第五十二話
「もう日が暮れてきましたね……」
レオがそう呟いた。
確かに外を観ると、既に夜になろうとしていた。
「僕はこの後夜会があるのでこれで失礼してもよろしいでしょうか?」
「えぇ、いいですよ」
「今日はありがとうございました、姉さん」
「こちらこそ、レオの元気な姿を見れて嬉しかったですよ」
私たちはお互いにお辞儀をして、コテージを後にした。
私は部屋に向かって歩き出した。
レオと途中で分かれ、私は一人、考え事をした。
カグラ様……今頃何をしていらっしゃるのでしょう?
最初に出た時は狩りをしていましたね……もしかしたら、今はそれをやっているのでしょうか?
カグラ様……やはりとても逞しいお方ですね……私と出会った時は熊をたった一人で倒していましたね……。
今も戦っているのでしょうか? カグラ様なら大丈夫だと思いますが……無事なのでしょうか?
カグラ様が亡くなったら……私はとても悲しいです。
ここにいると、今カグラ様が何をしているのか、どんな感情なのか、私の事を覚えていらっしゃるのか……全てが分からない。
カグラ様……出来る事なら、私はカグラ様に尽くしたい。
それで、私がくじけそうになったら……今一度慰めてほしい。
その代わり、私はカグラ様に全てを捧げたい、カグラ様の為ならどんなことでもしたい。
どんな事を命令してくださるのでしょう? 一緒に遊んでほしい? 一緒に食事をしてほしい? 一緒に……寝てほしい?
……だんだん変な方向に向かってきましたね、私としたことがなんてふしだらな。
そんな事を考えていると、私は既に部屋の扉の前にいた。
私はノブに手を掛け、扉を開けた。
扉の中は……いつもの私の部屋だった。
いつものベッドにいつもの棚。
私は残念な気持ちになった。
嘘でもいいから、カグラ様が目の前にいたらいいのに。
そして「おかえり、待ってたよ」と言って欲しい、そして強く抱き締めてほしい、私の手を握ってどこでもいいから連れて行って欲しい。
はぁカグラ様……恋しいですわ……。




