第36話 別れ
本日最後の投稿です。
やっぱりバレていた……俺の正体はクラリスとグレイとエルナしか知らない。
誰かが漏らした? クラリスは絶対に違う……グレイとエルナのどちらか……
「その様子では、誰かは君の出自を知っているのだね。私が君をバルクス王国ジーク・ブライアント子爵の次男と知ったのは偶然なんだ。
君への褒賞は何がいいかずっと困っていたのだが、冒険者登録をしてあげようと思ってね。もちろん冒険者登録だけでは褒賞としては物足りないが、この前会わせたギルドマスターのビクトに冒険者登録を依頼していたんだ。
当然、姓は分からないからマルスでね。そしたらビクトが3年前にバルクス王国に3歳で冒険者登録されているマルスという名前があると言ってね。間違いなく同一人物だと思って今かまをかけさせてもらったら案の定という所だ。
もちろんマルス君に敵意が無いのは知っている。だがどうしてここにいるのかだけでも聞かせてほしい」
少しでもグレイとエルナを疑った俺が恥ずかしい。
「分かりました。伯爵の仰る通り僕はバルクス王国のマルス・ブライアントです。僕がここに来たのは偶然なんです。イルグシアの迷宮からなぜか転移して魔物達の行進中のグランザムに来てしまったのです」
「む。そうか……グランザムとしてはとてもありがたい偶然だったんだな……帰るあてはあるのか?」
「いいえ、ございません。ただもしかしたらグランザムの迷宮から同じように転移出来ないか試してみようかとは思ったのですが……うまく転移できたとして、イルグシアに戻れる保証もないですし、今度は全然違う大陸とかに飛ばされる可能性もありますので……」
「ふむ。私がマルス君の帰りの手配をしようか? 越国する際、私の書状があればすんなり通れるかもしれん。まぁ戦争中だから書状があってもそう簡単にはいかないかもしれないが……」
「あ、ありがとうございます。是非お願いします」
「分かった。それではなるべく早く準備の方はする。ただ1週間は時間をくれ。あと手紙をしたためてくれれば、早馬を出して先にイルグシアに届けることも可能だぞ。先にマルス君の無事を教えてあげた方がよいのではないか?」
「何から何までありがとうございます。それでは明日早速手紙を書いて参ります」
「うむ。それでは今日はゆっくり休んでくれ。また明日話そう。今日はご苦労だった」
伯爵はそう言うと自室に戻っていった。
良かった、正体がバレてもお咎めなしで済んだ。
俺は安心して部屋に戻って眠りについた。
1週間ただ時間が過ぎるのを待つのは嫌だったので、俺は1人で迷宮に潜っていた。
クラリスも誘ったのだが、グランザム迷宮を攻略した日から素っ気なくなり、一緒に居ることが出来なかった。
なんだか失恋した気分だ。いや気分ではなく失恋だ……
もしかしたらグレイやエルナに迷宮攻略するまでは絶対に一緒に居るように言われていて、嫌々付き合ってくれていたのだろうか?
うーん、でも伯爵に俺と一緒に迷宮に潜ると言い出したのはクラリスからだったしなぁ。
こんなことを考えながらボス部屋と湧き部屋を往復していた。
たまに騎士団の人たちと湧き部屋で一緒になって狩りをしたり、話をしたりした。
湧き部屋に行くときは騎士団の人たちがいればいいなぁとか思っていた。
前世では1人でずっと努力をしていた。この世界に来てからというものアイクが常に一緒に居てくれて、一緒に努力をしてくれた。最近はクラリスになった。
クラリスといるときは……もう考えるのはやめよう。
無心になってボス部屋と湧き部屋を周回した結果、レベルが上がった。
【名前】マルス・ブライアント
【称号】風王/ゴブリン虐殺者
【身分】人族・ブライアント子爵家次男
【状態】良好
【年齢】6歳
【レベル】14
【HP】43/43
【MP】3481/6012
【筋力】36
【敏捷】37
【魔力】47
【器用】37
【耐久】37
【運】30
【固有能力】天賦(LvMAX)
【固有能力】天眼(Lv7)
【固有能力】雷魔法(Lv0/S)
【特殊能力】剣術(Lv6/B)
【特殊能力】火魔法(Lv1/G)
【特殊能力】水魔法(Lv1/G)
【特殊能力】土魔法(Lv1/G)
【特殊能力】風魔法(Lv8/A)
【特殊能力】神聖魔法(Lv3/B)
ついに土魔法を覚えた。
これで四大魔法すべて使えるようになった。
1人で土いじりする時間があったからな。
努力だけは裏切らない。これからも努力し続けよう。
この1週間迷宮にだけ潜っていたわけではない。
騎士団の人たちに乗馬を教えてもらった。
イルグシアへの帰路は馬で帰る予定なのだ。
そして1週間が経った。
ビートル伯爵の褒賞は凄かった。
馬、道中のお金、越国の手配、そして早馬でイルグシアに俺の無事を知らせる手紙を送ってくれた。
感謝しても感謝しきれないほどだ。
そして街の西側に来た。
最後にランパード家に挨拶に行ったのだが、誰もいなかった。
今日発つのを知らないのかもしれないな。
西側には伯爵、騎士団、街の住民が見送りに来てくれた。
「剣聖様ありがとう」「またいつでも来てくれ」とか嬉しい言葉をもらった。
伯爵とブレア騎士団長は街の外まで一緒に来てくれるらしい。
俺は街のみんなに別れを告げてグランザムを去った。
グランザムから離れるんだと思うと涙が止まらなかった。
グランザムから1kmくらい離れたところに3人の人影が見え、近づいてみるとそこにはなんとランパード一家がいた。
避けられていたクラリスに最後に会えたのは嬉しい。
「マルス君。今までありがとう。君のおかげでランパード家、グランザムが救われた」
「僕だけではなく、皆さんの頑張りがあったからですよ。もし諦めていたら、僕がここに来る前にもうグランザムは陥落していましたよ」
俺はそうグレイにそう言ってクラリスの方を見て言った。
「クラリスもありがとう。クラリスと一緒に居た1か月はとても楽しかったよ」
クラリスはずっと泣いていた。俺と会う前から。
泣いて言葉がうまく出ないらしい。
俺はクラリスの方を見て
「じゃあ行くね」
と言ってその場を離れようとした。
「もうちょっと待ってよ」
クラリスがそう言った。久しぶりにクラリスの声を聴いた気がする。
「ビートル伯爵、ブレア騎士団長、そしてお父さん、お母さん。ありがとう……」
クラリスのその言葉にグレイとエルナが泣きながらクラリスを抱き寄せた。
俺は呆然と見ていた。
少しするとクラリスが泣き止んだようで
「さぁ行きましょう」
と俺の所へ来て言った。
「え?」
「行きましょう」
「え?いや……」
急なことで頭がパニックになった。
伯爵が説明してくれた。
「マルス君たちが迷宮攻略している最中に私たちがダメーズの件でグランザムに戻っていた時にグレイに言ったんだ。クラリス嬢をマルス君に預けてみる気はないかと」
「その件でビートル伯爵は我々ランパード家に考える時間を与えると言って、マルス君抜きで会議を始めようと思ったのだが、議題に入る前にクラリスの方からマルス君と一緒に行きたいと言ってきてね。最初はクラリスを褒賞や物として扱うのは嫌だったんだが、クラリスから言うものだから……」
「私もその話を聞いて、驚いたよ。提案した私も心苦しかったからね」
ビートル伯爵とグレイの言葉が頭に入ってこない。
ただクラリスは俺を避けたり、利用していたわけではないという事だけは分かった。
この1週間は家族と離れ離れになる前の思い出を作っていたという事か!
「マルス君、クラリスを頼むわね。マルス君が一緒だから大丈夫だと思うけど、道中は気を付けてね。盗賊とかもいるから……」
エルナが言うとグレイがクラリスに
「何かあったら戻ってきてもいいんだよ。父さんと母さんはクラリスの味方だからね」
グレイ、エルナ、そしてクラリスはまた泣き始めてしまった。
ようやく事情が飲み込めた俺も泣いてしまい、伯爵、騎士団長も泣いていた。
グランザムの町外れに小さく綺麗な虹がかかった。
クラリス頑張れ!よくやった!と思った方は
★★★★★とブクマの方を頂けたら私のモチベーションにも
なりますので是非よろしくお願いしますm(__)m
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もしよければ、こっちも見てやってください。
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