第四十九話
「突然呼びつけてしまい申し訳ございません、姉さん」
「いいですよ、レオ」
レオは庭のコテージで待っていた。
「顔を合わせるのは久々ですね、姉さん」
「そうですね」
お互い忙しくて、顔を合わせる機会が無かった。
「昨夜は心配を掛けてしまいましたね、申し訳ございません」
「いいですよ、姉さん」
久々に見るレオは以前よりもしっかりしているように見えた。
やはり未来の当主ですね。
「お坊ちゃま、お嬢様、お茶をお持ちいたしました」
「ありがとう、スピカ」
「スピカ、姉さんと2人っきりで話がしたいんだ、席を外してくれないか?」
「はい」
スピカがお茶を置き、コテージを出た。
「……それで、話というのは?」
私は席に座り、レオに聞いた。
姉弟同士で話があるというのは、恐らく私の失踪以外に何かがあるのだろう。
「えぇ、単刀直入に聞きます」
「……」
レオは紅茶でのどを潤し、私に言った。
「姉さん……あなたはもしかして、迷宮の森に行ったのでは?」
「……何故そう言い切れますの?」
私は聞き返した。
レオの表情は真剣だった。
「昨夜、来たんですよ……ある人が」
「ある人……?」
レオはお茶を飲み、話を続けた。
「その人は、お父様に伝言があると言っていた……そして、今朝、お父様は姉さんがいないのにもかかわらず、昨夜には屋敷中総出で出した捜索隊を、出していない……」
「……」
捜索隊!? 屋敷総出で!?
私はそれほど迷惑を掛けていたのですか!?
お母様が怒るのも無理はない……。
「となると、その人が姉さんの居場所を知っていて、それを伝えるために屋敷に来た……そう僕は考えたんですよ」
……レオはやはり頭がいい。
まさかそこまで考えていたとは……。
「……でも、なぜ迷宮の森と断定できるのですか?」
レオは開口一番、「迷宮の森にいた」と断言した。
なぜそう言い切れるのか、私は聞いてみた。
「……その伝言を伝えに来た女性には、ある特徴があったんですよ」
「特徴?」
なんでしょう……?
迷宮の森……まさか、里の人が屋敷に来た?
……そういえば、盟主様は確かに「使いを送る」と言っていた。
まさか、レオは既に吸血鬼を知っている……? まさか、だってレオはそのことを知らない筈……。
「あの白い髪に白い肌……目は青かったが、あれは間違いない……吸血鬼です」
「……え?」




