第28話 態度がデカイ
「……いや、何様だよお前」
その異様な光景に孝一は眉をひそめ――ついに堪忍袋の緒が切れた。
「おいっ!」
ケージの前にしゃがみ込み、語気を荒げる。
「さっきから聞いてりゃ偉そうに……まず説明だろうが!
“魔石よこせ”とか言う前に、お前は何だ!いつからここにいる!?」
食べながらこちらをちらりと見上げるハムスター。
その仕草は可愛いのに、返ってくる声は可愛くない。
《質問が多い凡俗よ。我は……》
孝一「凡俗って言ったな!?聞こえてるぞ!」
ハムスターいや、声の主は意に介さず続けた。
――《我は偉大なるマナ喰らいの王、イクハルト。汝の部屋は……まあ、居心地が良かったゆえ、間借りしてやっている》
「勝手すぎるわ!!」
孝一の叫びが部屋に響く。
ハムスター、イクハルトは魔石を飲み込み、満足そうにほっぺを膨らませて言った。
――《まずは、もっと大きい魔石を献上せよ。我の力が戻れば、説明の続きもしてやろう》
「順番が逆だっつってんだろ!!!」
しかし、ハムスターはぷいっとそっぽを向いた。
その態度は――どう見ても、世界一偉そうなハムスターだった。
「チェンジで!」
斑鳩孝一がピシャリと言い放つと、それまでそっぽを向いて頬袋をぷくーっと膨らませていたハムスターが、ぴたりと動きを止めた。
ゆっくりとこちらを振り返り、丸い目をさらに丸くする。
「……チェンジ? 他の者に変われと? お役御免? ちょ、ちょっと待ってよね!」
突然、声のテンションが跳ね上がる。
「こんな可愛いハムちゃんなんて他にいないよ〜!? 交代なんて絶対ダメダメ! はい、ダメ〜!」
さっきまでの偉そうで神々しい雰囲気はどこへ行ったのか。
両前足でほっぺあたりを押さえ、無駄に可愛いポーズまで取ってくる。
孝一は額に手を当て、大きくため息をついた。
「……お前、さっきから態度の落差がデカすぎんだよ。いいから、本当の話を――してもらおうか。」
ハムスターは一瞬ビクリと震えると、ちょっと肩をすくめるような仕草をしてから言った。
「さっき言った名前は、適当に思いついたからです。調子にのっちゃいました。てへっ!」
そう言うと、前足をほっぺに添えてポーズを取る。
そのあまりのあざとさに、孝一はさらに深くため息をついた。
ハムスターは気を取り直したように続ける。
「ほんとのところは、よく解らないんです。気が付いたらここにいました。
で、どうやら『念話』を……その、フィーリングが合った人に飛ばせるらしいってことと……」
孝一の視線を恐る恐る伺いながら、
「なぜか、魔石を食べないといけない……ってことだけは解ってます。
あっ、あと! 普通のハムスターと違うみたいで、なんでも食べられるので!
魔石だけじゃなくて、美味しいの……お願いしますね?」
言い終えると、期待に満ちたつぶらな瞳で見上げてくる。
「はぁ〜……」
孝一は三度目のため息をつき、スマホを取り出した。
“ハムスター 飼い方”と入力しながら思う。
いや、絶対普通のハムスターじゃねえだろコイツ。




