第五十四話
「はぁ……結局2時間くらいしか眠れませんでしたわ……」
食事をした後も、やはりカグラ様の事で頭がいっぱいになっていた。
そのままベッドに潜り、私はずっとカグラ様の事を考えていた。
私の愛しいカグラ様……出来る事なら彼女の事を私だけのものにしたい。
……なんでしょう、これは独占欲というものなのでしょうか?
カグラ様はどう思っているのでしょう? 私の事を独占したいとか……思ってくれているのでしょうか?
……はぁ、今日からまた婚約者探しが始まりますわ。
出来る事なら、また里に行って、カグラ様と一緒に……。
とりあえず、着替えて、朝ごはんでも食べましょう……。
◇~カグラ視点~
「まずいではないか! これは一大事ですぞ!」
「里の一大事……一体どうすれば……」
「だから私は言ったんだ! あんな猿の進化体など殺してしまえと……」
吸血鬼の里の城、私の周りには「長老」がいる。
長老とは言っても、みんな見た目はほとんど変わらない、そして例によってほとんどが女性だ。
みんな里の一大事に落ち着きがない様子だった。
「皆! 静まりなさい!」
ママの怒号で、長老たちは押し黙った。
「もうすぐ、コーヴァス伯爵家の当主の方が事情を説明しにこちらへ来ます、騒ぐ気持ちは分かりますが、ここは落ち着きなさい」
ママの言い分はもっともだった。
私だって最初は驚いた、長老たちの気持ちもよく分かる。
でもここは落ち着いて事情を理解することが先だ。
コーヴァス伯爵家……リブラ……。
あぁ! いけない! 今は会議に集中!
「……姫様」
「え? 何?」
アブラムが後ろから話しかけてきた。
「姫様……昨日から様子がおかしいのですが……どうかなさいましたか?」
「べ、別に? なんで?」
「……」
アブラムは黙って、私を見つめている。
「……すぐに戻ります」
「え? ちょっとアブラム!」
アブラムは足早に部屋を出て行った。
い、一体どこに行くの!?
「盟主様!」
ママの方に目をやると、さっきまで外に出ていたコキクがいた。
コキクは耳打ちでママに何かを伝えている……多分ベガが到着したんだろう。
「コーヴァス伯爵家の方が到着したようです。皆色んな気持ちがあるのでしょうが、ここは落ち着いてください、わかりましたか?」
長老たちは不満そうな顔を見せつつも、頷いた。
ど、どうしよう……なんか不安になってきた。
アブラムがいないから余計に不安になる。
こんな時……リブラがいたらなぁ……




