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薄幸のOLは、異世界でおっさんになることにしました。  作者: こる
第四章 王都へ

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ホイポ●カプセル

「今日は野宿だ」


 町の中でそう言われたわたしが戸惑うのは当然だろうと思う。


「野宿ですか?」


 近くには宿が多くあり、我々は懐も温かい。

 好き好んで野宿をする理由がわからない。


 怪訝な顔をするわたしを連れて、レヴィは町を出てしまう。


 そして、暫く歩いた森の入り口近くで足を止めた。


「ちょっとそこで待っていてくれ」


 わたしが立った場所から数歩前に歩き、それから右に十歩、直角に曲がって十歩、また曲がって十歩あるいて――十歩四方の場所を確認すると、その中央に四角い魔道具を置いて、手持ちの魔石をその中に入れた。


 グゥン――と魔道具が起動し、レヴィが急いで私の横まで下がる。


「レヴィオスさん、あれはなんの魔道――」


 わたしが言い終える前に魔道具が一気に膨れ上がり、コンテナハウスのようなサイズになった。


「携帯型住居だ」


 ドヤ、という効果音が聞こえた気がした。


 なるほど、窓もドアもちゃんとある。シンプルな箱形なので三角屋根はないが、近年普及していたコンテナハウスだと思えば違和感がない。


「外壁には破魔の木を所々に入れることで、魔獣を寄せ付けなくしてんだ」

 破魔の木は第三層にしか生えていないので、第二層ではものすごく高価なんだけど、それを使ってるのか……それだけで、もう高級住宅だね。


 引き戸をカラカラと開けると、土間があった。


「ヒラガ式住居は、靴を脱いで入るんだ」

「わかりました」

 説明してくれる彼に神妙な顔で頷く。

 神妙な顔をしてないと、吹き出しそうだ。


 玄関の土間部分で靴を脱いで、横に設置されている棚に入れる。

 室内は中央にラグマットが敷かれ大きめのソファが置かれて居心地の良さそうな居間になっている、その横には小さなキッチンがついていて広めのダイニングテーブルもある、手前のドアを開けると、トイレとバスルームも備え付けられていた。

 そして、襖で仕切られた奥の部屋はなんと畳敷きだった。

 押し入れがあり、床の間があり、漆喰の壁、そして障子の入った丸窓がある。

 とても品のいい和風建築……。


 ぽかんとしたわたしを、彼が背中を押して和室に入る。


「アキの世界の建築様式なんだろ? ニホン人が懐かしむって聞いたんだけどよ、気に入ったか?」


 彼の言葉に、これはわたしのために作ってくれた部屋なんだと気がついた。


「はい、とても素敵です」


 胸の中が温かくて、泣きそうになるけれどグッと我慢する。……この外見のおっさんが泣くのは、ちょっとね。


「アーキ?」


 レヴィに名前を呼ばれて顔を上げると、両手を広げて笑っていた。


 もしかして、抱きついていいんだろうか? この姿で?


 おずおずと近づくと、彼から抱きしめられた。


「レヴィ、ありがとうございます」


 抱きしめ返して、お礼を言う。


「どういたしまして。アキが喜んでくれりゃぁ、俺も嬉しい」


 ぎゅうぎゅうと抱きしめられ、頭に頬ずりされる。

 おっさん同士という外見はさておき、彼に抱きしめられるのはとても安心できる。

 大柄なわたしを抱きしめてなお余裕のある大きな体、規格外の筋力のわたしがハグしても平気なのが素晴らしい。


 ひとしきり抱きしめあってから、離れる。


「ところで、勝手にこういったものを立てても大丈夫なんでしょうか?」

「問題ねぇよ、野営用のテントと同じようなもんだ」


 テントと同じ。


「魔獣は避けますが、強盗の心配はありそうですね……」


 これだけ立派な家が携帯できるなんて凄すぎる、漫画の中でしか見たことがない。


「いや、それこそねぇよ。こん中には、持ち主が認めた人間以外入れねぇようにしてあるからな。ここに入れるのは、俺とアキだけだからよ。それに、この家はちゃんと持ち主登録してあっから、俺以外に扱えねぇようになってる。あれだ、ギルドのタグと同じだ」


 セキュリティ面も万全。


「俺の勝手な自己満足なんだけどよ、アキにこの世界を見せてやりたくてな。アキ、俺と一緒に世界を回らねぇか?」


 片手を取られいい笑顔で聞かれて、わたしも笑顔になる。


「よろこんで。是非、ご一緒させてください」


 答えた瞬間に、手を引かれて再度抱きしめられた。


「――あー……もう、ぜってぇ、離さねぇ」


 肩の上に顎を載せた彼が決意を呟く。


「はい、どこに行くにもご一緒させてください。ランクが足りないようでしたら、頑張って上げますから」


「Bまでありゃぁ、大抵大丈夫だ。俺もこれ以上上げるつもりはねぇし……アキを見つけるためにAになりはしたけどよ、そうでなきゃBでもよかったんだ。でも、ああ、俺、ちゃんとAランクに上がっておいてよかった。過去の自分を褒めてやりてぇ」


「そうですね、レヴィがAランクで、わたしの昇格の査定に来てくださらなかったら、きっとまだ会えていませんでしたね」


 ――本当に奇跡のようだ。


 彼もそう思ったのか、わたしを抱きしめる腕にすこし力が入った。



筆が乗って危うく、おっさん同士のキスシーン書くところでした。( ˘ω˘ ; )

おっさん同士のハグは、友情だと思ってください。

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前回連載していた『中ボス令嬢は、退場後の人生を謳歌する(予定)。』が、一迅社文庫アイリス様より書籍化されました! よろしくお願いいたします! 文庫なので携帯性に優れておりますよー
中ボス令嬢
― 新着の感想 ―
[気になる点] 話タイトル、ポ◯ポ◯ではなくホ◯ポ◯です。
[一言] はじめまして 面白かったです 腐腐腐、オッサン同士のキスシーンは自力で楽しみますね 続きは作者様が落ち着くまで気長にお待ちしてます
[一言] おっさん同士のキスシーン..良いのではないでしょうか! 我に返ってお互いに言い訳しまくるところを見たいと思ってしまいました(笑)
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