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薄幸のOLは、異世界でおっさんになることにしました。  作者: こる
第四章 王都へ

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移動

 王都へ向かうために、まずは共同住宅を退去することにした。


 今後はレヴィと行動するために拠点を移動することになる、少なくともこの町に戻ることがないような気がしている。


 彼は今まで、第三層まで通っている大きなダンジョンのある町を拠点としていたけれど、今後は第三層にこだわる必要がないから、今回の件が片付いたら、生活するのにいい場所を二人で探してみようということになった。


 レヴィに魔獣を大量に収納していた袋をひとつ借りて、荷物を一切合切入れてしまう。

 元の姿なら、異空間に収納できるんだけど、旅をするのにあの姿は面倒事が多くなりそうなのでおっさんの姿のままで行くことになっている。

 家具は備え付けなのでそのままで、荷物自体もそんなに多くはない。


 ギルドに移動することを報告してから町を出る。

 あっさりと受諾されるのは、こうして拠点を移動する冒険者が多いからかな。

 冒険者でなければ、人頭税などの関係もあって、住んでいる地域を移動する許可が中々出ないらしいんだけど、冒険者はギルドで税金の関係を処理できるからか、国内の移動には制限がない。

 国外への移動は、戦闘力の流出を防ぎたい関係から、さすがに簡単にはいかないらしいけれども。


「もしかしたら、昇格に関してあの記者からの妨害でもあるかと思ったのですが。なにもなくて、拍子抜けしました」


 道すがら、思わずそうこぼしたわたしに、彼は笑ってそれはないと言い切った。


「ギルドは政治に干渉されないようになってんだ。貴族であっても、茶々を入れることはできねぇよ」


「じゃぁ、あの人がレヴィオスさんの行き先をギルドから教えられたっていうのは、記者だからという理由のみだったんですか?」


「ああそうだ。Aランク以上の冒険者には一人に一人記者が付く。その記者にのみ特権として、いくつかの事柄が開示されるようになってんだ。たとえ記者であっても、自分の担当以外の冒険者の動向を聞くことはできねぇし、知り得た情報を冒険者の同意なしに口外することも禁じられている」


 彼の言葉に、渋い顔になってしまう。


「いい記者に当たればいいですけれど、難のある記者にあたると面倒なことになりそうですね」


「本当にな。ギルド側から記者の行動に制限を掛けるのも難しいからなぁ」


「難しいんですか? そもそも、ギルドが記者を容認しているのは何故なんでしょう?」


「冒険者の活動を、貴族に認めさせるため、かな。昔は、野蛮だと蔑まれるだけの仕事だったらしいぞ、それが全世界新聞社の記者が大々的に活動を賛美して、一気に印象が変わったらしい」


「印象戦略ですか。貴族に嫌われたら、仕事がし辛かったりもしたんでしょうか」


「そうだな。干渉されないだけならいいが、妨害をされたり――まぁ色々あったらしいぞ」


 途中、言葉を濁していたから、結構酷いこともあったのだろうと勝手に想像する。

 記者のカルーダ女史の態度を見れば、理解できなくもないしね。


「さて、まずは、一番近い大都市ヒルカンダに行くか。あそこは魔道具が充実しているから、いい収納袋が手に入るだろう」


 わたしが収納袋を欲しがっているのを知っているレヴィのおすすめで、ヒルカンダという都市に寄るという提案をしてくれた。


「急がなくていいのですか? 収納袋は、後回しでも構いませんよ」


「ううむ、そう言われると心が揺れるな。正直、さっさとアキの手続きをしちまって、名実ともに一緒に居られる大義名分が欲しい」


 真面目な顔で断言された。

 確かにわたしもそちらを解決したいのはやまやまだけど、わたしがおっさんである限りは問題はないので、もうひとつの理由を提示した。


「全世界新聞社へ苦情を申し立てるのも、早いほうがいいのではないですか? あの人が、また何をするかわからないですよ」


「あー、そっちもあるか」


 すっかり忘れていたような彼に呆れる。

 あれだけ狙われていて、後回しをするのはどうかと思う。


「それなら、寄り道をした方がいいかもしれねぇな、やっぱりヒルカンダに寄ろう」


 彼がそう決めたなら、わたしは従うまでだ。



 馬車を乗り継ぎながら移動すること五日、わたしたちは魔道具の聖地と呼ばれる都市ヒルカンダに到着した。

おっさん二人旅。

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前回連載していた『中ボス令嬢は、退場後の人生を謳歌する(予定)。』が、一迅社文庫アイリス様より書籍化されました! よろしくお願いいたします! 文庫なので携帯性に優れておりますよー
中ボス令嬢
― 新着の感想 ―
[良い点] おっさんの二人旅ですってよ!にやにや(* ̄▽ ̄)ノ♪ [一言] なんかもう、レヴィ先生ってばアキちゃんとの二人暮らしに邪魔さえ入らなきゃ、カルーダ女史の事なんて直ぐにどうでも良くなりそ…
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