。あぁそうだ。
「そうですね、私の住まいはどうなるのでしょうか?」
これも気になるところだ。ずっと王城に住むわけにもいかんだろう? 普通に考えれば適当な家か侯爵の家に移り住むことになると思うんだが?
「あぁ、それもあったな。それについては……」
「なるほど、では…………」
「うむ。では、しばらくはそのような形で頼む」
「はっ!畏まりました!」
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こうして朝食と共に様々な打ち合わせを行なった神城は、晴れて住まいと職(メイド付き)を手にいれ、異世界での生活基盤を確固たるものにすることに成功したのであった。
やっとお金や住居についての説明が終わった……信じられるか? まだ二日目の朝なんだぜ?
不足分の説明や魔法を使った技術についての詳細は後回しです。(後で説明するとは言っていない)
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