第215話 快方?
砦に戻るとヨーゼフのデーモンの部分がかなり無くなっており、右半身のほとんどが人間に戻りつつあった。HPの減少もだいぶ落ち着いてきた。きっと人造魔石や管がなくなった箇所が癒えてきたのだろう。
しかし人間に戻るにつれてどんどんステータスの値が落ちている。これは去年のステータスよりも低いのではないだろうか?
「クラリス、大丈夫か?お風呂に入ってゆっくり休んでくれ」
クラリスもだいぶMPを消費しており疲労困憊だ。俺もさっきのサンダーストーム? でかなりのMPを消費したが、クラリスよりは残りMPが多かった。
「ありがとう。じゃあ先にお風呂に入るね。お風呂から上がったらマルスと交代するからマルスもお風呂に入ってね」
クラリスの言葉に頷くとクラリスは風呂に入った。ちなみにアリスはすぐに風呂に入りMPを枯渇させてから寝たそうだ。
他のメンバーにはヨーゼフの事よりも砦周辺の警戒をお願いしている。
ミーシャ、ブラムはもう寝てしまっており、今は【紅蓮】のメンバーとアイク、カレン、ライナーで周囲の警戒をしている。こういう時メンバーがたくさんいると心強い。クランをもっと大きくするのもいいかもしれない。
「ねぇちょっといいかしら……?」
サーシャが俺に声をかけてきた。俺はサーシャの方を向いてこくりと頷く。
「さっきマルスは何をしたの? ヨーゼフがブラムの空間魔法にレジストしていた時の話よ? あとテリトリーの中に1人で残ったじゃない? あの時音はしなかったのだけれども凄い地面が揺れたのよ。そこでも何かマルスがしたのかなと思って……」
そう言えばサーシャは俺が雷魔法を使えることを知らないのだった。クランメンバーだし教えてもいいか。
「実は風魔法使いではなく、雷魔法使いなのです。先ほどヨーゼフの首元には剣から雷を流して感電させてブラム先生の空間魔法をレジストさせないようにしました。地面が揺れたというのは雷魔法を使ったからだと思います。衝撃音と振動がとんでもないので……」
「雷魔法って……あの七大魔法の雷魔法よね?」
七大魔法?なんだそれ?
「七大魔法という物を聞いたことが無いので分かりませんが……」
俺が困ったような声を出すと
「そうね。分からなくて当然だわ。私も聞いたことしか無いもの。きっと今生きている人達でも知っている人はごく一部だわ。でも1つだけ正直に答えて……」
急にサーシャが真剣な表情になって俺に聞いてきた。
「マルス、あなた暗黒魔法も使えるんじゃない?」
暗黒魔法? これも初めて聞いたな。
「暗黒魔法というのも初めて聞きました。それはどういった魔法ですか?」
俺が本当に知らないという事を信じてくれたのかサーシャの表情が優しい表情に戻り
「ごめんなさいね。疑ったりして。例えマルスが暗黒魔法を使えたとしてもマルスだったら大丈夫だとは思うんだけど……暗黒魔法というのは七大魔法の1つで主に悪魔族が使う魔法なのだけれども……剣神に悪魔族は絶滅させられたから現在は使える者はいないはずよ。少し……というかかなり危険な魔法でね。この魔法が使える者は要注意なのよ。だけど雷魔法はある意味それ以上に危険とされていたと思うのだけれども……主に威力が高すぎて自滅してしまうという意味でね」
まぁ雷耐性が無ければ才能があってもこんな魔法使わないよな……それにしても昔は雷魔法使いが他にも居たのか……まぁ亜神様から貰った能力は【天賦】と【天眼】だけだからな。
俺以外に雷魔法使いがいても不思議ではないよな。サーシャと話している最中にクラリスが風呂から上がってきた。今度は俺がクラリスと入れ替わりで風呂に入る。
「ではサーシャ先生。僕はこれから風呂に入ってきますので」
サーシャに頭を下げてから風呂に入った。七大魔法……普通に考えれば四大魔法に雷、神聖、暗黒を加えた魔法なのかな? 風呂で色々考えているとかなり長湯してしまった。クラリスが疲れているのに……
「ごめん! クラリス、考え事をしていたら長湯してしまって!」
クラリスの所に行くとクラリスが口元に人差し指を当てて
「しっ! ヨーゼフがなんかおかしいわ!」
ヨーゼフを見るとデーモンの部分がもう無くなりそうだった。
そしてその最後のデーモンの部分が無くなると一瞬覚醒して俺と目が合うとある言葉を残して再び眠りについた。その眠りはとても長い長い眠りだった。
俺とクラリスはヨーゼフが眠る前に残した言葉に衝撃を受けていた。
「マルス……今のどういう意味……?」
「いや……だけど……これは……もしかしたら何か混乱しているのかもしれない。またヨーゼフが起きてからしっかり聞くとしよう。クラリス、あとは俺が見ておくからクラリスは最後にヨーゼフにヒールをかけてから寝てくれ」
クラリスがヨーゼフにヒールをかけるとクラリスは俺とハグをしてから眠りについた。1人残った俺はヨーゼフを鑑定した。
【名前】ヨーゼフ・ヴァーリ
【称号】-
【身分】人族・平民
【状態】良好
【年齢】10歳
【レベル】32
【HP】18/18
【MP】24/24
【筋力】12
【敏捷】13
【魔力】15
【器用】14
【耐久】12
【運】1
【特殊能力】槍術(Lv1/G)
【特殊能力】火魔法(Lv1/D)
【特殊能力】水魔法(Lv1/D)
【特殊能力】土魔法(Lv1/D)
完全に人に戻り、HPも減らなくなっていた。
しかしステータスは去年失踪する前よりも低い。レベルが32になっているのにも関わらずだ。特殊能力も全て1になってしまっている。だがあのままデーモンとして生きるよりかはマシだと思う。
「どうだ? マルス、ヨーゼフの容態は?」
ヒュージが心配そうに俺に話しかけてきた。
「もう落ち着いているので大丈夫だと思います」
「そうか、じゃあ命令だ。今から寝てくれ。外の見張りは【氷帝】【紅蓮】が見る。ヨーゼフはエーディンに見てもらうから安心してくれ。ただし寝る前にMPは枯渇させないように。何かあったらすぐにエーディンに起こしてもらうから」
ヒュージがそう言うと眼鏡っ子先輩が俺の膝の上に座ってきた。おいおい……こんなところをアイクに見られたら……
「もしもマルスがどうしても私と一緒に居たいというのであれば、一緒に一夜を過ごしてもいいのよ?」
うん。相変わらず眼鏡っ子先輩は平常運転だ。だがこういう時いつも通りというのは何か安心する。こんな人ばかりだと困るのだが1人くらいはね。眼鏡っ子先輩の行動にヒュージは驚いていたが
「ではお言葉に甘えさせて頂きます」
俺が言うとヒュージは「どっちの意味だ?」というような顔をしていた。もちろん寝る方だから膝の上にいる眼鏡っ子先輩をどかしてから部屋を出た。
寝る前に人造魔石がどうなっているのか確認しておきたかったが明日にしておこう。俺は5人が先に寝ているベッドで横になった。
2031年7月12日 5時
俺はだいぶ寝てしまっていたらしく、ベッドにはエリーが寝ているだけだった。
下に降りてみんなに朝の挨拶し、ヨーゼフを見に行くと、ヨーゼフにはクラリスとアリスがついていた。
「ヨーゼフは起きないのか?」
俺の質問に2人が頷く。するとみんながいる場所からヒュージの声がした。
「マルス、クラリス、アリス、こっちに来てくれ」
ヒュージの言葉に従いみんながいる待機所に向かうとヒュージが
「これからの事を話そうと思う。これは命令ではなくお願いなのだが、俺達【氷帝】はここに残る。恐らくデーモンが魔の森に残っているとは考えづらいがもしもの時に備えてな。そしてお前たちはリーガン公爵の所に戻ってこの件を早急に伝えてきて欲しい。さすがにこの件を俺の裁量でどうのこうのというのは荷が重い。俺達もここの安全が確認できればここから去り、次のクエストに向かう」
「分かりました。ヨーゼフは僕たちが預かるでいいですか?」
「ああ。俺達ではどうしようもないからな……」
「では、今日中にでも出発します。ヒュージ様がいなければ級友のヨーゼフを救う事は出来ませんでした。本当にありがとうございました」
俺が頭を下げると【暁】全員が頭を下げた。今からすぐに出発準備をしなければならない。といっても準備なんてほぼ整っているわけで朝食を食べたらすぐに出発という事になった。
人造魔石からは管が無くなっており、前に入手した物と同じ形になっていた。これは体内に埋め込むと勝手に体を蝕んでいくのだろうか?
「ねぇマルス。私がこの前言ったじゃない? どうしてデーモンが魔の森に行ったのか?」
今俺たちはリーガン公爵領に向かって馬車を走らせている。ヨーゼフは眠ったままで先生たちの馬車で寝かされている。俺はクラリスの言葉に相槌を打った。
「やっぱりヨーゼフは人間を襲いたくなかったのよ。だから魔の森に行って自分の存在を隠そうとしていたのよ。例えデーモンになっても誰にも迷惑をかけることないように……恐らく人造魔石を埋められた直後は人間としてのヨーゼフの方が体を支配することが出来ていたのだと思うの。それがどんどんデーモンに浸食されていき、仕方なく魔の森に入った……そう思わない?」
「全く同感だ。さすが名推理だったよ」
クラリスの言葉に俺が答えるとクラリスは満足そうに頷いた。今はこの答えで充分だ。
だれがヨーゼフに人造魔石を埋め込んだのかという事は今は考えなくてもいいだろう……そしてヨーゼフが俺とクラリスに残した言葉……あれもヨーゼフが覚醒してから聞くことにしよう……
13章終わりです。
この章もデアドア神聖王国編と同じで書き直しまくりでした。
プランBのルートBといった所でしょうか。
最終話を投稿し終わったらデアドア神聖王国編とこの魔の森編について
最初はどういうプランだったのかを書くかもしれません。
どうしたら良かったのか今でも分からないので(笑)










