突き放した者の末路
「はぁはぁ……」
アトラスは、死に物狂いで馬を走らせ、王城に到着した。
馬に降りるや否や、心配そうに見つめる使用人を払い除け、自分の部屋に急行した。
すると、彼の目の前に兄であるカノープスが向かってくる。
「やぁ、アーティ」
「……」
「そういえばお前に客が……」
アトラスは兄を吹っ飛ばし、部屋へ入った。
「クソ……」
アトラスは鍵をかけ、その場に座り込んだ。
アトラスは過呼吸になり、頭を抱えた。
そんな姿を見て笑う者の姿があることを、アトラスはこの時、気づかなかった。
「アトラス様……」
「はっ!?」
アトラスが頭を上げると、刃物を構えた女が立っていた。
「は、ハイドラ……」
「ずーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっと待ってましたよ、アトラス様」
「は、はぁ!?」
アトラスは鍵を開けようと扉に手を掛けるも、手が震えて開かなかった。
「逃げるのですか?」
ハイドラはアトラスの腕を掴み、床に叩きつけた。
ハイドラは転んだアトラスの上に乗り、両手に刃物を構えた。
「な、なにを……」
「私、ずっと考えていました……アトラス様がどこにも行かない方法を、アトラス様がお側にいてくれる方法を、アトラス様が私だけを見てくれる方法を」
「はぁはぁ……」
「導き出した答えが……これですわ」
ハイドラは刃先を舐めて、「方法」が何なのかを説明した。
「や、やめろ!!」
「アトラス様……」
「お、落ち着け! 話せばわかる!」
「愛していますわ! アトラス様あああああああああああああああ!!」
「やめろ! やめろおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
アトラスの命乞いは届かず、アトラスの胸に、ハイドラの愛が突き刺さった。
「あはははは、あはははははははははは!! これで、アトラス様は私のもの! 誰にも……誰にも渡しませんわ!! あはははははは!」
ハイドラが高笑いをしていると、ドアに亀裂が入り、やがて穴が大きくなり、開いた。
「こ、これは……」
斧を持ったカノープスは、部屋の惨状に驚愕した。
同行していた使用人が、椅子をさすまたにし、ハイドラを抑え込んだ。
ハイドラは、そんな状況でも、笑い続けていた。




