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異世界の王様は妹キャラ好きらしい


 カインによって国が襲撃されてから、三日が経った。

 俺の国は城門周辺がほぼ壊滅状態となったものの、ハッシュが機転を利かせ、周辺に住む国民達を救助してくれていたおかげで死者は出なかった。

 だが、今回の一件で国民からの信頼は地に落ちてしまっただろう。

 ハッシュは命こそ助かったものの、まだ意識が戻らず、療養中で動けない。

 カイトも同じく意識を失ったまま……どうやら、最後にフレンさんを瞬間移動で呼んだあと、力尽きてしまったのだ。

 あの事件の後、ひとまず国の混乱が落ち着いたタイミングで、俺はフレンさんにこの国で起こったことをすべて伝えた。

 フレンさんの話によると、カインロックハートは有名な奴らしい。

 人殺しを目的に様々な国を渡り歩いているそうで、その力ゆえ、いくら捕まえてもすぐに逃げられてしまい今、指名手配犯の中で一番懸賞金のかけられた男だそうだ。

 だが、意外なことに()()()()()という言葉については、フレンさんも知らない様子だった。


 そして今、俺は旅客運送用の馬車に乗りある人物と共にある国を訪れていた。

 その人物というのはあの日、突然城門前に現れた重装鎧の男――イディオット・ステューピッド。

 全身を覆う分厚い鎧。背には、どう見ても人間用とは思えない巨大な大剣。

 見た目だけなら歴戦の猛者、近づくだけで威圧感に押し潰されそうな重戦士――のはずなのに。


「いや〜、勇者である俺でも流石にいきなり攻撃された時は正直焦ったな!」


 能天気で、危機感が壊滅的。助けてもらった身で言うのもなんだが、簡単に言ってしまうと馬鹿っぽい。

 そして、何故か自分を勇者だと言っているよく分からないやつだ。

 しかし、あのカインの突きを真正面から見切り、あの大剣で横一文字に叩き込んだ。

 重さも長さもある武器を、まるで軽い棒切れのように振り抜く。

 あれは才能とか訓練とか、そういう次元じゃない。


「なんであの時、俺の国に来たんだ?」

「そういえば言ってなかったな!

 王様から直々に頼まれてさ。今まで地図では白紙だった場所に国が現れたから単独で偵察してこいって」


 直々に……それも単独で……。


「もしかして、イディオットってかなり上の職なのか?」

「あぁ!カリステア王国直属の聖盾護衛騎士団せいじゅんごえいきしだん、その団長だ!」


 ……さらっととんでもないことを言いやがった。


――聖盾護衛騎士団。


 王族直属、国の要人を守るためだけに存在する精鋭中の精鋭。

 その――団長。

 だが、本人はそんな肩書きなどどうでもいいと言わんばかりに、笑って続ける。


「強い奴と戦えるなら、それでいいんだがな!」

「……団長の自覚は?」

「あるぞ!多分!」


 多分ってなんだ。

 だが、このふざけた態度の裏であの時、迷いなく俺たちを守ろうとしたあの光景が、脳裏に焼き付いて離れなかった。

 ……厄介だが、信用できる。

 少なくともこの男は、力を振るう理由を間違えない。

 馬車はゆっくりと速度を落とし、城門が見えてくる。


「テンセイ、着いたぞ!ここが俺の生まれ故郷、()()()()()()()だ!」


――その国の名はカリステア王国。


 それはこの世界でも屈指の発展を誇る大国で、特に第三次産業が中心の経済を支えているという。街道沿いには宿泊施設や商業施設が立ち並び、観光を目的に訪れる旅人も多いらしい。


「早速、王の元へ向かおうか」


 石畳の広い街道に馬車の車輪が音を立てる中、遠くに見えていた城壁が徐々に近づいてくる。


「あそこにある建物が王宮だ!」


 イディオットが指を指しながらそう言った。


「うわぁ……まじでけぇ」


 俺の城よりも一回りも二回りもデカイ。


「俺の国なんか比にならないな!」

「そうだろ、そうだろ!一緒にしてもろたら困る、格が違うわ!」


 調子に乗りやがって……でも俺の国だって、もっと大きくなる予定なんだからな!

 そんなこんなで、俺たちは王宮の前の門にたどり着いた。


「これはこれは!イディオット様!どうぞお入りください!」


 門番と思しき男がそう声をかける。


「やっぱり、凄いやつなんだな……」

「当然だ!俺は勇者であり、団長だ!!」


 俺たちは案内係に導かれ、王のもとへと向かった。


「イディオット、ただいま戻りました!」


 イディオットは片膝をつき、頭を深く下げた。

 俺もその動作を真似るように頭を下げる。


「ご苦労であった」


 玉座に座る王へと目を向ける。

 年の頃は四十代から五十代といったところ。

 がっしりとした体格で、いかにも威厳を持った()()って感じの人物だ。


「イディオットよ、そっちの男は何だ」

「例の国の王、テンセイでございます!」


――例の国。俺の国もそこまで有名になったのか……


 だとすれば、あの惨状も知られているはず。

 それにしてもこの王、放つ気配が異常だ。

 尋常な相手じゃない……。


「今日はお話があって参りました」

「ほう、話してみろ」

「今日は私の国に()()をお願いしたく……」


 この提案を進めたのはイディオットだった。

 カリステア王国であれば、支援を受けられる可能性があると考えたのだ。

 正直、イディオットがこの提案を持ちかけてきた時は別の人物が考えたのではと疑ってしまった。


「三日前、私の国はカイン・ロックハートと名乗る男による襲撃を受けました。

 その被害により国は半壊状態となり、いまだ復興の目処も立っておりません。

 つきましては、カリステア王国と国交を結んだ上で、復興に必要な資源をご支援いただけないでしょうか……」


 一度深く頭を下げ息を整えてから、必死に言葉を続けた。


「もちろん、貿易の内容についてはそちらのご希望に従います!どうか……どうかお力を――」


 俺の言葉を遮るように、王が唐突に立ち上がった。重々しい足取りで玉座を降り、そのまま俺の目の前まで歩いてくる。

 次の瞬間、耳を疑う驚きの発言が飛んできた。


「――お前……妹キャラは好きか?」

「……は?」


 一瞬、時が止まった。

 妹キャラ?いや、違う。俺の聞き間違いだ。

 そんなわけがない。

 今、この人が言ったのはきっときのこの山だ。うん、きのこの山に違いない。


「もちろん、きのこの山も好きですが……やっぱりたけのこの里の口の中でとろけるような優しいクラッカーも捨て難いかと……」

「きのこの山ではない!妹キャラだ!」


 ……あ、マジで妹キャラって言ってたんだ。


「好きか嫌いかで言えば……まぁ、好きな部類かと。実際、私にもいますしね。

 誰の記憶にも残ってないような妹が……」


 勘違いしないで欲しい。ヒキヤンは嫌いだ。ムカつくからな。

 でも()という存在は好きだ。あれは尊い、本来ならばもっと神聖な概念なんだ。


「……よし。お前の国と国交を結んでやろう」


 ……えっ!?こんなんでいいのかよ。


「ただし、条件がある。お前の妹をここに連れてこい。そうすれば国交を結び、いくらでも資源を分けてやろう」


 妹をここにつれて来るだけでいいのか……!

 そんなの容易い御用だ!ヒキヤンがどうなるかは知らんがあいつと国民全員の命だったら、若干国民側に傾く……そんなことは無いな。


「了解しました。必ずやここに妹を連れて参ります!」


 こうして、俺はこの条件を飲み王宮を後にした。


――だが、この時のテンセイは忘れていた、妹が引きこもりだということを……

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