第272話 鬼哭
俺たちを通路からひょっこり見ていた6人のうち、おかっぱヘアーが俺たちを警戒しながら安全地帯に入ってくると坊主の5人もおかっぱヘアーの後に付いてきた。
そして何人かはライナーとサーシャの顔を見て驚いていた。きっとこの2人の事を知っているのだろう。
「失礼だが、お前たちは誰だ? 俺はBランクパーティ【鬼哭】のリーダー、元A級冒険者のズルタンだ」
おかっぱヘアーが先に口を開く。
「俺はリスター帝国学校の教師で【剛毅】のリーダー、B級冒険者のライナーだ」
ライナーが偽装の腕輪を外しながらズルタンの質問に答えるとズルタンがライナーにまた質問をしてくる。
「やはり【剣狩】か……悪名高き【剣狩】が学校の教師をしているとはな……いや、別に悪い意味で言ったわけではないんだ。女子供をたくさん連れているようだがここで何を?」
「生徒達に見聞を広めて欲しくてな。近くまで来たから迷宮に入ったのだ。あと鑑定をされているようだが、お前らは初対面の者に鑑定をするのが礼儀なのか?」
「すまない。最近冒険者の中にも危ない奴が増えてきてな。お前も身に覚えがあるのではないか? 詫びとして俺の事も鑑定してもらって構わない。まぁしばらくここで一緒に過ごす仲だ。お互い自己紹介でもしようじゃないか」
ズルタンはそう言うと4人を紹介してきた。
「こいつがツルで、隣がピカ、そしてハゲに最後がマルだ。全員愛称で呼んでいる」
ズルタンに名前を呼ばれるたびに光る頭を少し下げて会釈をしてくる。
「最後にこいつなんだが、こいつは【鬼哭】のメンバーではないから紹介は省かせてもらう。もともと無口な男だから話すこともないだろう」
最後の1人はどこからどう見ても冒険者とは思えない体型だった。こいつもしかして……
「分かった。ではこっちも紹介させてもらうが15人もいるから主要なメンバーだけ紹介させてもらう。まずはサブリーダーのB級冒険者のサーシャだ」
サーシャがミーシャを置いて、偽装の腕輪を外しながら前に出て挨拶をしに行く。残されたミーシャの所に俺が行くとすぐにミーシャが俺に身を預けて手を握ってくる。
ミーシャの手は汗ばんでおり、震えていた。その様子を見たクラリスがミーシャの反対側の手を握るとミーシャは少し安心したようだったが、やはり震えは止まらない。
「B級冒険者のサーシャよ。よろしくね」
サーシャが警戒しながら自己紹介をするとズルタンが
「【風雅】のサーシャだよな? 鑑定してもいいか?」
【風雅】? なんだそれ? 俺の疑問に誰も答えてくれるはずもなくサーシャはズルタンの言葉に頷く。ズルタンがサーシャを鑑定している間にも紹介は続き
「そしてもう1人の先生でブラムだ。B級下位クラスの力はあると思う」
ライナーに紹介されブラムが前に出て軽く頭を下げると、何も言わずにズルタンはブラムを鑑定したようだ。ブラムも偽装の腕輪を外している。
「あとは獣人のブラッドと魔族のコディだ。あとはそのうち話す機会があればお互いで自己紹介でもしてくれ」
ズルタンはブラッドとコディを鑑定しながら満足そうに
「ありがとう。そっちのそのほかのメンバーの装備がやたらと豪華そうなのも気になるが……まぁそれはまた今度な。あとさっきも言った通り俺たちの事も鑑定してもらっても構わない。だがさっき紹介しなかった奴だけは鑑定しないでやってくれ。冒険者ではないからそういうのを嫌がるんだ」
遠慮なくまず4人のハゲから鑑定すると4人ともステータスはコディと同じくらいだが装備はハゲたちの方が上で、スキルは圧倒的にコディだ。
そして注目のズルタンを鑑定すると
【名前】ズルタン
【称号】斧王
【身分】人族・平民
【状態】良好
【年齢】35
【レベル】59
【HP】182/221
【MP】19/125
【筋力】101
【敏捷】88
【魔力】71
【器用】95
【耐久】93
【運】1
【特殊能力】魔眼(LvMAX)
【特殊能力】斧術(Lv9/B)
【特殊能力】風魔法(Lv4/C)
【装備】ブレイブアックス
【装備】幻影の手斧
【装備】トマホーク
【装備】フランキスカ
【装備】おかっぱヘアー
【装備】ギガントアーマー
【装備】守護の指輪
こいつこれでB級冒険者に落ちたのか……正直今年のA級冒険者昇格試験がいかに楽だったかが分かるな。
幻影の手斧、トマホーク、フランキスカ……投擲系の斧が3つか、幻影の手斧とか見失う事があるかもしれないから気を付けないとな。
もう1つ装備として気になる物があったが弄るのはやめておこう。
俺が鑑定し終わったことをライナーに告げるとライナーが
「ズルタン、俺たちはこれから順番に寝る。これは訓練も兼ねているので誰かは起きているが、それは【鬼哭】を疑っているわけではないから、そこだけは分かってくれ」
「分かった。俺たちはこれから身を清めていつものように雑談をしているからこっちの事は気にしないでくれ」
ライナーの言葉にズルタンが答えると、ライナーが大声で
「これから寝る順番を発表する! 19時よりマルスたち6人……22時から俺とサーシャとブラム、そしてバロンたち4人! 最後、1時にブラッドとコディだ! 明日もあるからMPは枯渇させて寝てくれ! それではみんな準備にかかれ!」
しっかりとズルタンたちに聞こえるように、ゆっくりライナーが叫ぶ。
ブラッドとコディの寝室を通って、2つの4人部屋のパーテーションを一旦取っ払って全員で作戦会議をする。
「どうだったマルス? あれでよかったのか?」
「はい! 十分です。先生たちが偽装の腕輪を外したことで俺たちの戦力は先生3人とブラッド、コディの合計5人だと思ったはずです。この5人であればアルメリアの3層のここまで来ることが出来るので疑われることもないでしょう」
ライナーが少しホッとした様子で
「よかった。あいつらどのくらい強いんだ? 正直ズルタンは思ったよりも威圧感があってびっくりしたのだが」
「ズルタンは相当強いです。今の状態の僕だと少し危ないかもしれません。万全であれば負けないのでMPを回復させてください。他の4人はコディと同じくらいと考えてもらっていいでしょう。そして問題なのが……」
俺がそこまで言うとミーシャが
「最後の1人は……ゲドーでしょ? いくら髪の毛や眉毛を剃ってもなんとなく分かったわ」
ミーシャの言葉に全員が驚く。特にサーシャは興奮した様子で
「ミーシャ! それ本当なの!? あいつが……」
大きな声を出してしまったのでみんなで慌ててサーシャを宥める。
「ご、ごめん……でもマルス? ミーシャの言ったことは本当?」
まだ少し興奮している様子だったが、何とか自制心を保っているらしくサーシャが尋ねてくる。
「はい、一瞬だけ気づかれないように名前だけ鑑定しましたが、間違いないです。そしてゲドーもミーシャに気づいていると思います。もしかしたらもう一度ミーシャを狙ってくるかもしれません。今から僕がいう事をみんな聞いてください」
全員黙って頷くと
「まず【鬼哭】の状態なのですが、相手も今まで潜っていたという事もあり、かなり消耗をしています。もしもこのまま戦っても勝率は高いと思いますが、やはり問題はズルタンです。MP消費が必要なさそうな攻撃方法だと思うので、もしかしたら誰かは大けがを負うかもしれません。そして最悪な事に僕とクラリスのMPはかなり少ないので回復手段がアリスのヒールのみとなってしまいます。まずは僕とクラリスのMP回復を最優先に考えようと思っております」
みんな納得してくれているようなので続ける。
「最初に寝るのはエリー以外の【黎明】5人。僕以外はMPを枯渇させずに22時まで寝ます。寝る前には必ずマジックポーションを飲むように。エリー、申し訳ないがこの中でエリーが一番万全な状態なんだ。みんなの為に頑張ってくれるか?」
エリーだけはHPもMPも全く減っていないので警備をお願いすると、
「……後でご褒美……お願い……」
1つ注文を付けられた。
「ありがとう。アイク兄、エリーを頼みます」
アイクにエリーの事を頼むとアイクも親指を立てて返事をしてくれた。
「次に22時に寝る人たちですが、いったん寝室まで戻ってきて待機をして欲しいのです。もしも22時前に襲ってきたら必ず僕の事を起こしてください。万全ではないと思いますが戦えると思うので。僕が起きて状況を確認し、ここで勝負をしかけると思います」
まだ全員が黙っている。
「ブラッド、コディ。2人が一番危険だ。【鬼哭】が襲ってくるとしたら22時以降だろうからな。22時以降俺たちは全員起きてはいるが、表には出てない。先に【鬼哭】側から仕掛けられた場合、すぐに部屋に戻って応戦してくれ」
2人は任せておけと言わんばかりに力こぶを作る。
まぁ22時から寝ると宣言してもすぐには攻撃を仕掛けてこないだろうがな。
MPを消費するにも時間が掛かるわけだし。
「もしも【鬼哭】が寝たら寝込みを襲う。【鬼哭】側も俺たちがこんなことを考えているとは思ってもいないはずだからこの可能性もあると思う。いいか? どんな手を使ってでも絶対に【鬼哭】を捕まえるぞ!? ではそれぞれの場所に戻ってくれ」
エリー、アイク、眼鏡っ子先輩、バロン、ミネルバ、ライナー、ブラム、ブラッド、コディの9名が部屋から出て行き、ブラッドとコディの寝室を通って【鬼哭】たちがいる安全地帯へもどる。
みんなが出て行った後、不安に駆られているミーシャに出来るだけ穏やかな声で
「ミーシャ、マッサージするからベッドに横になってくれ」
ミーシャの隣にサーシャが横になり、俺とクラリスで神聖魔法を使いながらミーシャをマッサージすると震えが止まりすぐに寝てくれた。
「ありがとう。あなた達。悪いんだけどこの部屋とあなた達の部屋の区切りをなくしたままじゃダメかしら? ミーシャも起きた時にマルスやクラリスが見えた方が安心すると思うのよ」
「分かりました。それではこのままにしておきます。僕たちはあっちのベッドで寝ますのでおやすみなさい」
カレン、アリスがミーシャと同じベッドで横になるのを確認した後にクラリスと一緒に自分たちのベッドに潜り込む。サーシャはミーシャが寝たのを見届けてから外に向かった。
「クラリス、今から残っている俺のMPを全部クラリスに渡すから抱きしめてもいいか?」
クラリスが恥ずかしそうに頷いてくれたので抱きしめながら眠りにつき決戦に備えた。
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