表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/91

その8

「やっぱり魔法使いクンは、お(ヒメ)チカのことが好きなんねえ」

 と、フランポワンは言った。

 俺は、まるでガムでも踏んだようなそんな顔をした。

 ザヴィレッジの大邸宅。

 そこのソファーに俺は沈み込み、そしてフランポワンが耳もとで(ささや)いている。



「ねえ、魔法使いクン」

 そう言ってフランポワンは、俺の首にまっ白な腕を(から)みつかせた。

 ほっぺたをくっつけ、俺に(おお)いかぶさるようにして全体重をあずけてきた。

 俺は押し倒された。

 フランポワンは、まるでバナナボートにまたがるようにして、俺にしがみついた。

 そして、真っ正面に俺を見て言った。


「契約書は、そこの机よ」


 にたあっとした、ひどくスケベな笑みだった。

 俺は、ぞっとしてつばを()みこんだ。

 すると、フランポワンは(よろこ)びの声を()らし、顔をものすごく近づけてそして言った。


「キスしよっか?」

「………………」

 ふわっと、とてもいい(にお)いがした。


「魔法使いクンってキスしたことある?」

「……ありません」

 俺は果実酒のような息を吹きつけられ、うわごとのように言った。


「うちはある」

「………………」

 俺は脳が(しび)れたような状態になって、フランポワンを見た。

 彼女は微笑み、甘ったるい声で言う。


「お(ヒメ)チカと」

「………………」

 俺は息を呑んだ。


「んふふ。ほらやっぱり、お姫チカのこと好きなン」

「いやっ、そんなこと」

「だって今動揺(ドーヨー)したやン」

「それはっ」

 ふたりの濃厚なキスシーンを想像してしまったからだ。

 どういうわけかネチャネチャとしたハードコアなやつを想像してしまったからだ。


「まあまあ、それは冗談として、うちも男の人としたことないンよ。だから、魔法使いクン、キスしよう?」

「……いや」

「うちとじゃイヤ?」

「……そんな」

「んふふ。身体はOKって言ってるンよ。なんか魔法使いクン、熱く硬くなってンよ?」

「それはっ」

 フランポワンに抱きつかれたら、誰だって興奮してしまうだろう。

 彼女は――おっぱいがバカみたいに大きくて、色白でぽっちゃりしてるけど実はウエストが細いって感じの――いつもニコニコしている美少女である。

 そんな美少女に抱きつかれて興奮しない男がいたら、そいつはまず間違いなくホモである。



「うち、魔法使いクンみたいなギラギラした子、大好きなンよ。魔法使いクン、お姫チカのこと憎しみに満ちた目で(にら)むやン。あの瞳、うち大好きなン。ぞくぞくするンよ」

「……はあ」


「だから、うち、魔法使いクン欲しいン。魔法使いクンを寝室で()って独り占めしたいンよ」

「飼う!?」


「そう。ベッドに寝かせて毎晩抱き枕のようにして寝たいンよ。それでね、男の人と経験する前に、魔法使いクンで練習するンよ」

「はァ!?」

 なにやら話がおかしな方向に向かいだした。

 思わず上体をあげると、ぐいっと押し倒された。

 やわらかく大きな、しかし意外にも軽いふたふさの乳に押しつぶされた。

 フランポワンは、俺の首にそのまっ白な腕をべっちゃり(から)みつかせて言った。



「うち、お姫チカの親戚と結婚するン。そうなれば王族の妻になるンやけど、でも、旦那さまに飽きられるかもしれンのよ。そうなったら(さび)しいやンかあ?」

「…………それで」


「結婚する前に、魔法使いクンで夜のことをたっぷり練習すれば、旦那さまもきっと、うちに夢中になる。うちを可愛がってくれるはずなンよ」

「…………そのために」


「今から魔法使いクンを飼うンよ。どうせ練習するならカッコイイ子で練習したいやン。お姫チカにも自慢したいやン」

「はァ――」

 と、思わず俺は息を()らすように失笑した。

 すうっと真顔になり、俺はフランポワンを押しのけた。

 そして立ち上がった。

 バカバカしい。

 付き合ってられるか――と、思った。


 するとフランポワンは勢いよく立ち上がった。

 全身全霊を投げ出すようにして、俺の首にぶらさがった。

 そして満面の笑みで、しかし(おど)すように言った。



「契約書は欲しくないン?」



 俺が絶句し立ちつくすと、フランポワンは息を吹きかけるようにして言った。

「冗談よう。契約書には、もうサインしてあるンよ。だから、そのこととは関係なく、うちともう少し楽しんでえ?」

「……はあ」


「ねえ。この建物は、うち(ひと)りの家なンよ。だから、どんなに(さわ)いだって誰も来ない。魔法使いクンが叫んでも、うちが叫んでも、助けは誰も来ないンよ?」

「………………」


「無理やり押し倒してもええンよ?」

「…………いや」


「無理やり押し倒されたってウソついても、みんな信じるンよ?」

「そっ、それはっ」

 全身から嫌な汗がどっと噴き出した。

 思わず背筋が伸びた。

 俺は真っ青な顔で、あごを引いた。

 フランポワンを見た。

 するとフランポワンは、くちびるをねだるような、とろんとした目をして言った。


「魔法使いクンのファースト・キスは金貨何枚?」

「…………そっ」


「いくらなら買える?」

「……それはっ」


「ねえ、いくら?」

「くっ」

 俺が眉を(ゆが)めると、フランポワンは恍惚(こうこつ)の笑みで言った。



「魔法使いクンのプライドは、いくらなら買える?」



 衝撃のため、しばし声もない俺を笑顔で見て、フランポワンは続けた。


「うちに買えない物は、なにもないンよ?」

 そう言って、彼女は俺のネクタイをつかんだ。

 きゅっと、やわらかく締めた。

 そして、ぽつりと、


()(たけ)にあった幸福で満足せんとね」


 と、フランポワンは言った。

 その(あわ)れみを()びた瞳が、俺は()えられなかった。




「バカにするなッ!」

 俺は激しく怒った。

 フランポワンを引きはがした。

 これ以上ない憎しみと侮蔑(ぶべつ)をもって、彼女を(にら)みつけた。

 それと同時に、彼女の体内を魔法で(ふる)わせた。

 フランポワンの下腹部、その中心を内側から襲ったのは、荒々しく、そして長い振動だった。


「いやあん」

 フランポワンの口から名状しがたい叫びがもれた。

 ぺたんと座り込み、しばらくするとドレスに自らの手をつっこんだ。

 フランポワンは淫猥(いんわい)な顔をして、自身のはちきれるような乳房を()みねじる。

 そのまッしろな腹をなでまわす。

 そして俺の足に夢中でしがみつく。

 おもてを背けずにはいられない凄惨淫虐(せいさんいんぎゃく)の光景が繰り広げられた。

 俺は、自らの魔法の想像以上の効果に絶句した。


 魔法を止めると、フランポワンは、ハッと我に返った。

 しかし、状況をよく理解できずにいた。

 彼女はしばらく座り込んで、太ももの奥をいじっていたが、やがて、くやしそうな目で俺を見上げた。

 そしてスケベな、べっちゃりとした笑みでこう言った。



「うちに逆らったンね?」

「ああ」

 俺は憮然(ぶぜん)とした態度で頷いた。

 フランポワンは言った。


「プライドが高いンね。(いや)しい身分なのに、心は潔癖(けっぺき)なンね」

「当たり前だ」

 吐き捨てるように言うと。

 フランポワンは、心の底から喜びがこみ上げたような、そんな笑みをした。

 そして言った。



「汚してやる」

 俺が黙っていると、フランポワンは念を押すように言った。


「魔法使いクンのその高潔(こうけつ)な心を、うちがドロドロにしてあげる」

 べちゃっとした女の目で見て、それからつけ加えた。



「めちゃくちゃに汚してあげる」



――・――・――・――・――・――・――

■チートな魔法使いである俺の復讐の記録■


 フランポワンに、ファースト・キスは金貨何枚で買えるかと()かれた。

 →下腹部のその中心を内側から激しく刺激してやった。


 ……そのことによって屈服させはしたが、以後、俺は彼女につきまとわれることになる。




■まだ仕返しをしていない屈辱的な出来事■


 城塞都市からの使者・アンジェリーチカ第一王女に、まるで汚物でも見るような目で見られた。


 屈辱的な姿勢で、後ろから指をつっこまれた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ