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5章18話:美しき青きドナウ攻略戦〜後編〜

 迷路には記憶がない。だから彼女にとってトラウマというトラウマ、後悔という後悔が存在しない。強いて言えばヴェニス戦で木葉が斬られたシーンはトラウマだが、それが再び上映されたところで迷路の心に致命傷を与えるには至らない。彼女は木葉が無事であることを知っているからだ。


「はぁ。茶番だったわ」


 目覚めて1番にそう呟く。隣ではまだ魘されているロゼがいる。彼女もトラウマと後悔の多い人間だ。だがロゼ・フルガウドという人間は基本的に割り切って生きている節がある。

 異端審問官に里を焼かれ、友人を目の前で惨殺された少女。その無念、後悔を糧に王都政府をひっくり返して国を救うという強い意志を持って生きている。何よりそうした部分は迷路や木葉と交流する上で穴埋めされてきた。

 ということで暫く呻いてたロゼだったがその寝顔が穏やかなものに代わり、普通に寝息を立てて鼻提灯まででき始めたので迷路は彼女を叩き起すことにした。


「敵地のど真ん中で爆睡とはいい度胸ねロゼ」

「はわあああ!僕のエビピラフぅ〜」

「なんでもう食べ物の夢見れるくらいに精神安定してるのよ……」

「えへへ〜。夢の中で前に殺した異端審問官が出てきたから、もう一回八裂きにしてやったんだぜ〜。スッキリしたんだぜ〜」

「貴方大概狂ってるわよ」


 良くも悪くもこの満月の世界の常識で生きてきたロゼにとっては悪人を殺すことに罪悪感はない。そんなものを抱く意味もない。彼女は今後も全てを薙ぎ倒して進んでいくのだろう。


「でもさ、めーちゃん。この試練多分こののんキツいと思うんよ」

「…………………同感。早く木葉を探しましょう」

「ちょ、ちゅんは!?ちゅんに関してなんで誰も言及しない的な!?」

「や、だって貴方ただ寝てるだけじゃない」

「ちゅんだって色んなトラウマがあるんです的な!」


 子雀がちゅんちゅん騒ぎ出す。彼女も村を焼かれて両親を殺されているのだが、子雀は悲しい思い出を楽しい思い出に塗り替えられる気楽さがある。良くも悪くも過去を振り返らない少女なのだ。てことで初めは苦しそうにしていたが、木葉の夢を見始めた瞬間に顔がニヤけ、なんだか体をくねくねし始めたので迷路は置いていくことに決めたのである。


 さて氷河の迷宮だが、氷を司る迷路にとっては迷宮もその役割を成さない。


「《凍土の願い》」


 氷を自在に操る魔法を使い、道を切り開いていく。無駄な魔力は使わずに今後の決戦で温存するつもりだ。


 さて10数分ほど氷を動かして進んだところで、別のクリスタルとそこで焚き火をしているルーチェを見つけた。

 

「お、みんな無事じゃったか。ほれ、火に当たるか?」

「隣で寝てる連中は起こさないのかしら?」

「こういうのは自分で突破するもんじゃろ。野暮は良くない」

「貴方に関してはもっと遅いと思ってたけど」

「我は存外全部を諦めてるからのう。長く生きると後悔なんて山のようにあるものじゃ。そしてその一つ一つとその時々に向き合って答えを出してきた。今更もう一回同じことさせられたら寧ろ萎えるわい」

「年長者の教訓ね。参考になったわルーチェお婆ちゃん」

「おいぶっ殺すぞ小娘!」

「なんでそこは諦められないのよ……」


 その側で寝ているのは柊とアカネ。柊はともかく、アカネは謎だ。


「あー、これクリスタルに触れれば他の人の劇場に入れるんだね〜」

「おい、それこそ野暮ってものじゃ、やめんかフルガウド姫」

「でもアカネについてはちょっと気になるんよ〜」


 先の帝都攻防戦でロゼはアカネと仲良くなっていた。てなわけでささっとクリスタルに触れる。


 劇場に入ると、スクリーンには赤い髪の女の子が映し出されていた。しかし今のワイルドなアカネではなく、


「お姫さま?」


 異国風な桃色の衣装に身を包み、しおらしく食事を摂る女の子。顔は間違いなくアカネなのだが、今の印象とだいぶ異なっている。

 暫くして食事の席に座っていた少女達が血を吐いてバタバタと倒れる。兵士達が入ってきてアカネ達へと剣を向ける。アカネは混乱の中、泣きながら宮殿をかけて行った。

 暫くそうした様子を眺めていたが、アカネが起きたことに気付くとロゼは彼女の肩を叩いた。


「お、ロゼ、見てたのネ」

「うん、ごめんね勝手に入って。……これは?」

「アカネの過去ネ。つい懐かしい人たちが居たから、後悔なんて無いけど思い出に浸っちゃってたヨ」

「…………………東方の大華地域の民族衣装。これって」


 アカネはニカっと笑って言った。


「アカネは東メルカトル大陸を統べる【大燿(たいよう)帝国】の皇女ヨ。本名は【(よう) 紅華(ほんふぁ)】って言うネ。驚いた?」

「わ〜。ガチガチのお姫様だ〜。僕と一緒一緒〜」

「似た身分のお友達は嬉しいヨ、友達友達!」


 ロゼとアカネは手をとってぴょんぴょん跳ねてるが、有史以来の巨大陸上帝国の皇女と伝説上の龍の血を引く現人神が仲良くしている光景というのは後世の歴史家達の目ん玉が地球半周しそうなくらい貴重である。


「おーい、もう戻ってきてるわよー」

「聞こえておらんな。お喋りに夢中じゃ」

「大燿帝国って神聖王国と同等クラスの巨大帝国ですよね的な……。なんか頭痛くなってきました……」


 残る柊も随分長かったが、漸く戻ってきた。彼女はやはり木葉への後悔が大きいのだろう。


「それはまだなんとか出来る後悔よ。今からでも遅くはない」

「だよ、な。……うっし!元気出して頑張るぞゴラ!!」

「銃はしまって欲しいです的な!!!」


 景気付けに一発空砲を打ち鳴らす柊。やることが豪快である。

 

 さてその後木葉を探すが出会うのは騎士達ばかり。なんか新庄梢も起きていたので、彼女には騎士団と合流して恐らくゴールと思われる門の前で待機しているように言っておく。そうして再び6人で木葉を探し始めた。


「木葉ちゃん、木葉ちゃん!」


 笹乃の声が聞こえる。声に反応して急いでその場へ向かった6人。そこには、


「……………………………………………」


 虚ろな瞳で涙を流す木葉と、その木葉を揺さぶる笹乃&樹咲の姿があった。


「木葉!!!」

「こののん!」

「我が主!」

「な、なんだ、これ……」


 木葉を抱き抱える迷路。そして目を覗き込むロゼ。子雀は後ろでオロオロしている。柊は絶句していた。


「木葉、強そうに見えたけど……やっぱり抱えてるものが大き過ぎたネ」

「………………………原因はわかってるのじゃ。我とてまだヴェニス戦の顛末は引き摺っておる。16の幼な子に受け止めろという方が酷じゃよ」


 迷路は木葉を暫く抱きしめていたが、不意に思い出して別の名を呼ぶ。


「すくな、すくないるんでしょう!?貴方何やってたのよ!!!」


 ところがすくなは姿を表さない。木葉の瞳は虚ろなままだ。


「めーちゃん。劇場に入ろう。こののんの心壊の原因は多分、こののん自身は一から十までは話してくれない。僕たちは知らなきゃいけないと思う」

「……………そう、ね。入りましょう」

「みんなはどうする?」

「止めても無駄でしょう。あまり望ましくないけど、見てもらうしかないわ。見張りは必要だけどね。アカネ、お願いできる?」

「アカネは一応部外者だものネ、いいよ。蟻1匹通さないヨ」


 アカネの言葉に迷路は頷く。そして、みなで一斉にクリスタルに触れた。



……


……………


 迷路達が見たのは木葉の過去、そして後悔の塊達。劇場に座る木葉には沢山の亡霊達が集まっていて、特に真っ黒に顔を塗りつぶされた女の子が木葉の目を塞いで耳元でぶつぶつと囁き続けている。


「このは……貴方、こんな重たいものを、一人で……」

「こののん……」

「これが木葉ちゃんの見てきた世界……」


 迷路やロゼは異世界に来るまでの、笹乃は異世界に来てからの木葉の受難を思い知り、心の奥底にあった闇を知った。誰もが同情するような境遇に一同が暗くなるが、子雀はいち早く木葉の元へと駆け出す。そして、


「言ってる場合じゃないです的な!このやばそうなのひっぺがしましょう!」

「そうね。《氷結》、《凍土の願い》ッ!」


 氷の礫が長い氷柱と化して亡霊達に襲いかかる。ロゼも火雷槌を振るい、亡霊を薙ぎ払って行った。子雀もあまり役には立っていないが羽をバサバサさせて亡霊を追い払おうとしている。


「木葉!」

「こののん!」

「めい、ろ……ろぜ」

「聞こえる!?僕だよ、ねぇ、こののん!」

「やだぁ、2人とも死んじゃやだぁ……」

「ーーッ!死なない、死なないから、そばにいるから!」

「……ほんと?」


 虚ろな瞳のまま、木葉は2人を見つめる。

 そして、


「じゃあ愛して、私を」

「あれ、え……」


 《色欲》、木葉にとって最近制御した悪魔の力。今の彼女にとってこの力は、自身の心の穴を、不安を慰めるための力でもある。

 

「おいで、《鈴鹿御前》」

「あ待ってこののんそれダメなやつ!」


 風紀の乱れを引き起こす《色欲の悪魔》。こいつが降霊した瞬間、この劇場は間違いなく色欲が支配する娼館と化してしまう。


「ロゼ、取り敢えず口塞いで!」

「りょ、なんよ〜。猿ぐつわーっと」

「んむ〜!んむむ!!」

「脱出するわよ!投影機を破壊して!」

「りょーかいです的な!!おりゃあ喰らえ子雀ローリングキーック!!」


 ぽかっ。


「あ、あれ……」

「あー、アタシ撃つわ、うん」


 ズドンッ。


 切り替わる景色。再びクリスタルが目に入る。


「木葉ちゃん!無事なんですか!?」

「……うぅ、ぐすっ、愛してよぉ」


 《色欲:鈴鹿御前》をキャンセルされ、ロゼの腕の中で泣く木葉。いつもの気丈な木葉ばかり見てきた笹乃からすればここまで弱ってる木葉は珍しい。思わず手が伸びる。

 頭を撫でるとそのさらさらした髪質が癖になり、そのまま撫で続けたいという衝動に駆られる。


「せんせぇ……ぐすっ、ずっと側にいてよぉ、置いてかないでよぉ……」

「ーーーーッ!!!……破壊力すごくないですかこれ……」

「笹乃さんからしたら新鮮だよねきっと〜」


 理性が蕩けそうになりながら、笹乃は木葉の手を握って言った。


「木葉ちゃん、貴方は愛されてますよ。みんなみんな、此処には木葉ちゃんのことが好きな人しかいません。勿論私も……」

「せ、せんせぇ」

「信じて待っててください。良い子だから、ね?」


 そして笹乃は、木葉のおでこにキスをした。


「ひゃっ!?」

「わぁお、だいた〜ん」


 名残惜しげに離れる笹乃。そして、


「行きましょう。木葉ちゃんに負担は掛けられません」

「……今回は不問にしてあげる」

「ありがとうございます、迷路さん」


 そして、遠くの門へと意識を戻す。この氷河迷路のゴール、氷で出来た巨大なアーチ状の門が開いていた。


「空いてる……呼んでるのね」


 恐らくあそこに魔女がいるのだろう。


「えっと、どうしようか〜。このままだとこののんは連れて行けないんだけど……」

「ロゼ、あんた残りなさい」

「え、なんで僕」

「この状態の木葉と間違いがあっても許せるのはあんただけよ」

「…………………めーちゃん、それ本気で言ってる?」

「別に、あんたなら良いとは思ってる。それに《方舟》貰ってるんだから今回は私に譲りなさい」

「貢献度だね。わかった。お願いするんよ」


 迷路なりに此処まで旅をしてきたロゼのことは信頼している。木葉を預けても良いと思える程に。ロゼもそれを分かっているから任された。


「柊、ルーチェ、子雀、援護宜しく。ロゼの穴はアカネが埋めて」

「ガッテンだヨ!」

「私達も頑張ります。一緒に踏破しましょう」

「えぇ。力を貸してもらうわ」






 巨大な門の向こう側、そこは氷でできた闘技場であった。


「うっふふ、3代目魔王は脱落ねぇ。クープランの墓よりはマシな精神状態みたいだけれど、まぁそうなるわよねぇ」


 水色の髪を持つ派手化粧の女:ドナウは妖艶な笑みを浮かべる。初めから魔王の脱落を分かっていたような発言に、迷路は眉を顰めた。


「成る程。此処に来るまでに精神を病む要素を重ねれば重ねるほど、この宝箱は攻略困難になるってことかしら。ある意味では湖底神殿と同じで代表者殺し……下手すれば主要メンバー全員の脱落を狙ってたのね」

「正解よ。あら、貴方どこかで会ったことある?」

「少なくとも私は貴方を知らない。けど、木葉を虐めた罪は贖ってもらうわ」

「ふぅん。それじゃあ次の試練。過去と向き合って」


 闘技場に現れる人影達。見覚えのあるものもないものもいる。


「な、ゼルト?」

「ポップか!?おまえ、死んだはずじゃ……」


 騎士達が動揺している。だが意図を理解し剣を構え直した。流石はアカネ騎士団だ。

 迷路達の前にも見知った顔が立ちはだかる。特に目の前の金髪の女性は、よく知っている人だ。


「エレノア……」

「ちゅん!?あのイキリ太郎もいるです的な!」

「……成る程、我たちの記憶の中にいる死者を写し出しておるわけか。そして恐らくその強さも再現しておる」

「人数が増えれば増えるほど、記憶の中の死者の数も増える。だからあえて今回は人数制限が無かったのね。初見殺しも良いところじゃない!」


 特に歴戦の騎士なら命を奪ったものの数は両手じゃ数え切れないだろう。そうでなくとも見てきた死者の数は桁違いだ。


「船形、くん……」


 笹乃がたじろぐ。笹乃にとって実感はないが、彼もまた死者だ。恐らく木葉の記憶から来てるのだと思われる。ニタニタと笑みを浮かべて歩いてくる船形荒野に恐怖を覚えて思わず後退する笹乃。 

 しかし、




「《凍れるメロディー》」




 迷路が【凍華の杖】を振るい、術式を発動させる。巻き起こる凄まじい吹雪、突風に煽られて眼前の死者達が雪に消えていく。迷路はそのまま竜巻を操り、エレノアにぶつけた。


「《爆塊》」


 大量の小型爆弾を出現させるエレノアの魔法。しかしそれらを押し返す威力で吹雪は押し寄せ、エレノアごと飲み込んでいった。


「な、えっ!?」

「乗り越えたんでしょう?死者の記憶を。それなら迷わないことね。今ある大切なものを大切にすること、優先順位を見誤らないこと。私には記憶なんてないけど、ねッ!!」


 氷と雪の塊が濁流の如く押し寄せ、ドナウに向かっていく。それらを阻むように船形荒野やアリエスが防護障壁を展開した。だがそれさえ撃ち破る。


「ぐぁ!?」

「くっ!」

「それぞれがそれぞれの想いを断ち切りなさい。私はあの魔女を捻り殺してくるわ!」


 迷路は氷の馬に乗り、エレノアを追跡する。各々も我に帰り、眼前の敵……かつての友との戦闘を開始した。


「くそ!まさかクラスメイトと殺し合いする羽目になるなんて!」

「うわぁぁぁあん!やだよぉ」


 ぼやく樹咲と梢を援護するように柊はサブマシンガンをぶっ放した。


「ウルセェ!むしろアタシは木葉を強○しようとしたあの屑に鉛玉ぶちこめるんだからウキウキだぜこんちくしょう!!!」


 船形荒野に反撃の隙を与える隙なく銃で蜂の巣にしていく。2人はそれをドン引きしながら眺めていた。

 

「テメェらも残ったクラスメイト救うために来たんだろ!?なら罪悪感とか言ってる暇ねぇだろ!ほら、貸してやるから」

「ふ、ふえぇぇぇ……あ、結構楽しい」


 ぱらたたたたたたたたたたたたた!!!


「な?あっちの子雀とかも病みつきになってんだよこの感じ」

「ヒャッハー!!!ちゅん最強!撃って撃って撃ちまくれぇぇ!!!ひぃいあ!!」

「わ、私もなんか楽しくなってきた!」


 梢という純粋少女を悪の道に引き摺り込もうとする柊。ちなみに子雀はもう手遅れである。


「えぇ……」


 ドン引きする樹咲はおいといて、笹乃も鬼気迫る表情で戦っていた。

 戦闘能力がない笹乃の得意分野は援護だ。笹乃の職業【巫女(かんなぎ)】は所謂神官職。祈りを捧げ、その対価として他者に魔力供給などを行う。だが笹乃の場合は結構臨機応変で、保有している魔法も特殊なものが多い。


「《(みそぎ)》!!」


 保有する特殊スキル:(みそぎ)。霊脈と人体との間にある霊体物質を切断する魔法。ルーチェがかつてヴェニス戦でコーネリアに使用した魔法と酷似している。

 この魔法によりエレノアは大技である《爆弾魔殺し》を封じられ、その隙に、


「《雪牙》!!」


 迷路の攻撃魔法によって霧消した。またそのタイミングで《略奪》を使おうとしたアリエスにも《禊》の発動を行い、隙ができた所でアカネが首をもぎ取る。


「面白そうなのはあの東の魔王ネ。いざ、一騎討ちヨ!!!」

「にゃはは、にゃはは」


 黒い触手を伸ばして抵抗する東の魔王。しかしその触手を目にも止まらぬ速さで斬り伏せていくアカネはそのまま死角に入り込み、


「強かった。でもアカネの方がもっと強い!!《牡丹斬り》!」


 1撃で10撃。一撃目が致命傷とならずとも続く9つの斬撃が的確に致命傷を作り出す。牡丹の花が咲いたような鮮やかな剣舞により、確実にその命を刈り取る剣術スキルだ。

 これにより触手を全て失い心臓と脳を裂かれた東の魔王は霧消した。木葉が酒呑童子にならねば倒せなかった相手を、アカネはいとも容易く沈めたのである。


 またその間にも笹乃と迷路の連携は続き、ロゼの友人であるハレイとディラ(死んでないがロゼは死んだと思っているため存在している)、幻術を操る異端審問官:ヘッサーカなどを撃破し、そのまま魔女に迫る。


「…………」

「ーーッ!?……お前、さっきの」


 その前に立ちはだかる少女。先程木葉の耳元で囁いていた真っ黒く顔を塗りつぶされた存在。特に武器もなく、戦う術もない。


「悪いけど、あんたに木葉は渡さない」

「……………………」


 氷の刃でその体躯をつらぬく。そして気に留めることなく魔女の元へ駆ける。


「《禊》ッ!!」

「《凍土の願い》!」


 魔法を封じ、そして首元に氷柱の剣を突きつける。

 その一瞬で当たりを窺うとどうやら1-5組や騎士組も決着がついたようで、闘技場には元からいた29から木葉とロゼをのぞいて魔女を加えた28人のみが残っていた。


「うっふふ。強いのねぇ」

「魔女。これで試練は終わりかしら?」

「いいえ。まだあるわ」

「へぇ。それは貴方の首を刎ねること?」

「まさか。それはね、





お姉さんを旅のパーティーに加えること、よ♡」





「「「「「「…………………は?」」」」」」

次も3日後。

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